都にて…8
ついに秀穎のご上洛が決まった!!
もう嬉しいなんてもんじゃない。仕事にも張りが出る。
気持ちも高揚して今まで以上にやる気になる。
「総司。珍しくご陽気だな」
歳さんが声をかけてきた。
「そりゃまぁね」
「伊庭が来るって?」
「へっ? 何で知ってるんですか?」
「こないだ山南のとこで騒いでたろ?」
「あ… 聞こえてましたか?」
「あれだけデカい声を出しゃ聞こえもするさ」
「あはは。そうか… 伊庭が来るんですよ」
「上様のご上洛に合わせて来るんだな?」
「そうみたいですよ」
自室に戻ってまた秀穎の文を読む。
諳んじる(そらんじる)ことが出来るんじゃないかと思うほど、
何度も読み返した文だ。
秀穎の文の通り、公方様のご上洛に合わせて俺達も大坂に
行くらしいのだが… たぶん秀穎達と俺達じゃ
守る場所が違うだろうなぁ… 会えるのはその後だろうな…。
あぁ冬の京の美味しいもの… 湯豆腐かな?
それとも… なんだ… 秀穎の好きな田楽でも探して…
って俺が食えねぇよなぁ…
あとは甘いものと、名所と寺社も目星をつけておかなきゃならない。
忙しくなるなぁ。
この間お菓子と一緒に送った下げ緒ね。
あれを使ってくれてるんだね。嬉しいよ。
秀穎、それはね、俺とお揃いなんだよ。知ってるかい?
新しくした刀か… 見てみたいな。
秀穎が公方様ご上洛のために新調した刀か。
きっとかなり上質な刀を差してくるんだろうな。楽しみだ。
うん。早く見たいよ。見せておくれよ。
京に来て、甘味ばかり考えてたけど町を歩いていて気づいた。
扇子、懐紙、下げ緒、刀の拵えに羽織紐。ここ京の都ではみやげ物には
事欠かないほど沢山ある。
その中でも一番使えるし共に楽しめる下げ緒は最適だった。
今度は刀の鍔も一緒に選べたらいいのになぁ…。
もう心には会った時のことで一杯だった。
もう一度、文に目を落とす。
で、えっと…
欲しいもの? あぁ欲しいものねぇ…
さて何かあったかな。これは少し考えてから文を出そう。
あとは… 先の文の天神の件に関しては会ってから
じっくり話をするとして…。やはりあとは冬の味覚だな。
あまりに嬉しさに我を忘れ、浮かれていたが
仕事はいつも以上に気合を入れてして当っていた。
秀穎に欲しいものを含めた返事をしていないことに気づいて…
読みながら答えたことで返事をしたつもりになったいて
書き送ることを忘れていた。
取り急ぎ、欲しいものやら、あれやらこれやらを書いて送った。
その翌日、秀穎から次の文が来た。
★,。・:*:・゜☆,。・:*:・゜★
よんの文
沖田総司様
宗さん
宗さん
明日江戸を発つよ
旅支度もすんだ
家族との別れも終わった
たぶん、おいらくらい
うきうきと別れの挨拶をした人はいないんじゃないかな
待っていてね
明日からは、一日一日と
宗さんのもとに近づくよ
宗さんたちも公方様の護衛に出るよね
そこで会えるだろうか
到着の日がはっきりしたら、また文を書くよ
ああ、途中の街道を皆
畳んで短くしてしまいたい
宗さん
健やかで!
秀頴
追伸
ご隠居さんからの文も
預かったからね
追伸の追伸
京の美味しい店
見つけたかな
★,。・:*:・゜☆,。・:*:・゜★
そうか… 昨日出した文は間に合わなかったみたいだな。
でも、帰ってから見て貰えばいいか。
欲しいものは、また次回もあるしね。ふふふ。
この文を出す翌日だから、もうだいぶ京に近づいているんだろうね。
道中はどうだい。寒い時期だから風邪など引いてなければいいな。
途中の街道を端折れたらいいのにねぇ。俺が迎えに行けたらいいのにねぇ。
あぁもう間近だろうけど早く会いたくて仕方ないやね。
あ… 周斎先生の文も預かってきてくれたんだ。有難い。
先生も元気で過ごされているんだろうな。
秀穎がいてくれて安心できるよ。有難う。有難う。
美味しい店? 何軒か教えて貰ってある。
甘味は完璧だと思うんだけど、秀穎が気に入ってくれるかな。
そうだといいなぁ。
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