都にて…7

秀穎が来るかもしれないと思うと気持ちが華やいだ。

しばらくは会えないと覚悟していただけに、嬉しくて仕方がない。


とはいえ、まだ本決まりではない様だから

ぬか喜びに翻弄されない様に、会えないかもしれない覚悟も傍に置いた。


 新選組と名前を頂いてからは、人数も増えて組織も固まってきた。

最初からいる中で一番若い俺が一番隊を率いることになり

剣術も教えることになった。あれほど江戸で道場を建てると言っていたのに

こんなところであっさりと夢を叶えてしまった気がした。


でもこれで江戸に帰ったら自分の道場の売り文句が出来たなと

心の中でほくそ笑んでいたのも事実だ。


若いということで、後から入ってきた年上の人の中には

納得のいかない人もいる。

一番隊の頭を勤めること、ちっとも有名でない流派の俺が

剣術を教えるのも気に入らないらしい。


これが秀穎なら若くても流派は有名だし、御曹司だし文句ないんだろうけど

どこの馬の骨とも分からない若造じゃ文句言いたくもなるよな。


でも組織ってぇのはそうは言ってられないので、道場で対峙して貰うしかない。

或いは一番隊で一緒に見回りに出るか…。


一番の名前を貰ってるのは伊達じゃない。

手練が揃ってるのは当たり前。

だが、その分危ない場面を任されることになっている。

自然、切り結ぶことが多い。突然の出動もある。


切り結ぶことに慣れない奴は相手の迫力に負けてしまう。

剣を抜けば、あとは自分の力しか頼みにできるものはない。

一緒にいるからといって助けて貰うことは前提ではない。


百聞は一見にしかず。


実際に立合うなり、見回りをすれば文句を言う奴はほぼいない。


世間的な俺達の立場や、新選組の内の俺の位置が確立してきた頃

秀穎からの文がやって来た。



   ★,。・:*:・゜☆,。・:*:・゜★


あとの文



宗さんへ



秋風が吹き始めたね

京は冬も厳しいそうだけど

風邪をひいてやしないかい



そちらはますます殺伐としてきたと、もっぱらの噂だよ


心配はしていないのだけど、

忙しい過ぎて、無理をしてやしないかと気がかりだ



さて、ここからが本題



宗さん!喜んで!

前の文で話した

上洛がかないそうだよ



講武所のそうそうたる方々、

父や忠内、三橋、湊など門人たちの末席に、私も

混ぜていただけることになったんだ


陸路、年明けにはそちらに着く予定だよ


新選組も護衛につくよね

京より先に伏見で

会えるかもしれないよ



何か必要なものがあれば

持っていくよ

但し、早めに文をおくれね


ねぇ、ほぼ一年ぶりだよ

早く年が明けるといいのに!



秀頴



追伸



上洛にかこつけて

刀を新しくしました

先だって送ってもらった

下げ緒がよく似合うよ

早く見たいでしょ


早く見せたいよ



   ★,。・:*:・゜☆,。・:*:・゜★



ふむふむ。京の噂は江戸にも聞こえてるんだね。

確かに殺伐としてきたよ。


でも、見回りは順番だからそんなに忙しくないから大丈夫。

ただ夏の暑さと冬の寒さはいただけないけれどね。


えっ?? ええっ!! 本当なのか?!

年明けには着くってぇ?!

おおっ!! やったね!! ついに秀穎もご上洛か!!


「うわぁぁぁぁ!! やったぁぁぁ!!」


「こら! 宗次郎!! うるさいっ!! 今度は何だ?!」

またも隣の左之さんが声を聞きつけてやってきた。


「伊庭が京に来るんだ!」

「ほぅ若様がか? やるじゃねぇか」

「だろう?! だろう?!」

「こりゃ祝いだな」

「本当にめでたい!!」

「祝ってやるから宗次郎、酒代出せ!!」

「えっ…?!」


まぁ再会を目前にして、嬉しい気持ちもあったし

言いだしっぺの左之さんの思惑に乗っかって

永倉さん、いっちゃん、源さん達と久しぶりに酒を飲んで騒いだ。

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