都にて…6
少し前に届いた怒りで綴った「あいだの文」から、
たいして日をあけずに、その文は届いた。
★,。・:*:・゜☆,。・:*:・゜★
さんの文
沖田総司様
京土産を楽しみにしろと書いてあったから、
首を長くして待っている
見せ物小屋に売られる前に届きますように
これは、強要でも脅迫じゃないよ
念のため
追伸
京のお菓子を探すのに、大変な苦労をされているとの事
本当に頭が下がります
ありがとう
秀頴
追伸の追伸
ぬか喜びさせてしまうかもしれないけれど、
近々良い知らせを届けられるかもしれない
楽しみにしていて
鍵は
公方様のご上洛
冬の京の美味しい物を探しておくように
★,。・:*:・゜☆,。・:*:・゜★
まだ、前の文の怒りがおさまってはいないようだ。
相当怒ってるんだろうな。ごめんよ。
この前の天神に加えて、さんの文で干菓子を送るつもりが
出来てないもんだから、怒り心頭なんだろうな。
秀穎は食べ物、特に旨いものには目が無いからねぇ。
今度こそは、ちゃんと送らなけりゃ愛想尽かしされちまう。
そりゃまずいよ、まずい。
ん? ぬか喜び?
良い知らせ?
公方様のご上洛?
冬の京の美味しいものを探せ?
ってことは?? ってぇことはだ!!
「山南さぁーーん!!」
思わず文を握り締めて、屯所の奥にある山南さんの部屋に走った。
「おい、総司。うるさいぞ」
「あ… すみません。えっとあの… 聞きたいことがあって」
「艶本なら今は手持ちはない」
「あ、いやそっちじゃなくて…」
「じゃあ何だ?! こんな夜分に来るから、そういうことかと思ったぞ」
「あ… も、、申し訳ないです。あ、、あのそれで… う、、うえ、、
上様の御上洛はいつですか?」
「年始早々じゃないかねぇ。それがどうしたんだ?」
「いえね、伊庭から文が届いたんですが」
山南さんに、文内容から秀穎が何をいいたいのかを聞いてみた。
「こりゃ上様の御上洛のお供で来るってことなんじゃないのかい?」
「やっぱりそうですよね?」
「ぬか喜びになるかもしれない、とあるから、まだ本決まりではなさそうだぞ」
「あ… そうか…」
「でも、あの伊庭君がこう書いているってことは、
ほぼ大筋では決まっているんじゃないかな?」
「ねぇ山南さん。部屋住みでお供をするってことは、
なかなか難しいことですよね?」
「そうだなぁ…。あちこちに根回だとか、頼み込んだりとか必要かもしれんな」
「伊庭道場の嫡男でも」
「まだ嫡男とは決まってないからなぁ」
「あぁそうか…」
「伊庭君はそういうことが得意には見えなかったね」
「どちらかといえば苦手だと…」
「やはり、そうか」
「はい。有難うございました」
そう言って部屋を出ようとした時に
「総司。この礼は艶本一冊で勘弁してやる」
「へっ?艶本?」
「部屋にあるだろ。だせ!!」
「何で知ってるんですか?」
「やはり持っておったか?」
「えっ?! じゃ今のは…」
「そう、鎌をかけてみたんだが当りらしいな」
「ええーーっ! もう山南さんも人が悪いなぁ!!」
「人が悪い? 心外な。私は真剣な話をしている」
「へっ? じゃ本がご入用って…」
「皆まで言うな。差し出せ!!」
「ふふふ。判りましたよ。あとでお持ちします」
そう言って山南さんの部屋を出た。
やはり、あの文が示すのは 秀穎の上洛!!
ってことは、秀穎と会えるのか?!
うわっ!! どうしよう!! 本当にそうなったら…
まさか京で会えるなんて思ってもいなかったのに。
あぁ早くその日がくればいいのに。
その時の俺は浮かれて、浮かれて。
後にくる、最悪の出来事など予想もしていなかった。
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