8話目 無意識

「なっなにこれ…」


「この鳥は、マジックバードという名前なんだ。いい名前だろう?」

魔法使いは顔がフードで隠れていて分からないが、声的に男性のようだ。

マジックバードか。日本語で「魔法の鳥」だよね。この鳥たぶん魔法使う。嫌だなぁ。

「あなた、レベル何なの?!」

リイラちゃんが叫ぶ。確かに私達のレベルを超えていたら、倒すのは困難だ。

「僕のレベル…?」

ぴらっと情報カードを出して、

「これだよ。」

と見せてくれた。

『今のレベル ファータス

魔法使い Lv.30』

さ…30?!やばいじゃん!

あれ?ファータスって名前、聞いたことある…

あ、ゲーム内で王女様を襲いにきたやつだ。

こいつ、私達をボコボコにした後、王女様を襲うんだよね。そこで王女様が秘めた力を開放してファータスを倒すんだ。

…鈴愛を襲うのは許せないけど、ケガはしないっぽいから良かった。

この場面早く終わらせて、鈴愛が力を開放するところが見たいから、もう倒れちゃお。

バタッ

「ミレイ?!」

「お姉ちゃん?!」

突然倒れた私にびっくりするリイラちゃんと鈴愛。鈴愛はびっくりしすぎて「お姉ちゃん」って言っちゃってる。


ギイイイイイッ


突然倒れた私を見て、敵が一人減ったと思ったのか、マジックバードが鳴き声を上げて急降下し、リイラちゃんを鋭い爪で引っ掻いた。

「痛っ………!!」

リイラちゃんが倒れる。

「リイラちゃんっ」

急いで起き上がりリイラちゃんに駆け寄る。

マジックバードの爪は、肩に当たったようだ。手で抑えてる肩から真っ赤な血が服に染み込んでいる。

「ヒールライト!」

光がリイラちゃんを包み込む。

じわじわと傷が塞がっていく。あと数十秒くらいで完治しそうだ。

リイラちゃんの顔色がだんだん良くなっていることにホッとする。その時、

「きゃあっ」

鈴愛の悲鳴が聞こえた。目を向けると、マジックバードが鈴愛に爪を振り下ろそうとしているところが見えた。

目の前が真っ赤になった気がした。

無意識に杖をマジックバードに向ける。

「ウインドブレード」

風の刃がマジックバードへ向かっていく。


ギイイイッッ


苦しそうな声を上げながら、マジックバードが消えていった。

そんな光景を見て、ハッと我に返る。

わ、私、マジックバード倒しちゃった?

無意識だったんだけど?!

「ミレイ…レベル30の奴が召喚した魔獣を一瞬で倒すとか意味分かんないんですけど。」

リイラちゃんがちょっと怒ったように言った。傷はもう完治したようだ。

「リイラちゃん、何怒ってるの?」

あわてて聞く。

「私より年下でレベルも低いのに、魔法の威力は私の何倍も強いことがなんかヤダ。」

リイラちゃんの言うことに、少し共感する。毎回疑問に思ってることだけど、なんでこんなに魔法の威力がすごいんだろう。

「ん~~」

と言いながら、私は首を傾げる。

「お姉ちゃんっ」

その時、後ろから鈴愛が飛びついてきた。

「鈴愛っ「お姉ちゃん」ってここで呼んじゃだめ!」

「あっそっか。ごめんミレイ。」

私は鈴愛に聞こえるくらいの音量で注意する。

「王女様?とミレイは、なぜ抱き合っているのです?」

リイラちゃんが不思議そうに言う。

その言葉が終わると同時に私達はバッと離れた。そんなことをしている時、

「君たち!」

上の方から声がした。

顔を上げると、ファータスが地面に降りようとしていた。

「ちょっ…!離れて!」

リイラちゃんが杖を構えて言った。

私も杖を持つ。緊張感が流れる。

「違う違う!!戦いをするわけじゃないから!」

そう言ってファータスは杖を地面に置いた。

「戦いません」ということを示したいようだ。

少し緊張感が弱まる。私は杖を下ろす。

「僕…君たちの仲間に入れてほしいんだ…!」

急な一言。

「「は…………?」」

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