6話目 鈴愛 再会
「……鈴愛?」
「なんで私の名前…?」
王女様、いや、鈴愛が驚いて私を見ている。
「鈴愛?鈴愛なの?」
鈴愛という名前を連呼する。
「そうですけど…誰なのですか?」
「私だよ…月乃美麗だよ…!」
私の言葉で、鈴愛は見開いていた目をさらに見開いた。目、落っこちちゃうんじゃない?ってくらいだ。
「……お姉ちゃん…?」
「うん。お姉ちゃんだよ。」
鈴愛…鈴愛が今目の前にいる…!
月乃 鈴愛(つきの れいあ)。私の3つ下の妹。今さっきの王女様と同じ顔をしていて、性格も良かった。私を見つけるとすぐに抱きついてくれる鈴愛が、私は大好きだった。
私は中1くらいの時、鈴愛に
「お姉ちゃんが鈴愛をずっと守る。」
と言った。鈴愛は嬉しそうに笑ってくれた。
その笑顔が何よりも好きだった。
でも、そんな幸せな日々は、長くは続かなかった。
私が高1の時鈴愛は、
屋上で足を滑らせ、落ちた。
そんな知らせを聞いた時、私はここが現実か分からなくなった。夢の中みたいだった。人が死ぬなんて、ニュースかドラマとかでしか見たことも聞いたこともなかったから。
鈴愛がいない世界は、とても退屈だった。一日中やることがない。そして、今に至る。
「えっと……どういう状況?」
感動のあまり、抱きつきあう私達を、リイラちゃんを含め、フィアライに住んでいる人たちが不思議そうに見ている。
「私も…よく、分かんない…」
泣きながら言ったので、喋りづらい。
「鈴愛、どうしてここにいるの?」
「たぶん、転生ってやつだと思う。」
て、転生?!鈴愛と私は同じゲームに転生したの?!
「テンセイって…何?」
リイラちゃんがぽかーんとして聞いてくる。
「気にしないで。私と鈴愛しか知らない言葉だから。」
リイラちゃんはゲームのキャラだから、転生とか知らないのか。
「鈴愛。ちょっとここ離れよ。」
ここで話をしていたら、もっと不思議に思われそうだと思い、提案する。
「あ、でも、私王女なんだよね。護衛ついてきちゃう。」
そっか。物語とかでも王女様には護衛がいつも隣にいる感じがする。実際、鈴愛の後ろには何年トレーニングしたらあんな筋肉つくの?みたいな筋肉をつけている護衛が2人いた。
「いいな。王女様に転生するって。ずる。」
「えへへ。いいでしょ。」
にこにこ笑い合う私達。その時、
「フィオ様。そろそろです。」
後ろの護衛の1人が喋った。
「フィオって誰?」
私は首を傾げる。
「私のここでの名前だよ。お姉ちゃんは「鈴愛」のままでいいからね!」
可愛らしい声で、可愛らしいことを言った鈴愛。
「分かりました。では、戻りましょう。」
鈴愛は王女様の口調ですくっと立ち上がった。そして、私に耳打ちしてくる。
「これから、よく分かんない会議なの。じゃあね。」
そういった後、鈴愛は思いついたように目を開いた。
「ねぇねぇ!私の部屋来ない?」
「うん!」
私は即答する。
「フィオ様?」
「すみません。今から城に戻りましょう。あの、この方を私の部屋へ連れていきたいんですが、よろしいでしょうか?」
上目遣いで護衛に聞いている。断れるわけがない。
「は、はい。王女様がそう言うなら…」
護衛が言った。
鈴愛の部屋に行けるんだ…!
…ってあれ?鈴愛って、王女様…だよね。王女様の部屋に行くってことは…
「王城に行くってこと?!」
思わず大声で言った。
「?うん。そうだよ?」
当たり前じゃん、という目をして鈴愛が言った。
「王女様、私も行ってよろしいですか?」
リイラちゃんが言った。丁寧語を話すリイラちゃんは、別人みたいだ。
「ええ。お姉ちゃ…ミレイの友達なのでしょう?お名前は?」
鈴愛に「ミレイ」と呼ばれ、少しゾクッとする。
「リイラです。」
「では、行きましょうか。ミレイとリイラ。私は会議に出ないといけないので、申し訳ありませんが城に入ったら私の部屋で会議が終わるまで待っていてください。」
鈴愛がくるりと城へ体を向けた。ドレスのスカートがひらりと舞っていて、きれいだ。
フィアライのお城に入ろうとした時、
「フィオ様!それとミレイ様とリイラ様!」
護衛が後ろで叫んだ。
「逃げてください!」
え?逃げてって言った?
後ろを振り返る。人がいた。杖を持っているし浮いてるから魔法使いだろう。この人が何?
「サモン」
こちらに向かって魔法使いが呪文を唱えた。「サモン」ってなんだ?
魔法使いが構えた杖から何かが生まれてくる。
鳥だ。でもただの鳥じゃない。大人5人くらいの大きさで、羽を広げるともっと大きくなる。
ギイイイイイ
と、空気を震わせるほどの鳴き声を出している。
「なっなにこれ…」
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