フィアライ
5話目 都市 フィアライ
「うん!……って街?!」
「フローティング」で空をしばらく飛ぶ。「フローティング」で空を飛ぶ速度も私の方がかなり速いようだ。減速しても、リイラちゃんをたまに追い越してしまうほどだった。
「ついたよ!」
飛び始めてから10分ほどで、リイラちゃんが言った。
「ここがフィアライっていう街だよ!街よりも都市って言った方がいいかな?」
「と…都市…」
私は目をむく。建物が無数に並んである。少し暗い時間帯なのに、昼間のように明るい。
フィアライの入口の門から、真っ直ぐに道が続いていて、その奥には白と金が輝く、きれいな城があった。王様が住んでいる街なのかも。
「すご…」
「ねっ。すごいでしょ?!私が住んでる場所はここじゃないんだけど。」
「どこ?」
「フィアライの奥に山があるでしょ?あそこをこえたところのちっちゃい村。」
「へー。」
いつかリイラちゃんの村にも行きたいな。だけど、今は目の前のフィアライが気になる。
「…ミレイ」
「ん?」
リイラちゃんに目を向ける。なんだか辛そうだ。
「ずっと飛んでたから私魔力切れなんだけど…降りていい?」
「いいよ!私も降りる!」
そうだ。確か、空飛ぶって、結構魔力消費するんだよね。私はまだ全然平気だけど。
「「イレース」」
地面に足がつきそうなくらいまで降りて、呪文を唱える。
「見て。私の魔力、もう全くない。」
杖を見せてくる。スマホのバッテリーみたいなのが表示されていて、中身がなくなってる。
私の杖も見てみる。中身は黒で塗りつぶされている。まだかなり魔力あるのかも。
杖で魔力の残りが分かるんだ。
「これは魔力ゲージって言って、魔力があとどのくらいあるか分かるんだよ。…って、さすがにそれくらい知ってるか。」
いや。全く知りませんでした。教えてもらえて良かったー。
門からフィアライに入る。私達は外から来た人だから、すごい警戒されると思ったけど、思ったより簡単に中に入ることができた。
「ね。もう暗いし、宿屋で泊まってこ。ミレイ、何円持ってる?」
フィアライに入ってすぐに、リイラちゃんが言った。
宿屋か…ゲームっぽいな。
「お金…?ってどこにあるの…?」
私が言ったことに、リイラちゃんは眉をひそめて言った。
「ミレイ…って、逆に何を知ってるの?記憶喪失じゃないよね。」
記憶喪失って…ひどいなぁ。まぁ、知ってることってほぼないんだけど。
「お金はそこにあるでしょ?ほら。腰に引っかかってる袋。」
え。気づかなかった。こんなところに袋があったんだな。
ジャリジャリ
袋をゆらすと、お金らしきものの音。結構入ってそう。
「こんくらい。」
全部手にのせてリイラちゃんに見せた。
あ、あれ?私は目を見開く。
手にのっているものは、お金ではなく……ツルツルスベスベしている石だった。
「い…石だった…」
思わずボソリとつぶやく。
「……あははははは!!」
急にリイラちゃんが笑い出す。急だから、ちょっと怖い…
でも、初めて声を出して笑っているところを見たから、ちょっと嬉しい。
「な、なんで金袋にい、石が入ってんの…」
笑いすぎたせいで途切れ途切れに言うリイラちゃん。
恥ずかしさで顔が真っ赤になる私。その時、
「王女様が通るぞ!」
「おお。王女様!」
フィアライの真ん中にある広場が騒がしくなってきた。
「王女様……?」
王女様って、王様の娘だよね。ちょっと見てみたい。そんな私の気持ちを察したのか、
「広場で王女様を見に行こうよ!」
とリイラちゃんが言った。
「うん!」
私は元気よく答えた。
広場についた。王女様がはっきりと見えた。
髪はきれいな淡い茶色で、肌は外に一度も出たことがないくらい白い。顔立ちも整っていて、誰がどう見ても美人だ。白いシンプルなドレスを身につけている。
周りの人たちは、みんな頬を赤くしていた。たぶん私もそうだろう。こんなことを、前もしたことある気がする。
あれ?あんな人、どこかで見たことがあるんだけど……
あ。
「……鈴愛?」
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