4話目 初めて出会った人

「誰?!」


バッと振り返る。女の人が立っていた。髪型は私と同じポニーテール。シンプルな色の服と、キュロットスカートを履いている。

「あ、急に話しかけちゃってごめんね。私、魔法使いのリイラって言うんだ。よろしく。」

明るく話しかけてくる。

「よっよろしく…」

とにかく敵じゃなさそうでホッとする。転生してから、初めて人に出会った!嬉しい!

「あなたも魔法使いでしょ?さっき見てたんだ。」

「うん。魔法使いだよ。」

たぶん。

「名前は?」

「ミレイ。」

「今のレベルは何?」

「えっと…」

紙を開く。そういや、私も今のレベル知らないな。ブラックドラゴン倒したから、ちょっと上がってるかも。

『今のレベル ミレイ

魔法使い Lv.4』

上…がってるのかな?上がってるかも…!

「レベルなんだった?」

リイラちゃんが焦れたように聞いてくる。

「4だった。」

「えっ!レベル4なのに、ブラックドラゴン倒せたの?!」

すごく驚いている。

「…逆にレベル何なら倒せるの?」

私は首をかしげる。たぶん、ブラックドラゴンを倒す前は、レベル1か2だったと思うんだよね。それくらいで倒せる中ボスかと思ったんだけど。

「レベル30くらいでも手強い敵だよ?!二桁もいってないレベルで倒せるわけないんだけど…」

リイラちゃんの衝撃的な言葉。このゲームは、最高レベルが50だ。なので、レベル30は、かなり強い。え、私がブラックドラゴン倒せたの、もしかしてバグだったりする?

「ちょ、ちょっとそこらへんに向かって呪文唱えてみて。」

リイラちゃんがいった。呪文唱えるだけなら…

んー。なんの魔法にしようかな。レベル上がったから、魔法増えてるかも。見てみよっかな。

『使える魔法

フローティング

イレース

ファイア

スモールファイア

アイス

スモールアイス

ウインドブレード

ウインドサークル

ヒールライト

ライト

ダークサークル

ダーク』

わっ!めっちゃ増えてる!どれ使おう。ウインドサークルっていうやつにしよっかな。

さっそく杖を取り出し、呪文を唱える。

「ウインドサークル!」

すると、半径10mくらいの広範囲で、風がいろいろなものを切り刻み始めた。

すご!風の魔法、いいな。

「きゃっ!」

突然、リイラちゃんの悲鳴。見ると、リイラちゃんもその範囲内に入っていた。切り傷がたくさんできている。やばっ。

急いで私は杖の先をおさえ、風を止めた。

「リイラちゃん!!」

リイラちゃんに駆け寄る。リイラちゃんは倒れていた。無数の切り傷が体中にある。結構深そうだ。

周りを見回す。私の魔法の範囲内は、荒れた土しか残っていなかった。もともとは木も数本たっていた。地面にも草が膝くらいまではえていたのに…

「大丈夫?!ごめんね。どうすれば…」

私があたふたしていると、

「ヒ…ヒール…ライト…」

リイラちゃんが呪文を唱えた。リイラちゃんの体が光で包まれていく。そして、少しづつ切り傷が消えていっていく。回復呪文かな。完全に回復するまで時間がかかりそうだ。私も手助けすれば、早く終わるかも。

「ヒールライト!」

リイラちゃんを包んでいた光が明るさを増した。

そして、10秒ほどで傷が全て消え去っていった。二人で魔法を合わせると、こんなに強くなるもんなの?!秒で完全回復しちゃったけど。

とにかく、リイラちゃんに謝らなきゃ!

「リイラちゃん!ごめんね!あの呪文、使ったことなかったの。まさかあれほど広範囲だとは…」

私の必死に謝る声はリイラちゃんの耳には入っていないようだ。ふらっと立つと、

「離れて見てて。」

と言って、杖を取り出した。

「う…うん。」

ある程度離れると、

「そこで見てて」

と言われた。素直に止まってリイラちゃんを見る。

「ウインドサークル」

リイラちゃんが呪文を唱えた。半径5mほどの中で風が起こり、草などを切り刻み始める。が、そこまでの威力はないみたいだ。木は傷つきはしているが、倒れてはいない。草も少し残っていた。

リイラちゃんって、もしかして私より弱い?

「私の威力はこれくらい。ミレイより弱いでしょ?でも、私のレベル見てみて。」

ぴらっとあの紙を開いて私に見せてきた。あの紙って、誰でも持ってるんだ。

リイラちゃんの紙をのぞき込む。

ビックリして、思わず

「えっ」

と声をもらしてしまった。紙には、

『今のレベル リイラ

魔法使い Lv.10』

と書かれていた。私のレベルの倍以上だ。なのに…

「私のレベルは10。なのに、ミレイよりも威力が低いの。」

信じられない。それは正真正銘「バグ」というやつではないのか。

「でも、情報カードが嘘をつくわけないんだよね。」

「情報カードってなに?」

知らない単語が出てきた。こんなにゲームの知識を覚えていないとは…転生するゲーム、間違えたんじゃないかな。

「えっ情報カード分かんないの?!これだよ。これ。」

紙をひらひらさせて教えてくれた。情報カードって、『モンスターリスト』とか、『今のレベル』とか、『使える魔法』とかが書いてある紙の名前らしい。へー。知らなかったな。

「話を戻すね。私が言いたいのは、なんでレベルが4のミレイがあんなに強いのか知りたいってこと。」

「そんなこと言われても…私も今疑問に思ってるし…」

本当に、どうして私はあんなに強いんだろ?この謎、一生解けなさそう…

「ま、いいや!そのうち分かるよね!」

リイラちゃんが、面倒くさくなったのか、考えるのをやめた。まぁ、それが今は一番いいと思う。だって、これ以上考えても、たぶん無駄だろうし。

「ミレイ!」

リイラちゃんが急に思い出したように言った。

「な、何?」

「ミレイ、強いし、仲良くなれそうだからさっ!私と一緒に旅しようよ!」

「え」

急な誘い。リイラちゃんと、これから一緒に行動できるの?嬉しさで胸がいっぱいになる。

「うん!一緒に行きたい!」

リイラちゃんは、ゲーム内では、仲間にできるキャラの一人だろう。ぼんやり記憶にある気がする。このゲームでは、街とかダンジョンとかでしか仲間にできるキャラがいない。そんな人と森で出会えたなんて、運が良すぎではないか。

「じゃあ、まずこの森抜けて、街に行ってみよっか!」

「うん!……って街?!」

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