第11話

「それでは、私はこれで。」


 元担任で、現在、副担任の先生は教室を出ていった。

 いつもよりも速いテンポで歩いていたので、一刻も早く、この場から離れたかったのだろう。

 生徒達も先生の気持ちは現行進行形でよく分かった。


「ラルゴ・ブレーズだったか。さっさと席に戻れ。」


「は、はい!」


 あのラルゴが借りてきた猫のようにおとなしい。

 それだけでもいつもだったら、生徒達は驚愕していただろうが、さっきから驚くことばかりで感覚がマヒしていた。


「それでは、授業を開始する。俺が教えるのは主に訓練についてだが、一応、座学もやる。俺の時は教科書や参考書はいらない。メモを取りたければとるといい。」


 そう言うと、ルージュは電子黒板を操作して、何かの画像を出す。

 それは、エインヘリヤルの写真だった。


「問題だ。エインヘリヤルになるために必要な物はなんだ?リーナ・アイヴァン、答えろ。」


「・・・アルカナのコアです。」


 リーナはその場に立ち、答えを言う。

 何となく癪に障ったが、素直に答えた。


「正解だ。だが、もう1つある。答えろ。」


「・・・コアを埋め込むための人ですか?」


「それもあるが、この学園の入学条件に当たる部分だ。」


「・・・分かりません。」


 この学園への入学条件は公表されていない。

 生徒達もそんなことは授業で習っていなかった。


「分かるやつはいるか?」


 ルージュは教室を見渡すが、誰も手をあげることはなかった。


「いないか・・・正解はコアに対する適合率だ。」


 生徒達の頭に疑問符が浮かぶ。

 一般に公開されていない情報で機密扱いのものなので、知らないのは当たり前だった。

 この場にいる者は、誰も気づかない。

 そんな秘密の情報をルージュが生徒達に教えていることに。


「適合率とは、アルカナのコアに対して、どれだけ適合できるかだ。適合率が低ければ、コアを埋め込んだ時に拒絶反応を起こし、死に至る。お前らも覚えがあるはずだ。コアを埋め込む前に『身体検査』で何が機械の中に入っただろう?その診断結果と採決した血で、適合率が調べられている。」


 生徒達は思い出す。

 確かにコアを埋め込む前に、身体測定などのついでに機械の中に入ったことを。

 あれがそうだったのか、と。


「アルカナのコアによって、それぞれ適合率が異なる。お前たちは自分にとって、最も適合率が高いコアが埋め込まれたはずだ。」


 電子黒板に映る写真がエインヘリヤルからアルカナのコアへと切り替わる。

 淡く白い光を放つ球体のものだ。

 リーナ達を襲ったキメラのはもっと大きく、強い光を放っていたが、確かに同じものだった。


「アルカナのコアは、ウルフなどの小さい物は、エネルギー源として活用されている。アルカナのコアはどれも出力が違うだけで、無限に等しいエネルギーを持つことは変わらないからな。」


 電子黒板に映る写真がパッパッと切り替わる。

 人が移動するための乗り物などのアルカナのコアが使用されている機械の写真が数枚表示された。


「昔は、電気というエネルギーを使って利用していたものをコアから発生しているアインエネルギーにより動かしている。とまぁ、コアについてはここらで置いておこう。次はタロットについてだ。」

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