第7話 平凡な幸せ
その夜、私は1人
自分の手料理を食べながら
とても穏やかな気持ちで過ごしていた
平凡に、ゆっくりと過ぎていく時間は
私にとって、何よりも大切な時間だ
勇気とか、前進とか、挑戦とか・・・
そんな単語は見ただけでも
心の底から疲れてくる
私は自然の空を見たり
1人、野原で寝ころびながら
雲の流れを見ている時が
いちばん好き
自分の存在は小さくても
どこかで誰かが寄り添ってくれる
それだけで、自分の存在価値があるのだと
それだけで、少し心が強くなれる
おじちゃんも、その1人だ
・・・そうだ明日、久しぶりに
お蕎麦を食べに行こう!・・・
夕方、土手で会ったばかりの
おじちゃんの笑顔が、まだ温かく
私の心を包んでくれている
私は最後のコロッケを食べ終わると
そのまま少ない洗い物を
流し台に持っていき
いつものように、無心で洗い始めた
刑事である父の帰宅は
いつもバラバラだ
幼い頃から慣れている
テレビから人の声は聞こえるし
何も、淋しくなんかない
いつもより、ゆっくりと湯船に浸かり
部屋を明るくしたまま
ゴロンとベッドに横になった
身体は重たく感じるけれど
シャンプー後の髪を触るのが好きで
指先でクルクルとしてしまう
いつものように夜更かしをしながら
窓を開けてみる
深夜になった夜空は真っ暗で、
春になったばかりの夜の湿気は
まだ肌寒さを感じる
ベッドに戻り
毛布を足に絡ませ
お布団に身を包みこんだ
ウトウトしかけた時
遠くで消防車のサイレンが
ウー ウーと叫ぶように
鳴り響いていた
かなり長い時間に感じた
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