第2話 陸との出会い

陸は小学校の卒業式が終わった春

知らない土地から

母親と2人で引っ越してきた

たまたま自宅が隣だった私の家に

大人しそうな

母親と挨拶に来た

陸の身体は細く

同級生とは思えない程

華奢で小さな骨格

肌色は透き通る程

綺麗な白色で

その中央には

大きくブルー色の目が光り

印象的だった・・・

私が挨拶をすると

陸は自分の母親の後ろ側に立ったまま

ポツリと一言 『よろしくお願いします』

とだけ答えた

なんて線の細い声なんだろう

私は陸の声と

まだ肌寒い春の風を感じながら

なぜだか少し

物悲しい気持ちになった


・・・・・・・・

『絶対に水季とは気が合わないよ!』

笑いながら、親友の美咲は慣れた手つきで

唇にグロスを塗りながら笑った

美咲は小学4年生の頃

クラスが同じになり

なんとなく、それから一緒に居る

お互いに片親同士だから

煩わしい気遣いもなく

下手な家族愛の話なんて聞かなくてもいい

美咲は、いつも真っ直ぐだ

嘘が嫌いで

自分の母親のことを大切に思っている

私と父親のことも

いつも気にかけてくれている

10才の頃から

美咲は人の心の隙間を

良く見つける子だった

父親が刑事という立場の私は

殆どの時間

いつも1人で居ることが多く

コンビニの商品を眺めながら

なんとなく時間をつぶすのが好きな小学生だった

同級生達に

それぞれの食卓が

毎日当たり前にある事は

見て見ぬふりをしていた

生まれた所が違うと

こんなにも食生活が孤立してしまうのかと

10才の頃までは1人 

良く泣いた

冷たいお布団を

ドライヤーで温めて眠ることが

その頃の日課だった私に

美咲がいつの間にか

寄り添ってくれるようになった

父が夜勤の時には

美咲の母親は、快く私を泊めては

『水季ちゃんが居てくれると私達も楽しいんだよ』と

毎回笑って、私の目を見ながら何度もそう言ってくれた

私はテレビのついた明るい部屋で

一緒にごはんを食べ

美咲とお風呂に入り

温まった身体のまま

お布団に入った

美咲と2人

笑いながら

いろんなお喋りをした


豆電球の灯る中

美咲と私の息が

お互いの頬を温めあい

足の指先をひっつけて

たくさん笑った

どちらかが眠るまで

ずっと向かい合い

止まらないお喋りをしながら

引っ付き合った

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