第13話 鈍チンさん
芹田に想いを伝えてから。
俺は横になっていた。
具体的にどう助ければ良いのか。
そしてどう.....笑顔にすれば良いのか。
そんな事を考える。
芹田に出会ったのは。
かなちゃんに出会ったのは運命だろう。
そんな事を考えながら俺は右の壁を見る様に横になった。
「.....どうしたら幸せになる.....か、か。こんな事を考える様になったのは.....初めてだな。人の為に考えるなんて」
そんな事を思いながら俺はもどかしい気持ちになる。
何故こんな事を考えているのだろう。
一体何故俺は人の為に動こうと思っているのだろうか。
こんな感情にも。
動きになるのも。
全てが初めてだな、と思う。
「.....思春期だから?.....そんな訳ないか」
何故ろうと本当に思う。
俺が人の為にこんな気持ちになるのは。
姉ちゃんの為、家族の為。
それだったらまだ分かるのだが。
だけど家族以外の為っていうのは.....。
「.....」
俺は天井を見上げる。
芹田の事をこんなにも考えるなんてな。
まるで恋をしている男子.....いや。
そんな訳ないな。
そもそも俺なんかがモテるとは思えない。
「.....そうなると何だ?何故.....」
そんな事を思いながら俺は顎に手を添える。
そして考え込む。
だが答えは一切浮かばなかった。
だけどこれだけは言える。
芹田は俺に恋はしてない、と思う。
お節介なだけだ。
「.....モブの様な俺に恋をしている?そんな訳ないよな」
その様な感じで思いながら俺は目を閉じる。
そして考え事をしていると.....朝になった様だ。
俺は欠伸をして起き上がる。
すると、大欠伸!、と声がした。
俺は、?、と浮かべながら、ああ。ねえ.....、とそこまで言葉を発してからそのままギョッとする。
「おはよう。小野寺くん」
「.....芹田?俺は夢でも見ているのか?一体何故芹田がこの場所に」
「?.....お寝坊さんだね?そんな訳ないでしょ?これは現実だね」
「という事は芹田。起こしに来たのか」
「そういう事だね。ささ。早く準備して」
「待て待て!新婚夫婦かよ?!」
「し、新婚って?!」
芹田は真っ赤になる。
っていうか俺も何を口走っているんだか。
思いながら、すまん。寝ぼけていた、と謝る。
すると芹田は、もう。ビックリさせないで、と困惑する。
そして踵を返してから、じゃあ待ってるから、とニコッとした。
「.....待ってる?.....何?」
「色々作ったよ。朝食」
「はい?」
「朝ごはん食べてお寝坊さんを治して」
「.....!?」
ますます夫婦の様な感じになっているが。
俺は気を取り戻す。
危ない。
こんな事で迂闊に煩悩を出すとは。
俺も参った人間だな。
そんな訳ないと思うしな。
「そういやかなちゃんは?」
「勿論連れて来たよ?」
「もちろん連れて来たって.....」
「だって君が守ってくれるんでしょ?」
「守ってやるとは言ったが!?」
「私は君の言葉は嘘じゃないって思うから。.....だから」
この先も君と、とニコニコする芹田。
それから、かな、も待っているからね。早く来てね、と芹田は、ばいちゃお、と言いながら去って行く。
俺はその言葉に赤面しながら横を見る。
そして口元に手を添える。
全くな、と思いながら、だ。
「何だって.....」
そんなに接してくるのか。
こんなどうしようもない俺なのにな。
思いながら俺は複雑な顔をする。
そして布団を畳んでからそのままリビングに行くと。
姉ちゃんとかなちゃん。
それから芹田がいた。
にーに!おはー!、とかなちゃんは笑顔になる。
「おは。かなちゃん」
「にーにあたまが!あはは」
「もー!整えといで!幸治!恥ずかしいよ!」
「ありがたいけどアンタが言うな」
「あはは。仲が良いんだね」
家族団欒.....か。
思いながら俺は直ぐに頭を整えたりしてから。
そのまま椅子に腰掛ける。
すると芹田がご飯をよそってくれた。
「はい。小野寺くん。お姉さん」
「ありがと!良い将来の嫁さんだねぇ」
「嫁じゃねぇぞ」
「そんな事言って!モテモテだぞ?今を大切にしなされ」
「いやいや.....」
全くな。
思いながら俺は手を合わせる。
ん?というか.....芹田の作った朝食?
初めてじゃないか?
「ほうれん草のおひたし。.....それから卵焼き。.....お魚。色々」
「お前本当に料理上手なのな」
「.....家には私とかなしか居ないからね」
「ああ。すまん。余計な事を言ったな.....」
「余計じゃないよ?.....そんなものだよって話だよ」
「.....」
俺は複雑な顔をする。
それから横を見た。
するとかなちゃんが、おねえちゃんはせかいいちりょうりがじょうずなのです!、と胸を張ってから笑顔になる。
その姿を見ながら微笑む。
それからかなちゃんの頭を撫でる。
芹田が言う。
「そうだね。かな。世界一じゃないけど上手だよね私」
「うん!」
「.....こんな良い嫁さんを貰った奴は幸せだろうな。本当に」
「.....」
「.....」
「.....え?」
何でこんな沈黙する。
俺をジト目で見てくる姉ちゃん。
そして少しだけ複雑な顔の芹田さん。
かなちゃんは( ゚д゚)の様な難しい顔。
何でそうなるのか分からない。
「.....」
「うーん。我が弟はやはり鈍チンだねぇ」
「.....は!?」
鈍チンってなんで!?
俺は目をパチクリしながら唖然とする。
全く、と姉ちゃんは言うが。
訳が分からないのだが。
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