第7話 アイスと想い

芹田ゆかなと付き合っているという噂が蔓延している様だ。

それを断固として否定する俺。

俺なんかの様なモブが芹田と付き合えるとかあり得ない。

そもそもそんな噂を流したアホをとっちめたい気分だ。


考えながら俺は怒り混じりに否定しながらの放課後。

いきなりスマホにメッセージが入る。

それは芹田からだった。


(今日.....一緒に迎えに行ってくれないかな。かな、の)


そんな事が書かれていた。

俺は眉を顰めて考えてから、うむ、と考えて。

人が居ない場所で合流する事になった。

それは.....駅前だ。

そこに芹田が笑みを浮かべて立っていた。


「芹田」


「あ。小野寺君」


「.....良いのか?俺なんかが」


「だって、かな、すっごい喜ぶし」


「.....」


正直.....あの話の後だと申し訳ない感じがする。

俺なんかがこのポジションで良いのか、という事で。

その感じを受けたのか芹田は、大丈夫だよ、と言ってくる。

それから笑みを浮かべた。


「君だからこそ、だよ」


「.....俺だからこそ?」


「君は.....私達にとって希望になりつつあるから」


「希望.....」


「私、貴方と一緒で良かったって思ってる」


その言葉に赤面しながら頬を掻く。

数秒してから芹田はボッと赤面した。

あ、そういう意味じゃないからね!?、と言いながら。

俺は、わ、分かってる、と答えた。


「.....でも本当に、かな、の為になっているから。.....有難う」


「.....そうか」


俺はその様に返事をしながら芹田を見る。

そして、じゃあ行こうか、と言う芹田。

俺はその言葉に、待ってくれ、と声を掛ける。

それから、幼稚園と近いしアイスを買っていかないか、と言葉を発する。


「え?.....アイス.....って?」


「そう。アイスな。.....何つうかかなちゃんが喜ぶかなって」


「.....相変わらず優しいね。小野寺君って」


「.....そうかな。.....だと良いけど」


俺は苦笑しながら居ると。

じゃあ行こうか、とスーパーに指差しつつ向かいながら芹田は言う。

その姿に、そうだな、と返事をしながら歩き出す。

それから駅前のスーパーに向かった。

そしてアイスを購入してから幼稚園に向かう。


「あいす!にーに!有難う!」


「良かった。喜んでくれて」


「そうだね。小野寺君」


芹田は柔和な顔をしながら俺を見る。

そして俺達は3人でアイスを食べながらそのまま歩き出す。

何というか、かなちゃんが俺達の間にまた川の字に挟まっている形だ。


俺はこの事を何というか.....まあその。

当たり前の様に感じていたがこれは当たり前ではないと気付く。

学校の件もあるしな。

思いながら俺は不安げに芹田を見る。

芹田も俺に気付いたのか笑みを浮かべる。


「.....大丈夫。噂の方はどうにかなると思うから。.....気にしないで置いておいたら良いんじゃないかな」


「そうかな?.....でも.....良いのか。お前さんは。こんな変な噂.....」


「なんていうかね。全然構わないって思う。.....君と一緒は楽しいしね。恋とかじゃないと思うけど。私.....そういうの嫌いだから。放って置いたら良いんじゃないかって思うだけだから」


良いとか悪いとかそんなの無いよ、と柔和になる。

それから俺の前に出て来る。

同じ様にふざけた感じでかなちゃんが出る。

俺はその姿を見ながら!と思っていたが。

何だかその姿にリラックス出来た。


「にーにはすごくいいひと」


「そうだね。かな。だから目の前の事に集中したら良いんじゃ無いかな。.....だから小野寺君。そんな悪気のある人なんか放って置いたら良いんだよ」


「.....そうか」


俺はそう答えながら苦笑する。

それからかなちゃんと芹田を見た。

かなちゃんと芹田は俺を見ながらアイスを食べる。

そして笑顔を浮かべた。


「.....有難うな。芹田。かなちゃん」


「.....うん。.....此方こそ有難う。.....私は.....君に助けてられているね」


「.....俺は何も助けてないぞ?俺の方が助けられているし」


「.....いいや。.....それは気のせいだよ。私が助けられているから」


このまま言い合っても仕方がない。

俺は思いながらそこで切ってから.....そのまま芹田を見る。

するとかなちゃんが、やっぱりパパとママみたい!、と笑顔を浮かべた。

目を見開く俺。

そして.....芹田が聞いた。


「.....かな。.....パパとママ.....好き?」


「.....すきだよ。.....でもパパとママは戻らないから。.....わたしがつよくないとだめ」


「.....かな.....」


「.....おねえちゃん。だいじょうぶ。わたしは.....つよいから」


かなちゃんの言葉はポツリポツリの言葉になり。

それから寂しそうな顔をする。

俺はその姿を複雑に見つめていると芹田が、かなちゃんを強く抱きしめてあげた。

それから、かな.....、と涙を浮かべる芹田。

俺はかなちゃんをまた見る。


「.....かなちゃん。強いんだね」


「.....うん。わたしはつよい。でも.....かなしい」


「.....そうか。.....かなちゃん。頑張ってるね」 


「.....うん」


かなちゃんは涙を浮かべていたが。

そう強く話している。

俺はその姿を見ながら心を打たれた。

この子は本当に、と思う。


「芹田。本当に良い妹さんを持ったな」


「.....うん。.....私の自慢の妹だから」


恥ずかしそうにする芹田。

そんな会話をしながら。

俺達はそのまま帰宅しながら2人を自宅に送り届ける。

そして俺はその帰り道で空を見上げる。


そうしてから少しだけ頬を叩く。

頑張ろう、と。

そう思いながらオレンジに染められた道を歩いた。

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