第5話 幸せなる世界

姉はニヤニヤニヤニヤしながら俺を見ていた。

全く姉ちゃんは、と思う。

俺は家事を終えてから姉の部屋の布団を整えたりして。


そのまま自室に戻る。

今日はビックリしたな.....まさか芹田が俺の家に筑前煮を持ってくるとは。

思いながらカレンダーを見る。


「今度の土曜日.....」


俺は考えながら芹田にメッセージを飛ばしてみる。

今度の土曜日に一緒に公園まで行きますか、と。

そして直ぐに既読になったが.....30分ぐらい返事が無かった。

え?俺って嫌われているのか?

そう思ったのだが。


(はい。じゃあ今週の土曜日で.....)


そんな返事があった。

俺は!と思いながら、じゃあ今週の土曜日に、と返事を打つ。

すると芹田が、ち、と一言、送ってきた。

何だこれは、と思っていると。

筑前煮.....美味しかった?、と聞いてくる.....ああそういう事か。


(美味しかったぞ。かなり上手なんだな。料理)


(そ、そう.....良かった。お口に合って)


(凄い上手なのはかなちゃんが理由か?)


(.....そうだね。それもあるけど.....でもうん。それかな。理由は)


芹田がはにかんで嬉しそうにしている姿が思い浮かぶ。

俺はそんな事を考えながら笑みを浮かべる。

すると芹田は、かなも好きなんだ。筑前煮、と書いてくる。

俺はその言葉に、もしかしてお前さんは福岡に由縁があるのか?、と聞いてみる。

そうすると、生まれが福岡なの、と答えた。


(小野寺くんは何処生まれ?)


(この街だな。.....そして生まれも育ちもこの街だ)


(そうなんだ。それって何だか羨ましいな。.....だってこの場所を昔から知っているって事だよね?)


(そういう事だな)


(何だか秘密の場所まで知ってそう。アハハ)


そんな会話を芹田とする。

すると芹田は、その。お姉さんと2人暮らしって聞いたけど.....、と書いてきた。

俺は、ああ。そうだな。だらしない姉だけどね、と答える。

芹田は、でも愛されているって事だよ。お姉ちゃんと仲が良いのって、と笑みを浮かべた感じで文章を送ってくる。


(そんなもんかね)


(そうだよ。きっとそう。家族は.....大切な人は大切だから)


(芹田はお姉ちゃんだったよな?どう思う)


(.....私?.....私としてはそうだね。家族みんなと仲良しなのが羨ましい)


(芹田.....)


何だか複雑な感じになってしまった。

どうやら何かあるかもだが。

俺は思いながら、芹田も大変だな、と送る。

すると芹田は、少なくとも私よりかはかなの方がもっと大変だね、と書いてくる。

それから苦笑する様に文章を書いてきた。


(かなは良く夜泣きする)


(そうなのか)


(そうだね。側に私が居ないと寝てくれない)


(そうなんだな)


でも最近は君に会うのがとても楽しみみたい、と書いてくる。

俺はその言葉に苦笑いを浮かべながら、そうなのか、と答えた。

すると芹田は、うん、と返事を寄越す。

そして、明日も会いに来て、と文章を送ってきた。


(そろそろ寝るね)


(ああ。その時間だな。.....おやすみ)


(おやすみ)


それから俺はスマホを閉じる。

そして天井を見上げた。

そうしてから横の.....置いてあるラノベに手を伸ばす。

読んでみるか.....。



そんな事をやっていると朝になってしまった様だ。

机に突っ伏して寝ていると姉ちゃんに朝、起こされた。

それから朝飯をかき込んでから。

玄関から出ると。

そこに芹田とかなちゃんが居た。


「おはよう!」


「.....せ、芹田?どうしたんだ?」


「かなを幼稚園に連れて行くのに一緒にどうかなって」


「.....!.....え?.....良いのか?」


いいよー、というかなちゃん。

俺達はその姿を見ながら苦笑しつつ。

そのまま幼稚園に向かう事になる。


歩き始めると俺の手をかなちゃんが握り。

そして反対側の手に芹田。

何というか.....夫婦が子供を連れて行く構図だ。

良いのかこれ?

芹田は気が付いているのか?



「ここ!」


「.....おお.....そうか。かなちゃん。しかし.....森田幼稚園か。懐かしいな」


「知っているの?小野寺くん」


「そうだな。.....俺が卒園したのここだからな」


「あ。そうなんだね.....」


芹田は笑みを浮かべる。

そして幾つかの保育園児と保護者が登園する中。

俺達も混じりながら登園させる。


すると保育士の方から、あれ?そちらの方は?、と言われたので。

俺は、知り合いです、と答える。

それから頭をゆっくり下げた。

保育士さんは、そうなのですね。宜しくお願いします、と笑顔で言いながらかなちゃんの背中に触れる。


「それではかなちゃんをお預かりしますね」


「あ、はい。お願いします」


「.....」


保育士に預ける手順が手慣れている。

まあ当たり前なのだが。

でも芹田が大人になってそしてもし子供を産んだら。


こんな良い奥さんを貰ったやつは幸せ者だろうな。

優しいしな.....、と思っていると。

芹田が目を丸くして俺を見てきた。


「.....どうしたの?私をジッと見て」


「.....いや。良い奥さんになりそうだなって思ってな。お前さんがもしこの先、誰かと結婚すれば」


「.....へあ!?.....も、もう!変な事を言わないでよ.....!」


「え。そ、そんなに怒るか。.....す、すまない」


冗談で言ったつもりだが。

真っ赤になって俺から目を逸らす芹田。

ビックリした。


そんなに怒るとは思わなかった.....次から気を付けよう。

思いながら俺達は幼稚園を後にした。

それから登校していると芹田がお礼を言ってくる。


「有難う。一緒に来てくれて。かなも嬉しそうだった」


「.....ああ。気にする事ないよ」


「.....かなって人懐っこいから。.....この世の中じゃ怖いんだよね。.....でも君なら安心出来る感じだね」


「.....俺が安心?」


「君は安心だよ。.....君は良い人だと思うから。この私が認めるぐらいだから」


芹田は笑みを浮かべる。

正直そこまで安心される様な人間だろうか俺は。

考えながら顎に手を添える。

まあ考えても分からんよな.....、とは思うが。


「じゃあ行こうか」


「.....そうだな。高校に急ごう」


そして俺達は重ならない様にしながら。

バラバラに登校する。

あまり俺達が一緒とかそんなのを人に見せると.....煩いしな。

特に鳥宮とか、鳥宮とか、鳥宮とか。

思いながら俺は溜息を吐いた。

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