第4話 天地の差なのに?

芹田ゆかな。

俺にとっては天空のその先のかなり遠い存在に思える。

所謂.....芹田が天国から糸を垂らし。

地獄に俺が居るかの様な物語。

そんな感じだ。


その芹田と何故かアドレス交換までした俺は何なのか。

思えば芹田の妹さんが迷子になっていてこうなった。

でも正直言ってここまで発展するとは.....。

そう思いながら俺は玄関を開ける。


「ウぁ!?」


帰って来てから玄関先でそんな声を発する俺。

そこには死体が転がっていた。

違う死体じゃない。


何というか俺の姉ちゃんだった.....。

またかよ。

小野寺雪子(おのでらゆきこ)。

28歳でありOLであり美人の姉ちゃんだが今はそんな面影が無い。


「もう飲めない.....ンゴ」


「.....姉ちゃん.....何でこの時刻に飲んでるの?」


「会社がビル清掃で.....メンテで.....こうなった.....」


「.....」


正直まさか夕暮れ時、と言っても午後6時には近いが。

飲んでくるとはな。

思いながら仰向けに寝っ転がっている姉ちゃんを他所目に俺は鞄を置きにリビングに向かう。


それから鞄を置いてから戻ってくる。

メソメソと泣いていた。

いやいや.....何でだよ。


「酷い.....何故に幸治も無視するの.....」


「いや。無視していた訳じゃないんだが.....正直言って見慣れてしまった。だからこういう感じだ」


「見慣れちゃったって酷い!何で?何で!」


「姉ちゃん。常識的に考えて。.....見慣れるよね?30回ぐらい見ている状態なんだから」


「.....うー.....それもそうっか」


そんな、そうっか、とかいう変な返事をしながら起き上がる。

だが姉ちゃんは、うぶ!.....吐きそう、と青ざめて言い始める。

オイィ!!!!?

ここで吐くなよ!?

少なくとも今の今まで無かったとはいえ!!!!?


「姉ちゃん!トイレに行ってくれ!!!!!」


「そ、そうね.....」


そんな会話をしているとインターフォンが鳴った。

何というか宣伝か?

宅配か?

何でも良いがこのタイミングとか。


俺は、ああもう!ドタバタだな!、と思いながら、どちら様だ!、とドアを開けると.....何故か芹田が立っていた。

そしてかなちゃんも居る。

驚かせてしまった様だ。

申し訳ない。


「あ、ゆ、夕食を作りすぎちゃって。筑前煮。食べない?」


「は!?.....え!?」


「にもの〜」


「.....あ、ああ。それは有難い.....が」


俺は紙袋に入った筑前煮を有難く受け取る。

何というか俺と姉ちゃんの2人暮らしなのでかなり有難い。

親は海外赴任しているから、である。

でもそれはそうと何故隣人じゃないのだこれを届けるのが。


思いながら俺は芹田を見ていると。

だらしない格好の姉が、ねえ。こうじ?何しているの.....、と言葉を発した。

そして俺を見て!?という感じになる。


「.....隣人さんにそんな可愛い子居たっけ?」


「.....あ。ああ。いや。この子は近所の俺のクラスメイト.....ってか姉ちゃん!人が見ているのによ!?」


「ご、ゴメン.....」


姉ちゃんは奥にそそくさと行ってしまう。

それから溜息を吐いてから芹田を見る。

芹田はクスクスと笑っている。

そして笑ったせいの涙を拭きながら、仲が良いんだね、と柔和になる。

俺は、あ。ああ。まあ。.....一応、親が外国に行って居ないんだ、と答えた。


「.....え?.....あ。そうなんだね」


「まあ.....それでもあんなだらしない感じの姉だけど頼りになる人は居るからな」


「.....そっか。.....良いご家族なんだね」


「.....そうだな.....まあ周りから見れば異端かもしれないけどな」


異端じゃないと思うけどな、と芹田は笑みを浮かべるかと思ったが。

深刻そうな顔を一瞬してから切り替える。

俺は?を浮かべて見る。

するとかなちゃんが、おねえちゃん?、と不安そうに見ていた。

その事にハッとした芹田が、ゴメンなさい。深刻な感じになったけど.....、と切り替えしながら俺を見る。


「.....美味しいと思うけど.....良かったら明日感想聞かせて」


「.....あ?.....ああ.....うん」


「.....じゃあまた」


そして手を振るかなちゃんと芹田を見送ってから。

そのまま室内に入る。

すると、にへー、とした最悪の顔の女に向かれた。

何を話していたのかなぁ?、と揶揄われる。


「まあ.....明日の事とかこの貰ったものとかの事だ」


「恋愛は?」


「無いわ!!!!!」


「無いの?つまんない。エッチぐらいしようよ」


「ぶっ飛んどるわ!!!!!」


何でや!、という感じで俺は反応する。

すると姉ちゃんは、良いなぁ。私には彼氏居ないのに〜、とか八つ当たりしてくる。

良いなぁ、とかじゃ無いけどな。

俺は芹田とは付き合ってないから、と思う。


「.....はぁ.....まあ良いや。ご飯にすっか?」


「お、そうだねぇ。ところでその中身は何?」


「これは筑前煮らしい」


「.....そうなんだ。へぇ.....というか筑前煮って結構腕を鍛えないとダメなんじゃないかな?凄いね」


「それだけ家庭的って事だな.....妹さんも居るしな。おそらくそれが影響だな」


「まさに幸治にピッタリだね」


だからそういう関係じゃないって。

俺は額に手を添えながら説明するが。

姉ちゃんはいつまでも俺にニヤニヤしていた。

全くコイツは.....、と思う。

すると姉ちゃんは、でも、と俺の頭を撫でる。


「幸治を見てくれる人がいるってのが安心だね」


「.....見てくれるって.....いや。急に姉貴面すんなよ.....」


「アハハ。ゴメンゴメン」


姉ちゃんはそう言いながら、じゃあ飯にしますか!、と天井に拳を立てる。

俺はその姿を見ながら苦笑する。

それから俺は、じゃあ飯の準備をするから。取り敢えず手伝って、と告げる。

すると姉ちゃんは、あいあーい、と返事しながらノソノソと動き出した。


そうしてから俺を笑みを浮かべて見てくる。

本当に姉貴面だな。

まあ.....今だけだけど。

でも悪い気はしない感じだ。

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