第3話 約束

何故か知らないが学校一の美少女に迷子の妹を送り届けたお礼をしたいと申し出を受けた.....。

俺は下駄箱に向かう。

するとそこに芹田が立っていた。

待っているかの様に。

そして俺を見つけるなり小さく手を振った。


「ゴメンね。急にこんな事を言い出して」


「.....いや。まあ大丈夫だが.....」


「でもね。本当に有難かった。だからお礼は絶対にしたいって思ったの」


「.....でもあまり気にしなくて良かったんだけど.....本当に偶然だしね」


でも私にとっては偶然であっても送り届けてくれた事に感謝しかない。

だからお礼はきちっとしないとね、と笑みを浮かべる芹田。

俺はその姿を見ながら頬を掻いた。

すると芹田は、じゃあ行こうか、と言ってくる。


「そうだな」


「私がオススメするドリンク屋があるの。タピオカって古すぎだけどね。美味しいタピオカのドリンク屋さんなの」


「そうなんだな」


「そう。今からそこに行くよ」


そして芹田は前を歩きながら俺を案内する。

その場所は.....駅前のロータリーの近くにあった。

ピンク色の建物で英語の表記の看板。


まさかタピオカのドリンク屋とは思わなかったな。

俺個人では入らない場所だ絶対に。

あまりに綺麗すぎる感じだから。

思いながら芹田を見ると.....芹田は看板を指差していた。


「これこれ!これ美味しいんだよ。タピオカティー!」


「純粋なやつだな?」


「そうだね。とってもありきたりだけど.....でも私はこれが好き」


「そうなんだな」


笑顔になる芹田。

俺はその姿にドキッとしながらも.....気持ちを安泰させる様に何とかしながら。

そのまま芹田と一緒にタピオカ屋に入る。


するとクレープの良い香りがした。

店内の内装はピンクのまるで.....遊園地っぽい賑やかな感じに彩られている。

帰宅途中の学生が多い。


「クレープも焼いているのか」


「そうだね。.....クレープ屋もやってるかな」


「チョコバナナとか色々あるな。.....成程ね」


「食べたい?」


「いや。.....今はお腹がいっぱいだ」


そっか、と笑う芹田。

俺達はそのままカウンターに向かう。

それから、えっと。タピオカティーを2つ下さい、と芹田が言う。

すると笑顔の女性の店員さんがとんでもない事を言った。

もしかしてカップル様でしょうか、と。


「.....へ?.....い、いや!!!!?違います!」


「そ、そうです!」


真っ赤になる芹田。

すると女性の店員さんが、大変失礼を致しました。そうなのですね。.....いえ。今はカップル割というものをやっておりまして.....、と説明をしてくる。


俺達は赤くなりながら、カップルではないです、と否定する。

女性の店員さんは、畏まりました、と言いながらレジを動かす。

お金を払う芹田。

そして赤くなりながら苦笑しながら俺に向いてくる。


「ビックリしたね」


「.....そ、そうだな.....」


「私達はそんな風に見える?」


「.....い、いや。俺に聞かれても」


何というか確かにそう見えるのかもしれないけど。

でも恋人では無い事は事実だ。

俺は心臓を落ち着かせながらタピオカティーを受け取る芹田を見る。

芹田はそのうち1つを俺に渡してきた。


「い、椅子に座ろっか」


「.....そうするか」


芹田は俺を恥ずかしさを掻き消す様に見てくる。

俺はその姿に納得しながら周りを見渡した。

そして俺達は椅子を探して腰掛ける。

対面に芹田が腰掛ける形だ。


「.....」


「.....」


俺達はモジモジしながら赤くなる。

何これウブカップルかな?

その。

何かを切り出したいんだけど何も切り出せない。

考えていると芹田が話し始めた。


「かな、が昨日脱走したのは初めての経験だった。アイスを買いに行きたいって一点も.....1人じゃ行かないの。普通は」


「.....あ、ああ。そうなのか」


「.....うん。.....何でだろうって思う。普段は勝手に動かない子なんだけど.....」


「.....そうなんだな」


芹田は、本当に昨日は心配した。行方不明届も出そうとした。近頃は連れ去りが多いから、と涙を浮かべる。

俺はその姿を見ながら、そうだな、と答える。

そして真剣な顔で芹田を見る。


「.....だから本当に有難う。君には.....感謝しかない」


「.....偶然でも良かった。君に送り届けれて」


「うん。本当に有難う」


「.....」


「.....」


また言葉が出てこなくなる。

俺は考えながらタピオカティーを見る。

これ美味しいな。

思いながら、芹田、と切り出す。

すると芹田は、は、はい!、と反応した。


「これ美味しいな。タピオカティー」


「.....そ、そう?有難う。嬉しいな。探して知った価値があった」


「.....芹田はよく来るのか?この場所」


「よく来るよ。楽しいから」


でも男の子を連れて来たのは.....は、初めて、かな、と真っ赤になる芹田。

俺はその言葉を受けて真っ赤になった。

それから、そ、そうか、と頬を掻く。

そうしていると芹田が、でも君が初めての人で良かった、と向いてくる。

それはどういう意味だ!?


「.....あ。ふ。深い意味は無いよ!!!!?」


「そ、そうか!?」


握り締めたせいで芹田のカップの蓋が吹っ飛ぶ。

あまりに俺達はウブすぎた。

思いながら俺は吹き出したドリンクを拭いてからそのまま帰宅する事にする。

困ったもんだな.....。



「じゃあ。また明日かな」


「今日は有難うね」


「ああ」


そして俺は芹田を家に送り届けてから。

そのまま手を振ると。

家の中から、かなちゃんが出て来た。

それから俺を見てから!と浮かべながら寄って来た。


「にーに」


「.....ど、どうしたの?」


「今度家に遊びに来て」


「.....!?」


「.....ちょ!!!?!かな!何を言っているの!!!!!」


まさかの言葉に真っ赤になる芹田。

そして慌てる。

するとかなちゃんは、んー。にーにの事をもっと知りたい?、という感じで真顔のまま小首を傾げた。

俺は、ちょ。それは早いよ。かなちゃん、と目線を合わせてみる。


「.....じゃあどうしたらいいの?」


「どうしたら.....って?!」


「じゃ、じゃあ、かな!今度、近所の公園で遊ぼう!会おうよ!」


流石に家の中に呼ぶのは、と芹田はモジモジする。

う、うーむ。ちょっぴり残念だ。

俺はちょっとショックを受けながらも、じゃあそれで、と笑みを浮かべて答えながらそのまま.....手を振ってから家に帰ろうとした時。

ま、待って!、と声がした。


「.....アドレス.....教えて」


「.....アドレス?.....え!!!!?」


「交換しよ?」


「.....マジ?」


「うん。マジ」


「.....」


笑みを浮かべる芹田。

まさかアドレスまで交換する事になるとは。

思いながら俺はスマホを取り出す。

それからアドレスを交換した。

そして帰宅する.....ってかこれって夢じゃ無いよね?

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