第3話



「ケイトがいない……!?」


夜の村に松明をもった村人たちが集合していた。


「村中探し回ったけどいないわ!」

「川の側にもいなかったぞ!」

「井戸の中も見たけどいないっス……!」


騒々しい中で、ケイトの母親が絶望した表情で切り出した。


「――やっぱり、森に入ったんだわ。ゴブリンの巣を探しに……」

「あの子ならやりかねん。だが、夜の森に入るのは我々でも危険だ……」


村の者たちは表情を曇らせる。


トーマスの胸に苦い後悔が過ぎった。

――あのとき、もっときつく言い聞かせておけば――。


ケイトの顔を思い出す。いつも剣の練習に励んでいて、自分を見つけたら子犬のように駆けてくる憎めない女の子だ。

むざむざ殺させてたまるものか。


「俺が行く」


トーマスが告げた瞬間、村人たちは大きくざわついた。


「ならんッ! 森には狼や熊型のモンスターもひしめいておるのだ!」


引き留めてくるのは村長だ。

トーマスはかぶりを振る。


「でも……ケイトが何か仕出かしそうなのは分かってた。俺の責任だ」

「ケイトはあなたに懐いてました。でも、あなたが責任に感じることは――」


ケイトの母が止めようとする。


「それに、おまえがいなくなったら村の指揮が……」


トーマスと同年代の青年が動揺をこらえきれないように漏らす。

しかし、このままケイトを見殺しにするなんてトーマスにはできなかった。


「――無茶はしない。約束する」

「だめだ、行かせられない」


森に向かおうとするトーマスの前に、村のみんなが立ちはだかる。



そのときだ。森の方向から声が響いて来た。


「助けてぇえええ!!!」


ケイトの声だ。


森に目を向ければ、真っ暗な木陰から飛び出して来る少女の姿があった。そして、それに続く小さな軍勢が見えてくる——ゴブリンの群れだ。


トーマスはまず安堵した。

ケイトは毎日剣の訓練をしていて足が速い。森を抜けたならこのまま逃げ切れるだろう。

しかし、村の守りを考えれば安心してもいられなかった。


「まずい、村の方向に来るぞ!」

「そんな! うちには足が悪い母さんがいるんだ!」

「村に入らねえように食い止めないと!!」


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