第1話 四章

白井が飛び立った後、学校に残った四宮は入学式を執り行う講堂へと入り込む。

アラート音が鳴った後に厳戒態勢状態の教員が入り込み、講堂内はざわめき始める。

そんな様子に特別慌てた様子もなく四宮はその場にいる人達全員に聞こえるほどの大きな声でその場を収める。

「只今、魔物が市街地に侵入しましたここに居る魔法士の方々はすぐさま武装の展開を!」

その四宮の声に反応した講堂内にいた数名の教職員と思われる出で立ちの人物たちが一斉に魔法衣を装着した。

その色や展開術式は様々で色とりどりの魔法文字が中を舞う。

そんな様子に講堂内にいた入学式に参列する家族たちは、物珍しそうにそれを見ていた。

ある程度の魔法士の変身を見届けた四宮は講堂内にいる新入生とその家族であろう人達に声をかけた。

「今よりこの場は市街地にあるどの避難所よりも安全な場所になりました、ここにいる皆様方に関しましては我々がお守りすることをお約束します」

そう言い切り四宮はその場にいる魔法士達の顔を順番に見て回った。

その中に自身と同じ紫色の魔法衣を着た人物がいたようで、四宮はその人に声をかけようと近寄る。

「私は本日よりこちらの職場に参加させていただくことになった四宮と言います、本来は事前にご挨拶が必要でしたのですが隊長、もといい校長に2日ほど前に突然移動命令を受けたので、申し訳ありませんがここに簡略的なご挨拶を」

そんな四宮の初邂逅でありとんでも人事を聞かされた眼の前の人物は、いたたまれない顔をしながら四宮を見ていた。

「それはとんだ人事異動ですね親中お察し致します、私は相澤早苗と言います、よろしくお願いします」

その人物は髪色は四宮と同じ紫色で可愛らしくも大人の女性が好んでつけるような上品さもある髪留めで長い髪を後頭部の高い位置に纏め上げていた。

見た目だけでの判断ではあるが歳はおおよそ二十代半ば程であろう若さであった。

四宮に関してはこの場にいるどの教職員よりも若いのだが、それを除けばおそらく一番若いであろう人物である。

そんな相澤は四宮に軽くお辞儀をした。

「それでどうしますか?」

その後すぐに相澤はこの場を仕切るであろうと判断したのか、四宮にこの状況に対してどのように対処すべきなのかを質問する。

「私はこの施設について知りうる情報が一切無いですので、相澤さんにこの場の指揮をお願いしたいのですが可能でしょうか?」

てっきり四宮が指揮をすると思っていたせいなのか、その言葉に相澤は驚いた顔をして四宮を見つめた。

そんな相澤の様子に四宮も少し驚いた様子を見せた。

「いえ、この場の階級でしたら、四宮さんの方が上ですので少し驚いただけです」

そんな相澤の答えに四宮は納得しつつも彼女の両肩に手を置いた。

「この場に関しては階級はなしで、私はただの新人教諭ですから」

そう言い四宮は人懐っこい笑みを相澤に向けるのであった。

そんな年相応の可愛らしい笑みに、仕事というストレスや心の穢を一気に洗い流すような四宮の笑顔に相澤の心は射抜かれてしまったようで、その場に崩れ落ちそうになる動作をするが相澤は必死にそれを耐え抜くように膝に力を入れて踏ん張っていた。

そしてその場で右拳を強く握り軽くガッツポーズを決める。

「お任せください四宮さん!」

そんな反応に満足するように四宮は相澤に微笑み返した。

恐らく四宮は自身の人受けする容姿を知った上でしているのだろう。

幼くもそこにあるしっかりとした芯のある顔つきで、ただ絶対的な可憐さを持つ四宮の容姿は見るものすべてを魅了するであろう破壊力だ。

何せ成人する年齢に近いにも関わらず、身長は150cm無いぐらいで儚さと弱さを見せる。

髪型もその容姿に合うようにわざと幼くしてあるのもまた計画的に見える。

なるべく飾り気のないようにしてはいるが、あざとさ満載のツインテールである。

だがそれは四宮の容姿にベストマッチ!している髪型なので一切の問題は無いだろう。

そんな可憐でパーフェクトな四宮に微笑みを向けられたら誰でも相澤と同じ反応をしてしまう。

それが同性の女性であったとしてもだ。

何せその儚さと弱さは保護欲を湧きあがらせるからだ。

そんな相澤の反応に満足したのか四宮は軽く相澤にお辞儀をする。

「では私は校庭などの場に出現する可能性のある魔物の撃退に向かいますので、この場はよろしくお願いします」

その言葉と同時に四宮は軽やかな足取りで講堂を後にした。

その後その場に残された相澤は四宮の後ろ姿を見送り、軽い敬礼をした。

「ご武運を私の天使様」

なんとも危ない発言で四宮を見送るのであった。

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