解決編
「岡崎ちゃん、ブッコローは自殺なんかじゃない。殺されたんだ。犯人が分かった気がする。出来れば自首してほしいし、みんなを集めて下で話をしよう!」
そうは言ったもののさすがに少しは不安があった。私の考えが正しいのかどうか、そもそもブッコローは自殺だったと片付ける方がよかったのか……。だが、この国の警察の力をなめてちゃいけない。私でさえ真実らしきものに到達したのだから分かるであろう。
私、岡崎さん、郁さん、黒子の人、佐藤、間仁田、長谷部、そして滝口くんの8名がリビングに集合した。
「落ち着いて聞いてください。私と岡崎さんが岡崎さんの部屋に入ったらブッコローが首をつって死んでいた。そしてこんな遺書があった」
私は、岡崎さんの部屋で見つけたブッコローの遺書らしきものを皆に見せた。
「……」
皆は状況をつかみ切れていないようだ。一瞬冗談かと思った感じだったが、私とブッコローの様子を見て事実だと分かってくれたようだった。みんなの身体からお酒が一気に引いていったのを感じた。
「まず、最初に言っておく。この遺書は偽物だ。おそらくブッコローを殺してしまったモノが2階のパソコン室で慌てて作ったものだろう」
「どういうこと……。私たちの中の誰かがブッコローを殺したって……」
郁さんが聞いてきた。
「最初は私も自殺かと思ったよ。だけど、遺書は普通手書きじゃないか? 疑問を持ち始めたきっかけはそこなんだ。それで見落としていたいくつかの不審な点に気が付いたんだ。それでブッコローをよく見ると、頭の方に何かで殴られた跡があったんだ」
「……」
「状況を整理するよ。まず、10時くらいに瀧口くんが部屋に帰って、少し後に郁さんが、12時くらいにブッコローと佐藤が部屋に帰った。このときになぜかブッコローは2階の電気を消した。これ以降誰も2階の電気をつけていない。これはリビングから変化が確認されている。その30分くらい後に長谷部さんと間仁田は部屋に帰った。それからちょっとして黒子の人も部屋に帰った。その後結構してから、私と岡崎さんが一緒に2階へ上がった。岡崎さんの部屋の鍵がかかっていたから私が鍵を開けた。開け方は飲み会のときに佐藤が言ってた方法。それで、岡崎さんの部屋の明かりをつけたらブッコローが首をつっていた。何か疑問や間違いはあるかな?」
「僕が部屋に帰るところまではあっている。続きを頼む」
間仁田が言った。
「おかしな点は2つあったんだ。どうしてブッコローは岡崎さんの部屋で首をつっているのか。どうして岡崎さんの部屋の明かりが消えていたのか」
「ちょっと待って。ブッコローが岡崎さんの部屋で首をつっているのに疑問を持つのは分かる。でも、部屋の明かりが消えているのはどこがおかしいの? 部屋の鍵をかけて自殺したかもしれないじゃないの」
郁さんが聞いてきた。
「郁さんはこの別荘の持ち主だから分かると思うんだけど、夜に部屋の明かりを消したらどうなる?」
「それは真っ暗で普通の人は何も見えなくなるでしょ! ……そういうことね」
「どういうことですか?」
郁さんは分かったようだが佐藤は分かっていないようだ。
「人であるブッコローが真っ暗で何も見えない中どうやって首をつるのかってことだよ。夜目が効くミミズクならともかく。首をつるためには明かりがついていないといけない。しかし、首をつってしまったら電気は消せない。要するに犯鳥または犯人は自殺の偽装をした際にいつもの癖で部屋の電気を消してしまったってことだよ。これが、私がブッコローの死が自殺でないと確信した点だよ」
「なるほど」
「次に、ブッコロー殺害が不可能だった者を列挙しよう。まず、私と岡崎さんはアリバイがあるから除外される。次に長谷部さんは窓がない1階の部屋にいた。それで、私たちに気づかれることなく2階に上がるのは不可能だ。窓を利用して行くことができるのは郁さん、瀧口くんだ。窓の鍵が空いていればまたは開けてもらえればこれは容易なことだ。廊下の移動で犯行が可能なのは、さっきと重複で瀧口くん、それから佐藤と間仁田と黒子の人。また、遺書には『自分の部屋でかたをつけました』と書いてあるが、瀧口くんは遅れてきたから、ブッコローの部屋を知らない。だから瀧口くんは犯鳥ではない」
「じゃあ、私か佐藤か間仁田か黒子の人かってこと?」
「残念だけど、そうなるね。私は今すぐにでも自首してもらいたいよ」
「……」
「あれ、でも瀧口くんが部屋を知らないってことなら、部屋決めの際に郁さんと黒子の人もいなかったから、、、もしかして僕か佐藤が犯鳥?」
間仁田が恐る恐る聞く。
「それは違うよ。ちょうど瀧口くんが来る前にブッコローは自分の部屋が205号室だから夜這いしていいよと声高に言っていたよね」
今となっては悲しい話だが。
「そうだったね。フフ。私が夜這いしてたらブッコローも助かっていたのかも」
郁さんが自嘲気味につぶやく。
「殺害場所は犯人・犯鳥の部屋か廊下だろう。この家はドアさえ閉じれば音が完全にシャットダウンされるから誰も気づかなかったんだろうね。きっと殺害犯は犯行後に慌てていたんだろう。なんとかして、自殺に見せられないか。そして幸いにもブッコローの部屋は知っている。そして、ひとまずブッコローの死体は自分の部屋にでもおいて、部屋の鍵をかけ、あの遺書をパソコン室で書いたのだろう。そして、死体をブッコローの部屋へと運んだ。ここまでで疑問はないよね」
「ないな。強いて言うならばなぜザキさんの部屋へ運んだのかってとこかな」
「順を追って説明するよ。この家の部屋番号を書いたプレートは非常に見にくい。これは2階の場合は特に酷いんだ。さらに犯行時は2階の電気が消えていたわけだから、犯人・犯鳥は部屋番号を見えなかったのだろう。しかし、ブッコローの部屋は205号室と知っていたからそこへと運んだ。運んだ先が岡崎さんの部屋と誤解したままね。このことに気が付いたのは、部屋に荷物を置いた後の2階の廊下での会話を思い出したからだ。私と岡崎さんとブッコローさん、そして佐藤も割り込んできただろう。」
「どんな会話だったっけ?」
「岡崎さんとブッコローが謎がある、おかしいと喚いていただろう」
「あれか」
その時の会話を振り返ってみよう。
——「日本の風習です。ブッコローも岡崎さんも知らなかったのですね。まずですね、日本では縁起を担ぐってのは非常に重要なことなんです。だから204号室は存在しないんだ。4は死を連想され縁起が悪いですからね。2階の部屋は201、202、203、205、206、207になるんです。そういえば4といえばプロレスでこんな話があるよ……」
「犯人・犯鳥は204号室が存在すると勘違いをしていた。すなわち、犯人・犯鳥がブッコローの部屋である205号室だと思っていたのは、実際は岡崎さんの部屋である206号室だったんだ。佐藤は204号室がないことを知っていた。だから佐藤は犯鳥ではない。郁さんも管理人だからそこは間違えようがない」
「動機面だとブッコローのパートナーである黒子の人よりも、犯行をしたのは酒を強制的に飲まされていた間仁田……!?」
佐藤が言う。
「落ち着いて。飲み会の時を覚えている? ブッコローが間仁田に自分を抱えて飛べと命令してたこと。瀧口くんはブッコローを抱えて移動できたけど……間仁田はダメだった。だから移動もつるすのも不可能。だから間仁田は犯鳥ではない。つまり、犯人は黒子の人だよ。もう一つ言うならば、黒子の人以外はY隣堂のみんなはミミズクだから夜も目が効くんで電気が消えていても部屋番号は分かる気がするけどね。ただ、これは見逃す可能性があるから理由づけとしては弱い」
* * *
この後は、黒子の人はうなだれて『その通りです。私がやりました』と文章を書き自首をしたんだ。理由は痴情のもつれというか音楽性の違いみたいのもの。人には人なりの問題があるんだろう。これで、ワタクシが解決した事件は終わりだよ。
Y隣堂、それはミミズクが主役の不思議な書店である。今回の事件で唯一の人だった二人がいなくなってしまいミミズクだけの書店になっちゃった。
えっ推理する条件が私と読者諸兄姉では同じじゃない? まあ許してよ。こっちの方が推理する要素があって楽しいと思うんだ。
Y隣堂殺人事件 ブッコロー最後の事件 128 @n_r_s
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