第48話 5-C】火星会戦:幕間劇
ブルマン中尉は暗闇の中を歩いていた。パイロットスーツに身を固めた背が高くて細身の、だが緊張を込めた強靭な鋼線を思わせる姿だ。
いつの間にか横に髭面の大男とメガネをかけた細身の男が歩いていた。その後ろには大柄な女性。
「君たちは?」
「あなたと同じですよ」大男が答えた。
「のんびり挨拶をしたいところだが人を待たせていてね」とブルマン。
「俺たちも一緒に行っていいかな?」
「いいぜ、ついてきな。パーティは賑やかな方がいい」
皺の入った顔に優しい笑みを浮かべてブルマンが答える。
「ありがたい。もう喉がカラカラなんだ。凄く熱いところにいたんでね」
大男が気さくに答える。その証拠に焼けて丸まった顎髭の先端を撫でて見せる。
「すぐさ。ああ、あそこだ」
暗闇の先に光が見えた。光は大きくなり、そこから賑やかな話声が聞こえてきた。
そこではウーイック司令を始めとして懐かしい面々が巨大な大理石のテーブルについている。テーブルの上に並ぶは色とりどりのご馳走、そして酒、酒、酒。まるで世界中の酒がそこに並んだかのようだ。
「遅いぞ。あの世で飲もうって言い出しっぺが一番遅れてどうする」
土星会戦で散ったバーンズ少尉が文句を言う。
「随分待たされたぞ」ウーイック指令がそれに輪をかける。
「そうだ。そうだ。ブルマン少佐」ようやく酒が飲めると思ったゲンがニコニコ顔で言う。
「俺は中尉だぞ」ブルマンが抗議する。
「何を言う。作戦中に死んだら二階級特進だろ。だからお前はブルマン少佐だ」
ブルマンたち一行は空いている席を見つけて腰を下ろす。
「さあ、飲もう」
「さあ、飲もう」
「酒ならいくらでもある」
「ここは特等席だ。ここからなら地球が良く見えるぞ」
「乾杯だ。いずれ訪れる人類の勝利に!」
「人類の勝利に!」
天国の隙間から見えるは青い球体。懐かしの故郷。我らの地球。
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