第28話 4ーC】逃走:蜘蛛の糸(1)

 〔 地球:2080/05/05 〕



「皆さん、揃いましたね」

 井坂技官長は会議室を見渡しながら言った。背後の壁際にはデュラスたちが椅子に並んで座っている。どの顔にも緊張が隠せない。

 会議室には都合十人が席についている。どれも宇宙科学技術局の各部門の長だ。中央にあるのは技術局のシンボルでもある円卓だ。

 ここ数回の邪神軍との会戦の結果、井坂技官は彼ら部門長と同じ階級にまで出世している。もっとも井坂技官長の配下はデュラスたち数人しかいないが、今はその地位が必要なのだ。

 宇宙科学技術局は合議制を取っているのでこれが局の全中枢ということになる。新たに加わった井坂を含めて十の部門が存在することになる。

 井坂技官長の所属する第十技術局は中でも一番新しく、かつアグレッシブな任務が割り当てられている。すなわち邪神軍との戦闘支援である。そのため実質上の権限は他の技術局部門の上とされている。

 実際の所、他の部門も激務中の激務であり、これ以上の負担をかければ全員が過労死するところまで来ているので、井坂技官長の部門を羨ましいと思う者は誰もいなかった。


「いったい何ですか? 会議ならホロ会議で十分なのでは」

 顔に色濃く披露を滲ませたアルフレッド技官長の質問に井坂技官長が答える。

「これから話すことは極秘の情報です。絶対に秘密は守られる必要があるのです。ですので盗聴の可能性がある通信回線は使えません」

「まさか脱出船の建設が頓挫したとか?」アルフレッド技官長が混ぜ返した。


 もし本当にそうなら逃げよう。アルフレッドは心の中でそう考えていた。そんな事態を収拾するためには多くの作業が必要になるし、そうなれば今後一週間は睡眠にありつけなくなる。まず何よりも部下が全員発狂するだろう。

 アルフレッド技官長の部門の担当は宇宙ロジスティックだ。ベルターを始めあらゆる場所で大量の物質の移動が湧きかえっている現在、いくら強力なAIサポートがあっても仕事は限界にきている。

 だが自分が手を抜けば、太陽系のあらゆる場所で物資が尽き、大勢が死ぬのだ。その責任感がある以上、彼が仕事を休むことはない。


「すぐに分かります」井坂技官長が説明する。

「現在この会議室は最高セキュリティレベルにあります。一切の電波や音声は遮断されています。

 さて、これから話すことを聞く前に貴方たちには一つの決断をしてもらうことになります。この話を聞いた後では一切後戻りはできなくなります」

 ここで井坂技官長は箱を取り出した。箱の中に並んでいるのは金色に輝くブレスレッドだ。ここにいる人数分だけある。

 井坂技官長は全員の好奇の視線を受け止めて見せた。

「ある情報が手に入りました。邪神軍を倒すことができる唯一の希望です」

 その言葉に会議室がざわめいた。

「ですがそれは諸刃の剣でもあります。この情報を邪神軍が知れば、その時点で人類は消滅します」

「それはいったいどういうことだ?」とアルフレッド技官長。疲れた顔に生気が戻りつつある。

「完全にセキュリティが保証されるまでは言えないんです」

「我々に誓いを立てろとでも言うのかね? それならいくらでも立てるぞ」

「それでは足りません。

 人間には承認要求というものがあります。知識欲もです。またこれらの知識はうまく使うと資産も産みだします。だからこそ秘密はありとあらゆる形で漏れます。本人にその気がなくても事故で漏れることもあります。

 そしてそういった可能性の一つ一つが人類の破滅に繋がるのです」

 井坂技官長はそう言うと、ブレスレッドを指さした。

「秘密を守ることの保証はこれです。

 これからこのブレスレッドをつけてもらいます。このブレスレッドには監視AIとIECM爆弾が内蔵されています。

 AIは装着者のあらゆるプライバシーを監視します。あらゆる動作、音声を監視します。バスタブの中でもトイレの中でもセックスの最中でも、ひたすらに監視を続けます。ただしその内容を他に漏らすことはしません。装着者が漏らしてはいけない秘密を漏らしたと判断した場合、AIはブレスレッドの装着者ごと周囲も巻き込んですべてを破壊します。それはブレスレッドを外そうとした場合も同じです」

 これを聞いてその場にいた技官長の全員は一斉に身を引いた。これらのブレスレッドは極めて強力な爆弾なのだ。それが十個目の前に並んでいる。

「狂ってる」誰かが呟いた。

 その言葉にも井坂技官長は眉一つ動かさずに断言した。

「私は人類の未来を守るためならば何でもします」

 アルフレッド技官長は冷静だった。

「しかし井坂。そのブレスレッドが爆弾だとしたら、それを嵌めた瞬間から私たちは君の言葉に逆らえなくなる。これはもしや何かの陰謀ではないかとの疑いがどうしても拭えない」

「これは強制ではありません。またもしそのようなことを私が企んでいたならば、貴方たちがこの部屋に入った瞬間に銃で脅してブレスレッドを装着させていたでしょう。そのことを考えてみてください」

 井坂技官長はしばし待った。

「アルフレッドさん、このブレスレッドの中の一つを指さしてください」

 わけも分からずアルフレッド技官長がその一つを指さす。

 井坂技官長はそのブレスレッドを取り出すと自分の二の腕に嵌めた。微かな作動音と共にブレスレッドが腕にしっかりと巻き付く。

「私がその先鋒です。そして私の部下たちも同じブレスレッドを嵌めています」

 その言葉に後ろに控えていたデュラス技官たちも袖を捲って同じブレスレッドが嵌っているのを見せる。

 井坂一人ならば単なる発狂の可能性もあるが四人全員となれば話は異なる。特に冷静な策士であるレイチェルまでもが加わっていることは重要だ。

「ここまでやる必要があるのか?」今まで黙っていたブラス技官長が訊ねた。

「あります。たとえばこの情報を無線に載せて宇宙に向けて発信すれば、明日には地球は存在しなくなります」

「そんなことはありえない」

 ブラス技官長は抗議したが井坂技官長はそれを無視した。

「私の話を聞けば決してこれが誇張ではないとお分かりいただけるでしょう。このブレスレッドを着けた人間にだけ情報を開示します。ここで一端会議を三十分中断します。着ける人間だけがここに戻って来てください」

 ドアが開き、興奮冷めやらない皆が会議室を出て行く。


 井坂たち四人だけが会議室に残った。

「何人戻って来るかな?」デュラスが言った。

「一人も戻って来なかったらどうする気?」とレイチェル。何だか目を輝かせている。

「その場合は我々だけでやるしかない。作戦は各段に難しくなるがやり遂げるしかない」井坂が結論づけた

 皆がそれ以上のお喋りは止め、ただ待った。

 人類の未来がこの会議にかかっている。


 長い三十分だった。



「八人」デュラス技官が数え終わった。

「抜けたのは一人だけか。優秀だ」井坂技官長が珍しくもほほ笑んだ。

「ああ、いや、私は違うんだ。忘れものをしたみたいでね」

 ファイン技官長が先刻まで自分が座っていた机の辺りをまさぐった。

「ないな。どこか別の所に置き忘れたらしい。では私は消えるよ」

 そう言うとファイン技官長は会議室から出て行った。

 彼が出て行くと、会議室は再び閉鎖された。

 アルフレッド技官長が言った。

「では井坂、ブレスレッドを」

「その前に」

 井坂技官長は立ち上がると、ファイン技官長が探っていた円卓の部分まで歩いて行き、テーブルの下をまさぐった。

 その手がテーブルに貼り付けてあった小さな円盤を取り出す。

「記録装置だ。ファインは掛け金を払わずに情報を総取りするつもりだったようだな」

 残りの技官長たちの間に動揺が広がる。

「アンドリュー大将のスパイだという噂は本当かもしれないわね」

 レイチェル技官が指摘する。

 井坂技官長はブレスレッドの入った箱を技官長たちに差し出した。

「ここまでのセキュリティが必要な理由がお分かりいただけたと思います」

 技官長たちは恐々とブレスレッドを嵌める。それも無理はない。これはIECM、核爆弾に次ぐ威力を持つ電子内軌道結合爆薬なのだ。それが十数個ここに集っている。もし連鎖して爆発すればこの部屋どころか建物ごと消滅しかねない。

 全員がブレスレッドを装着してから円卓の周りに着席する。

 どの顔にも好奇心がありありと浮かんでいる。これからどんな秘密が開示されるかと、待ちきれないばかりだ。


「では秘密を開示します」

 井坂技官長は宣言すると手首のコムを叩いた。

 会議室の奥のドアが開くとスーツ姿の一人の男が入ってきた。どこといって特徴の無い男だ。

「紹介します。私たちの救世主です」井坂技官長が説明した。

 その男は口を開いた。そこから流れるのはまったく訛りのない国際標準英語だ。

「ようこそ。皆さん。カルネージ人を代表して挨拶を差し上げます。その通り。私は異星人です。正確に言えば異星人の作ったアンドロイドです」

 技官長の何人かが驚きに席から立ち上がった。

「証明します」アンドロイドは一言だけ言う。

 アンドロイドの全身にヒビが入る。それはあっと言う間に細かい黒のパーツになって崩れた。

「御覧のように彼は小型パーツの集合体で、どのような形にも変形できます」

 井坂技官長が説明する。

「カール。もういいぞ。復元してくれ」

 再び黒のパーツが集まりすぐに元の形が再現された。最後に表面の色彩が変化し、人間の男へと変化する。どこかの古典映画に出てくる液体金属ロボットを思わせる動きだ。

「みんな驚くな。ただの通りすがりの異星人だ」デュラス技官が皮肉交じりに補足する。

 ブラス技官長が目を大きく見開いた。

「まさか、まさか。まさか! 邪神軍とのコンタクトに成功したのか!?」

「違います」間髪を入れずに井坂技官長が答える。ここでパニックになって貰っては困る。

「彼は邪神軍と敵対する種族の代表です。有体に言えば、我ら人類より一つ前に邪神軍の攻撃を受けた種族です」

「待て! 待て! 待て待て待て! 待ってくれ」アルフレッド技官長が叫んだ。

「彼が言う通りの異星人だと言う証明は?

 もしかしたらどこかの誰かが変形自在なロボットを作り出しただけなのかもしれない」

 これに井坂技官長が答える。

「技術局の共有データベース群の中にNOROSIという名前のデータフォルダが最近追加されたことに気づいた方もおられるかも知れません。ブレスレッドの中には暗号化鍵が仕込まれていてそれでフォルダにアクセスすることができます」

「それが何かの証拠に?」

「現在人類が解けていない数学上の難問129というのをご存じですね?

 いまだ誰も解けていないあらゆる多岐に渡る数学予想129個の難問集です。人類はまだその答えを知りません。そのすべてをカールに解いて貰いました。カルネージ人の技術知識は人類のそれの千年先を行っています。解法の内容を証明するには当代随一の数学者の手が必要ですが、それでもその思考の大筋を追うことはできるでしょう」

 井坂技官長はそこで指を立てた。

「ただしデータはブレスレッドをつけていない人物が他に居ない場合にのみ閲覧できます。内容をコピーすることはできませんし、ましてやこの知識を使ってこれら難問の解法に賭けられている賞金を得ようとする行為は禁忌に触れることになります。我々はカルネージ人との接触を極秘にしなくてはいけないからです」

「いったいどうして?」とブラス技官長。

「それをこれから説明します。まずはカルネージ人の歴史について学んでください。カール。頼む」

 カールと呼ばれた男が手を振ると、会議室のスクリーンに映像が現れた。

「それでは今までに何があったのかをご説明しましょう」



 カルネージ人は五つの星系に植民を果たしていた種族だ。


 彼らと邪神軍の最初の出会いはやはり人類と同じく辺境の夜空に輝く爆発的な光であった。邪神母船アザトースの減速発光である。

 そして星系の守備軍の前に出現したのは邪神母船に率いられた無数の子船だった。それからは人類が受けた邪神軍の侵略行為と同じものが最初から繰り返された。


「邪神子船の総数は三千九百二十隻に上りました」

 カールの言葉に、すでに内容を知っていた井坂他数人を除く全員が絶句した。

「我々は邪神軍の標準構成は母船一つにつき約四千隻の子船だと推測しました。母船は超光速飛行に加え、生産修復のすべてを引き受ける工場の役割を持っています。子船は星系内の戦闘に特化されていて、確認されている限りでは二十八種類のタイプに分かれます」


 カルネージの星系の一つで邪神軍は今やっているのと同じようにゆっくりとした侵攻を行った。カルネージ人は急遽動かせる全軍をその星系に超光速飛行させ、これと対峙した。

 邪神軍到着より三年と四か月後、大規模な会戦が始まった。そして会戦開始より三日後にカルネージ艦隊は壊滅した。


「それでも相手の子船五十隻を破壊しました。全体から見れば微々たる量ではありますが」そうカールは続けた。


 その星系ではそれ以上の戦闘は行われなかった。星系のすべてのカルネージ人は隣の星系に退避を開始したからだ。不思議なことに邪神軍は追撃を行わずに、星系内の居住地を丹念に破壊するだけに終わった。

 それは星系内に居残ったものをただの一人も見逃さない徹底的な殺戮だった。ここでもやはり残虐放送がカルネージ人の通信フォーマットに合わせて行われた。

 それが完了すると邪神軍はカルネージ人が入植している隣の星系に向かった。邪神母船アザトースに子船をすべて収容すると星間ドライブを起動して超光速飛行に入ったのだ。

 十年の超光速飛行の後にアザトースは次の星系の辺縁に着くと、再び子船を展開し、星系中核に向けて進み始めた。

 カルネージ軍は全力で抵抗を開始し始めた。すべての産業は軍事に振り向けられ、あらゆる勢力がこの侵攻された星系に集中した。星系の各部には無数の要塞が浮かび、多くのロボット機雷が撒かれた。

 数百隻単位で戦艦群が製造され、星系はたちまちにして死の罠へと変貌した。

 その間も邪神軍は外惑星から始めて、一つまた一つと惑星開発拠点を破壊していった。

 そして十数年後に、次の大会戦が勃発した。

 このとき星系全体が内部で放出される大量のエネルギーで光り輝いた。荷電粒子ビームを始めとしてあらゆる兵器級の電磁波が飛び交い、ミサイルが虚空を埋め尽くす。巨大戦艦が数隻単位でまるごと蒸発し、無数の戦闘機が原子の塵へと変わった。カルネージ人の重力子レーザーは邪神軍相手にも無類の強さを誇ったが、それでもその他の軍事技術と最初からの戦力差により形勢はカルネージ軍の方が圧倒的に不利だった。

 そして最終的に邪神子船百二十隻を倒した所でカルネージ軍は最後の一隻に至るまで壊滅した。


 ここでカルネージ人はある決断をした。通常の兵器では邪神軍を倒せないと正しく判断し、この星系を犠牲にして残る三つの星系を救うことにしたのだ。

 カルネージ人の科学技術の内で重力工学だけは恐ろしく発達している。カルネージ人の歴史の中で起きたいくつもの偶然がその技術だけを究極のレベルにまで引き上げたのだ。

 そしてその科学が最終的に産みだしたものが超新星化デバイスである。

 これはあらゆる種類の恒星を極めて短時間で超新星に変換してしまう究極の自爆型兵器である。カルネージ人たちもまさかこれを本当に使用することになるとは想像もしていなかった。あくまでも実験用として試験的に設計したもののはずであった。

 だがそれは設計通りに正しく働き、主星の青色巨星はただちに超新星と化した。


 いきなり起こった超新星爆発は数億度という熱と激烈な衝撃波前線を構築して、星系の全領域を飲み込んだ。亜光速の超高熱のブラズマと放射線があらゆるものを蒸発させながら広がる。惑星すら綺麗に焼かれ、かろうじて中心部のコアだけが細々と残る。

 邪神軍も逃げる暇なくそれに飲み込まれた。

 いかに頑丈な邪神戦闘艦たちもさすがにこれには耐えきれずに原子の塵になるまで熱分解された。


 だが、邪神母船アザトースだけはこれに耐えた。超新星爆発衝撃波前線の荒れ狂う嵐の中で揉みくちゃにされたものの、その強靭なバリアで破壊を免れた。そして星系辺縁まで逃げた後に、星間ドライブを起動してこの罠となった星系から逃げだした。その体内に修理のために収容していた二隻の邪神子船だけを抱えたまま、この戦場を逃れて他の星系へと向かったのだ。

 すでに発見していたもう一つの知的生命が棲む太陽系を目指して。

 それを食いつくし、再び力を取り戻すために。



「それが現在のアザトースなのか。イタカとヨグはその収容されていた二隻か」

 ベイリー技官長が誰聞かせることなく言った。スクリーンに映る記録を目を皿のようにして見つめている。

「その通り。我々が対峙しているのは敗残した邪神軍なのです」井坂技官長が答える。

「その敗残兵のわずか二隻に俺たちはボロ負けしたのか」アルフレッド技官が自分の頭を叩きながら疲れたように言う。

「正確にはその一隻にです」デュラス技官がわざわざと言わなくてもよいことを言う。

 カールは誰に向けてでもなく頷いた。

「これがここまでの経緯の説明です。邪神軍はまた力を蓄えて襲ってくる。そう考えた私の主人たちは追撃すべきだと考えましたが、すでにその力はありませんでした。戦乱の傷はそれほどひどかったのです。

 そこで新たに創られたのが私です。

 逃げた邪神軍は力を取り戻すために他の種族を襲う必要があります。私の任務はそういった種族を見つけ、邪神軍の情報を与え、さらには邪神軍との戦いを支援することです。つまりあなた方です。できればあなた方が邪神軍を倒してくれることを望んでいます」

「期待に応えられなくてすまない」とアルフレッド技官長。自嘲がかなり混ざっている。

 人間の皮肉というものを理解していない人工知性のカールは素気なく答えた。

「気にしないでください」


 実のところ、カールの任務は後二つある。

 一つは見つけた種族が邪神軍に抗しえない場合は、運んできた超新星デバイスを作動させることだ。その種族が邪神軍のエサになるより先に滅ぼしてしまうのだ。この判断は近々つけないといけないだろう。

 もう一つの任務はまだこの段階では時期尚早だった。


「その超新星化した星はどこにあるんだ?」ベイリー技官長が訊ねた。

「あなた方の言うオリオン座にあります。星の名前はベラトリックス。ここより二百五十光年先に当たります」

「そんなところに超新星があったか?」

「超新星化したのは五十年前です。アザトースは二百五十光年の距離を五十年をかけて超光速飛行で飛んで来たのです。星の光がここまで追いつくのには後二百年かかります」

「そうか。そうだな」ベイリー技官長が呟いた。「超光速飛行か。そうか」

 自分の頬を両手で叩く。驚くべき技術ばかりだ。いつの日にか超光速飛行を開発して銀河に飛び出すときが来るとは思っていたが、実際にそれが当たり前のように語られるのはそれなりに衝撃だ。

 ベイリー技官長は気を取り直した。

「で、その支援というのはどんなものが貰えるんだ? 君たちの持つ技術? それとも兵器?」

「それは渡せません」にべもなくカールは答えた。「理由はあなた方が敗戦したときに邪神軍にその技術が渡ってしまう可能性があるからです。そうなれば私の主人たちに勝ち目が無くなります」

「じゃあいったいどんな支援が貰えるというんだ?」

「基本的には現在あなた方が保有している技術を限界まで拡張することです。それと・・我々が解析した邪神軍の技術もお渡しできます」

「邪神軍の技術?」

「そうです」カールはスクリーンを操作して次の画像を出した。

「私たちはそれを深淵物質と呼んでいます」

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