第37話 ダブルデート
「すごぉ〜」
「かわいいぃ〜」
「きれいだなぁ〜」
起きて朝食をとった俺たちは少しして、昨日雷也が言っていた通り水族館に来ている。
どうやらこの水族館は世界的にも有名らしく、外国人観光客とよくすれ違う。
そんな水族館で俺たちは。
昨日までの仲良しグルーブの空気は消え。イチャイチャカップルの空気になっている。
と言っても、その理由はいつの間にか仲直りした前にいるカップルのせいだが。
雷也曰くこの水族館に来た理由は、ダブルデートらしいことをしたいかららしい。
「あっ。朝比奈くん朝比奈くん。この魚、朝比奈くんみたいな顔してる!」
「…………いじめ?」
「ち、違っ。かっこいいところが似てるんだって。ねぇ二人とも! この魚、朝比奈くんみたいにかっこいいよね?」
魚みたいにブサイクな顔だって遠回しに言われたのかと思ったけど。
かっこいいところが似てるって、よくそんなこと言えるな……。恥ずい。
「似てないって言われた」
俺は羞恥におかしくなりそうだったが、夢さんは二人に厳しく指摘されたらしく、拗ねた子供みたいになってしまった。
当の二人はというと、俺と夢さんがいい空気になると思ったのか、謝ったあと再集合の場所と時間を指定して人混みの中に消えて行ってしまった。
この状況、どうすりゃいいんだよ。
「とりあえず俺たちも水族館周らない?」
▲▼▲▼
この水族館一番の目玉と言っていい、360度水槽。
上下右左。どこを見ても水槽で、海の生き物たちが元気に泳いでいる。
まるで海の中にいるかのようなこの空間は、神秘的でもある。そのおかげもあって。
「すんごぉ〜い……」
拗ねていた夢さんは元に戻った。
拗ねていてもいいけど、俺はこっちのほうが好きだな。
「朝比奈くん。ここ、サメはいないのかな?」
「いたら水槽ごと破壊されてるんじゃない?」
「水槽破壊される前に君のハートをブレイク!」
「「…………」」
いきなり変なことを大声で言われたせいで、周りの外国人観光客から奇妙な目で見られてるんだけど。
「どうしたんですか」
「どうもしてないっ!」
よくわからないがぷいっと顔をそらして、不機嫌になってしまった。
本当にどうしたんだ?
ダブルデートって言われてるから空気をよくしようとしてくれたのか?
だとしたら悪いことをしてしまった。
……と、昨日の夜の出来事がなかったらそう思っている。
「夢さん。全然関係ない話なんだけど、昨日の夜寝る前なんて言ったか覚えてる?」
「な、なに言ったの?」
焦りを隠せない様子で聞いてきたってことは覚えてないのか。
逆に覚えてたらどう接していいかよくわからないから、なんかホッとした。
「別になにも」
「えっ? なにさ。なんて言ったの?」
昨日の夜はずるいことされたし。
少しくらいいじわるしてもいいよな。
「気にしなくていいよ。さっ水族館周ろう!」
その後、なにを言ったのか聞かれたが無視し続け。
集合の時間になり指定された場所に到着した頃には、よく俺が人見知りしてるときように静かになっていた。
が、その仕返しのように。
夢さんとその友人は、休憩で座ったベンチでお互いの惚気話を言い合って盛り上がっていた。
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