第27話 夜遊び②

 対戦ゲームの勝ち負けはとてもシンプル。

 相手を先に3回倒したほうが勝ち。

 

 桜井さんの方から持ちかけてきたなんでも命令する権利。それによって、やる気が燃え上がっていたが。


「まじか」


 勝負の結果は0対3。思わず不正を疑うほど、ボロ負けした。


 ドリームと対戦ゲームをしていてあまり負けることがなかったので、正直くやしい。が、今はそれどころじゃない。


 ……どんなことを命令してくるんだろう?


 サクライ:私の勝ちだね

 朝比奈:お手柔らかにお願いします

 サクライ:じゃあ、早速なんだけど


 サクライ:ボイスチャットとカメラつけて


「え」


 予想の斜め上を行く命令に目が点になった。


 朝比奈:そんなことでいいんですか?

 サクライ:いいの


 なんでも命令できるのなら、ショウの中の人が俺だと自白させることができる。

 前から気になってそうだったのに、それをせずただボイスチャットとカメラをつけるだなんて……。


 変だが、命令には従わないと。


 朝比奈:申し訳ないんですけど、今試してみたら俺のパソコンカメラつかないっぽいです

 サクライ:本当?

 朝比奈:嘘つく意味ありません

 サクライ:たしかに。じゃあどうしよっか

 

 命令が変わるのだけは避けたい。


 朝比奈:提案なんですけど、ラインのビデオ通話とかどうですか?

 サクライ:名案だね


 名案とは言ってくれるけど、こりじゃあまるで桜井さんとラインで友達になりたいため嘘をついたみたいだ。

 

 若干罪悪感を覚えながらも、桜井さんと友達になり。


「あの……。俺、ビデオ通話とかしたことないからわからないんですけど、これって見えてますか?」


 チャットに目を光らせてるネコのスタンプが送られてきた。


「見えてるんですね。よかったです」


 今、桜井さんの命令通りのことをしてるけどこれでいいんだよな?

 

 サクライ:朝比奈くんをこうやって画面越しで見るのなんか不思議 


「悪い意味で、ですか?」


 サクライ:もちろん良い意味でだよ。こうやってチャットに反応してるところ見てみたかったんだよねぇ〜


 この命令の意図はそういうことだったのか。


 サクライ:ビデオ通話した感想は?


「俺も……不思議です。いつも桜井さんと喋るときは文字だけじゃないので。なんか、変に力が入っちゃってる気がします」


 サクライ:緊張してるんじゃない? そんな感じじゃ、もし朝比奈くんがいつも遊んでるネッ友とビデオ通話するってなったら何も喋れないかもね


「ですね。まだ相手の顔も声も知らないので」


 サクライ:直接聞いてみようかなとは思わないの?


「思いませんね。ネッ友ですし」


 サクライ:そっか。普通そうだよね


 なんで突然、ネッ友のことを引き合いに出してきたんだろう?


 もしかしてショウの中の人が俺だって気づいてるんじゃ……。


 サクライ:思い詰めた顔してどうしたの?


「いえ。ちょっと考え事をしてました。すいません」


 サクライ:なるほど。それくらいそのネッ友が大切だってことね(ΦωΦ)フフフ…


「…………」


 やっぱりこれ、気づいてるんじゃね?


 でも気づいていたとしても言ってこないってことは、俺も余計なことは言わぬが仏ってやつだ。


 今後どうなるか不安だけど……。

 なるようになるさ。



 


【あとがき】

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