第26話 夜遊び①
ドリームとチャットしていたことを忘れていた翌日。
俺は朝、チャットしていたことに気づき慌てて謝った。が、返信してきたのはぷんぷんに怒ったドリームだったため、偽った理由を中々納得してもらえず。
最終的には妥協して納得してもらったものの、隣の席にいるS級美少女は不機嫌な空気を垂流していた。
「あの、桜井さん」
「…………」
あまりに不機嫌だったため、話しかけても誰もが無視を決め込まれ。
俺以外の何も知らない人たちは、珍しい姿になにかあったんじゃないかと騒ぎ立て。ガチ恋勢はすぐさま俺のところにと飛んできて、見に覚えのないことを責め立て。
ただ桜井さんが不機嫌というだけだったが、教室は常時お祭り騒ぎだった。
それから放課後。桜井さんとは一言も会話せず、一日が終るかと思っていたが。
「ねぇ」
突然リュックを引っ張られた。
後ろにいるのは、分が悪そうに目を逸らしている桜井さん。数秒目を泳がせ、不機嫌だった理由を話すかと口を開けたと思えば閉じ、少し頬を赤らめさせ。
「今日の夜、遊ばない?」
▲▼▲▼桜井side
「すぅーはぁーすぅーはぁー」
緊張を解こうと深呼吸し始めて、どれくらい経ったのかな……。
もうすぐで、朝比奈くんとチャットで待ち合わせる時間になる。
ショウくんとはもう数え切れないほどチャットしてきたけど、朝比奈くんとするのは初めて。
中の人が同じだとしても、立場が違かったらそれは別物。そのせいで、らしくなく緊張してるのかもしれない。
ピピピッピピピッピピピッ
念のため設定しておいたタイマーがチャットの時間を知らせてきた。停止ボタンをタップして、パソコンに向き合う。
朝比奈くんのアカウントはこの前、ショッピングモールの喫茶店で見せてきたケイゴという名前のもの。 今は名前を変えて、朝比奈になってる。
ちなみに私もついさっき作ったサブアカで、名前はサクライ。
「あ」
家に帰ったときしたフレンド申請が、いつの間にか受諾されている。
しかも朝比奈くん、オンラインだ。
私とチャットするために待ってるんだよね……。
「ふへへへへ」
いけないいけない。早くサーバー作らないと。
それから数分後。
まだ何もチャットしていないが。朝比奈くんは出来上がったサーバーで、見覚えのある豆電球が特徴的なネコのスタンプを連打してる。
スタンプ連打は私もよくしてるけど、かなりクリックが速い……。
「って、やめやめ」
対抗し始めたら、いつもしてるショウくんとのチャットになっちゃう。
朝比奈くんには私が正体に気づいてると、まだ知られたくない。
「よし」
ドリームじゃなくて素の私でいこう。
サクライ:そろそろ時間だね
返ってくるのは大量の同じスタンプ。
もしかして朝比奈くん照れてるのかな?
「へっへへへへ……」
人には見せれない笑いをしていると、スタンプ連打が止まり。
朝比奈:こんばんはー
すっとぼけた顔をしてそうなチャットが返ってきた。
実際、今どんな顔してチャットしてるんだろう?
欲を言えば、文字だけじゃなくて声と顔も見れればいいんだけどなぁ……。
朝比奈:いますよね?
サクライ:いるいる。今日は誘いに乗ってくれてありがとう
朝比奈:感謝されるようなことじゃないです。俺の方こそ誘ってくれてありがとうございます!
「すごいかっこいいこと言ってくるじゃん」
朝比奈:ところで何するんですか?
私はうきうきで開きっぱなしだった口を閉じ。
とりあえず自信満々な顔をしてるネコのスタンプを送っておいた。
朝比奈:まじですか
サクライ:まじ。まじのまじ
朝比奈:サクライさんって、普段どんなことしてネットで遊んでます?
サクライ:対戦ゲームとか、それこそネッ友とのチャットくらい
朝比奈:なるほどわかりました。
10秒程間がが空き。
朝比奈:じゃあ対戦ゲームしません?
「対戦ゲーム」
一応サブアカはあるからできる。けど、それだけじゃ気乗りはしない。
せっかくショウくんじゃなくて朝比奈くんの方とチャットしてるんだから、今しかできないことをしたい。
「……勝ち……負け」
いいこと思いついた。
サクライ:勝負で勝った方が負けた方になんでも一回命令できることにするってどう?
朝比奈:燃えてきた
私が勝ったら、ボイスチャットと顔が見えるようにカメラをつけてもらう!
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