第17話 お悩み相談会

 ドリーム:ショウって前世ナマケモノだったんじゃない?


 今日のチャットは、唐突な悪口から始まった。

 

 ショウ:だったらドリームは家猫でしょ

 ドリーム:あ、バカにしたわけじゃないからね。ナマケモノみたいってこと

 ショウ:バカにしてるじゃん

 ドリーム:のんのん。ナマケモノ、個人的に可愛くて好きだからバカにはしてない


 なんだそれ。


 ショウ:出した名前からしてバカにしてないわけがない

 ドリーム:ピキピキ

 ショウ:やっぱバカにしてるじゃん 

 ドリーム:してないしてない。さっきチャットしたじゃん。可愛くて好きだって


 片思いされてるって知ってるから、遠回しに俺のことを可愛くて好きだって言ってるのわかっちゃうんだよな……。

 桜井さんは言ってやったぞってウキウキしてるかもだけど、俺はどんな顔すればいいのかわからん。


 ショウ:俺が前世ナマケモノだったとして、それがどうしたん?

 ドリーム:……?


 何も話用意してなかったんかい。


 ショウ:とりあえずこの話はやめようか


 このまま続けてたら俺の方が耐えられなくなるかもしれないし。


 ドリーム:じゃあ何の話する?

 ショウ:そうだな……

 ドリーム:あ。ショウに聞きたいことがあるんだった

 ショウ:なに?


 まさか中の人が朝比奈翔太だってバレたか?


 ドリーム:ちょっと仲良くなり始めてる人に嫌われない方法

 ショウ:ぼ、ぼ、ぼ

 ドリーム:ぼっちじゃないし。って、違うわい!


 真面目に相談してきてるけどノリに乗ってくる辺り、流石いつもチャットをし合ってる仲だ。


 ショウ:陰キャの俺にそんなこと聞いてためになると思うか?

 ドリーム:だからこそってやつ


 あぁ。今更だけど、ちょっと仲良くなり始めてる人って俺のことか。

 

 ショウ:じゃあ教えるけど……。俺から言わせてもらうと、嫌われない方法はたった一つだと思う

 ドリーム:ゴクリ

 ショウ:ずばり相手の嫌がることはしないこと!

 ドリーム:当たり前のことじゃん

 ショウ:当たり前のことができれば嫌われることはないと思う。うん絶対

 ドリーム:ショウが初めて頼もしく見える……

 ショウ:おい。今までも頼もしいだろ


 自分のことを語って頼もしく見られるってのも、どんな顔をすればいいのかわからん。


 さっきからチャットの内容が俺が困るようなものばかりだ。

 ドリームの方から話を振ってきてるからなのか?

 わからないけど、ドリームとのチャットは面白いからやめれるわけがない。


 ドリーム:じゃあ今度はショウの悩みを聞いてあげようではないか

 ショウ:誰も頼んでないけど

 ドリーム:くるしゅうない


 俺の悩みか……。桜井さんがネットで片思いしてる人が俺だってことくらいしか、パッと思いつかない。

 家での悩み、学校での悩み。そういえば、中間テストの勉強が悩みどころだな。


 ショウ:あと少ししたら中間テストなんだけど、勉強するかしないかで悩んでる

 ドリーム:悩みどころそこ?

 ショウ:もちろん

 ドリーム:……勉強はやるべきだと思うけど

 ショウ:そんなこと言うドリームは勉強できるの?

 ドリーム:人並みには

 ショウ:授業中ほとんど寝てる俺と比べたら?

 ドリーム:数百倍はできる

 

 数百倍って、とんでもない数字だ。

 チャットしてるときは明らかにIQ下がってるけど、ドリーム……桜井さんが頭良かったの初めて知った。

 

 ほぼ毎日俺とチャットしてるのに、いつ勉強してるんだか。


 ドリーム:脱線したけどその悩みは悩むまでもなく勉強するべしだと思う。だって、中間テストで最下位とったらそういうレッテルずっと貼られ続けるハメになるでしょ

 ショウ:たしカニ


 ドリームにしてはまともなこと言うじゃん。


 ドリーム:あのさ。この流れから全く関係なくて聞きたいことあるんだけど、その「たしカニ」っていうの誰か別の人に使ったことある?

 ショウ:いや別に

 ドリーム:そう


 ……え。どういうこと?

 もしかして俺、桜井さんの前で「たしカニ」って言ったのか?

 見覚えがない。

 こういうのって結構無意識でタイピングしてるから、無意識で言っちゃってるかもしれないな……。

 今後は気をつけていこ。



  ▲▼▲▼



 ドリームとチャットしたこともあって、俺の心は勉強という名の炎が燃えたぎり。

 翌日。雷也に協力してもらい、勉強ができる人たちと一緒に俺の家で勉強することになった。

 名前を聞いたけど、知らない人たちばかり。

 萎縮しちゃうかもだけど頑張ろう!

 

 そう心構えをしてから早30分。

 未だ誰もインターホンを鳴らしてこな、かったが。


 ピーンポーン

 

 聞きたかった音が家に響き、俺は少し強めにドアを開けた。


「遅いぞ」


「あれ。時間通り来たはずなんだけど……」


 来るはずだった人の中にいない、エコバックを持った桜井さんがそこにいた。 


 うん。意味わからん。

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