第16話 寝不足の二人

 休み明けの月曜日ほど憂鬱な日はない。 


「っ……」


 自然とあくびがこぼれた。


 昼休み中、満腹でうとうとしてるっていうのもあるけど、これは昨日夜更かししすぎたせいだ。

 たしか最後に時間を見たときは、2時をこえてた気がする。


 それもこれもドリームとチャットファイトしていたせい。その内容な炭酸ありか炭酸なしの飲料水どちらが美味しいのか、というもの。

 結局どっも美味しいってことになったから、あれはまじでいらない時間だった。


「ふぁ〜……」

 

 隣に座る桜井さんからもあくびが聞こえてきた。

 

 俺は午前中の授業普通に寝てた。けど、桜井さんは周りの目を気にしてることもあって寝てないと思う。


 目の下にくまができてて、今にも寝そうな顔だ。


「よう。二人とも眠そうだな」


「……なんですか」


 桜井さんは正面から話しかけてきた雷也に鋭い目を向けた。


 こんなの確認しなくてもわかる。完全にキレてる。


「あっ別になんでもないです。はい」


「じゃあ話しかけてこないでください。一生」


「…………」


 あの、どんな女の子と仲良くなれる雷也が一言も反応できてない。

 イケメンで弱点がないと思ってたけど、桜井さんがダメなのか。面白ろ。


「なぁ翔太。なんでこんな人と仲良くなれてるんだよ」


 雷也は暇そうに俺の机の前まで来て、小声で話しかけてきた。


 眠たいときに質問されるのってきつい。

 俺の状況を察して、適当に言ったら納得してくれるでしょ。 


「わかるだろ友よ」


「最近そういうのが一方通行だってこと、発覚したばっかりじゃん友よ」


 完璧な返しだなおい。


「覚えてるけど……」


「あ、仲良くなった理由は人に喋りたくない感じか」


「そういう感じじゃない」


「とか言ってるけど?」


 こんな追求してくるってことは雷也、今日は暇なんだな。

 

「うるさいんですけど」


 桜井さんが突然俺たちの会話に割って入ってきた。


 目が完全に開いてなくて、声は普段より少し低音。今にも寝そうな感じだ。 


 眠れそうなときに喋り声がうるさくて眠れなかったら、そりゃキレるわな。


「なんなんですか。嫌がらせですか。嫌がらせなんですか。そうじゃなかったら静かにしてもらえませんか。あなたの声が頭の中に響いて最悪の気分なんですけど」


 今まで聞いたことのないくらい饒舌。

 声は小さいけど怒りが言葉に乗ってる。


「ごめんなさい」  


「わかったならもう喋らないでください」


 素直に謝った雷也にも鋭い一言を残し、桜井さんは再び目を閉じた。


 なんか口を抑えてる雷也、今にも泣きそうな顔してるんだけど。

 うん。喋りかけてこないだろうし、俺も寝よっと。


 その後何度か起こされたりしたが、寝て寝て寝続け。


「中間テストでは……」


 先生の声を耳にし、中間テストがあるのかぁ〜などと思いながら目が覚めたのは、すべての授業が終わったときだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る