第11話 緊急招集

 今日は学校がない土曜日。

 やることがなく、ドリームとチャットもしてないので暇を弄ぶつもりだったが。


『どうせ暇なんだしこいよ』


 俺は雷也から呼び出しをくらい、近くにあるショッピングモールにやってきた。

 

 この街で一番賑やかな場所で、休日ということもあって人がごった返している。

 こんな場所に呼んで、何をするっていうんだ?

 

 疑問を残しながら集合場所に到着したが、そこにいる3人を見て余計疑問が増した。


「お。来たな」


「あっ。らいが言ってた来る人って、君のことだったんだ」


 相変わらずおしゃれな雷也と、現代の女性を体現しような奇抜な服を着た桜井さんの友人。そしてもう一人は。


「朝比奈くん」


 雪のように真っ白なワンピースを着こなしている桜井さん。


「あれ? あれあれ? 夢ちゃんって朝比奈くんだなん呼んでたっけ?」


「う、うるさいっ!」


「照れ隠しだぁ〜」


 3人が並ぶとすごい明るいオーラがある。

 着すぎて穴が空いてるジーパンと、オーバーサイズの白いティーシャツを着てる俺なんて完全に場違い。

 

「よし。じゃあ俺たちはここで」


 突然雷也は桜井さんの友人の手を握り、爽やかな笑顔を向けてきた。


「……ん?」


 どういうことなんだ?


 反応がワンテンポ遅れた。 


 満更でもない表情を浮かべてる桜井さんの友人。

 これをノリでやってるわかじゃないってのは、流石にわかる。

 でも、ん?


「ちょ、ちょっと?」


「ちょい雷也。呼ばれた理由とか全くわからないんだけど。ここでって、どゆこと?」


「あー。言ってなかったかもしれないけど、俺たち付き合ってるんだよね」

 

「「え?」」

 

 桜井さんとキレイにハモった。


「二人を呼んだのは、俺たちが仲良くなって欲しいって思ったからなんよ」


「自分勝手な願望だなおい」


「嫌ってわけじゃないだろ?」


 雷也はすべてを理解したような目を向けてきた。

 

 今すぐ、何も理解してないって言いたいけど言いづらい。桜井さんも俺と同じで何も知らずに呼び出されたらしく、口をモゴモゴさせている。

 

 こんな状態の二人を残すなんて、鬼畜すぎる。でも、それを本人がいる前で言えるはずがない。

 

 友なんだから目力だけで言いたいこと、伝わるよな?


「これからどこ行こっか?」


「うーん。らいが行きたいところに行きたい」


「実は俺も同じなんだよね」


「じゃあ、お互い行きたいところに行こっ」


「それいいな」


 あいつの周りにイチャイチャラブラブバリアが張られていたせいで、目力が消滅してしまった。

  

 これはもう俺と桜井さんには拒否権がないらしい。

 

「じゃあそういうことだから。翔太、楽しめよ!」


「…………そっちこそ」  

 

 イチャイチャラブラブカップルは、人混みの中に消えていった。

  

 ガヤガヤと周りからは喋り声が常に聞こえてきてるが、ここだけ無言。


 流れで桜井さんと仲良くなるためになにかすることになってるけど、どうしよう?


「あの、解散しますか?」


「あー……私今日暇だから、朝比奈くんさえよかったらこれからどこか行かない?」


 コクっと首を横に曲げ、更に上目遣いされたせいで心臓が鷲掴みにされた。

 こんな顔、俺以外の男だったら気絶してる。

 

 ここまでさせておいて解散するのはどこかもったいない気がする。

 断る理由があるとすれば、身バレする可能性があるくらいだけど……。大丈夫でしょ。


「いいですね。行きましょう」


 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る