第4話 寂しがり屋

 夕食を食べ終え、宿題をし終え、自由な時間。

 いつもならドリームとチャットしてる時間だが、まだしてない。パソコンさえ開いてない。


 不自然に思われるから、チャットすべきだと思う。

 でも、ドリームが隣の席の桜井さんで、片思いされてるって思いながらどうやってチャットすりゃいいんだよ。

 

 ……悩んでいても仕方ない。


「よし」

 

 俺は勇気を振り絞ってパソコンを開き、ドリームとのチャットをしてるタブを開いた。

 すぐチャットのログが目に入る。


 ドリーム:おーい 

 ドリーム:どうせオフラインにしてるって設定なんでしょ?

 ドリーム:あれ?


 これは数時間前、俺が学校から帰ってきた頃くらいのチャット。

 大体いつも学校から帰ったらチャットしてたし、まぁこうなるわな。


 俺の反応が返ってこずドリームはすぐチャットをしなくなり、再びし始めたのは少し時間が経ったときだった。


 ドリーム:何も言わないのは良くないことだと思うんだよね

 ドリーム:なんでよ〜

 ドリーム:暇すぎて死んじゃう

 ドリーム:【このチャットは削除されました】


 おいおい。削除されたって……どんな内容だったんだ?

 自分で気づくってことはこの前のスタンプ連打より、恥ずかしいことだったんだろうな。

 とりあえずスクショしようかとマウスホイールをスクロールしたとき、目を疑うログがあった。


 ドリーム:【このチャットは削除されました】

 ドリーム:【このチャットは削除されました】

 ドリーム:【このチャットは削除されました】

 ドリーム:【このチャットは削除されました】


「……え?」


 数分おきにしたチャットの内容が全て削除されている。こんな連続して削除されてるところ初めて見た。


 そのチャット連続削除から1時間弱経った今。

 フューチャーはオンラインになっているが、チャットには動きがない。

 俺がオンラインになったの見えてるはずなんだけどな……。離席中か?

 

 とりあえず今のうちに言い訳チャットしとこ。

 

 ショウ:ごめん。親に勉強しろって強く言われててパソコン開けてなかった



  ▲▼▲▼桜井side



 私はショウくんになにか悪いことをしてしまったのだろうか?


 いつもなら遊んでる時間帯なのに、今日はショウくんのパソコン自体がオフラインになっている。


 最初はふざけてまた私のことを嵌めようとしてるのかと思ってた。

 でも、今は消しちゃったけどあんな寂しがり屋みたいなチャットをしたのに無反応だったので異変に気づいた。


「はぁ……」


 暇つぶしにパソコンで動画を見ているけど、心にポッカリと空いた穴が埋まる気がしない。

 もうちょっとしたら寝ないと明日に響く。片思いしてるから、自分でもショウくんがどれだけ大事な存在なのかわかってた。けど、こんな生きた心地がしないほど大事だとは思ってもなかった。 


「はぁ……」


 このまま音信不通になったりして……。


 悲観的になり落ち込んでいたとき。

 チャットの通知が来た。


「っ」


 音信不通にならなかった喜びは小さかった。

 どちらかというと、そのチャット内容に悪い意味でドキドキが止まらない。

 

 私は一度深呼吸し、通知をクリックする。


 ショウ:ごめん。親に勉強しろって強く言われててパソコン開けなかった


 よかっ、た。

 別に私のことが嫌いになって、チャットしてなったわけじゃないんだ。


 小さく安堵のため息を吐き、椅子の背もたれに体重を預ける。


 ドリーム:別に待ってなかったけど

 ショウ:え? じゃあログにある削除したチャットってどんな内容だった?


 なんて返そうか少し迷い。


 ドリーム:誤字

 ショウ:へぇ〜へぇ〜。未まで誤字しても削除することはなかったのに、今日はしたんだぁ〜


 いつも通りの意地悪なショウくんだ。


 意地悪されてるのに微笑んでる私って、おかしいのかな? 

 可愛いことをするショウくんが悪いよね。うん。

 

 ドリーム:ねぇ、もう寝るでしょ?

 ショウ:そうだな……。明日も学校だし寝ないといけないけど、正直ドリームと遊んでたい


 じゃあ今度オフであって遊ぶ?

 

 なんてことチャットできるはずもなく。


 ドリーム:寝て、明日たくさん遊ぼ

 ショウ:賛成 

 ドリーム:おやすみ

 ショウ:おやすみ


 ショウがオフラインになったのを見て、私はそっとパソコンを閉じベットに寝転がった。

 時刻は0時。部屋の明かりを消し、目を閉じる。……が、寝れるはずがない。ついさっきしたショウくんとのチャットが、脳内で再生されてる。


 鏡を見てないけど、絶対口角が上がってる。


「ふふふっ」


 いつかショウくんとリアルで会ってみたいな。


 私はそんな願望を頭の片隅に残し、眠りについた。

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