第2話 ドリーム
俺は家に帰り、漫画を読んで時間を潰し、ドリームがオンラインになったのを見て飛びつくようにパソコンへ向かった。
ショウ:よ
ドリーム:よ。今日はなにする?
ショウ:ゲームとかしたいけど……。ちょっとその前についさっき学校であったこと、聞いてくれないかな
入力中の文字が数十秒経ち、チャットが返ってきた。
ドリーム:いいよ
何をそんな悩んだんだろう?
まぁ、いいって来てるし詮索するのは野暮か。
ショウ:俺、一度も喋ったことがない隣の席の美少女に友達と喋ってた内容盗み聞きされて、一方的に冷たいこと言われた
ドリーム:ふーん。好きなの?
なんでそうなる?
ショウ:いや。その人美少女過ぎて、俺なんかと釣り合わん
ドリーム:つまり好きだけど諦めてるのね。フムフム
ショウ:好きじゃないから。逆に今ちょっと嫌い気味
ドリームは猫が頷く同じスタンプを3つ送ってきた。
なんでそんな過剰に反応してくるんだろう?
……そういば俺たちってリアルのことを愚痴るのは、今の今まで一度もなかったな。
スタンプ連打は嬉しい証拠ってわけか。可愛いやつめ。いつか揚げ足取るためにスクショ撮っとこ。
ショウ:いいものを見させてもらった(ΦωΦ)フフフ…
ドリーム:?
ドリームは『?』を送ってきていたが、ちゃっかりスタンプを2つ消していた。
ショウ:スクショって知ってるぅ? すくりーんしょっと!
ドリーム:………
ショウ:おーいおーい
俺がその後も返答がないのをいい事に煽りまくった。が、まるでそれを逃れるようにドリームは一言『勉強するから落ちる』と残し、オフラインになった。
明日オンラインになったときにでもスクショを見せてやろう。
▼▲▼▲
久しぶりに学校で寝不足じゃない状態でいる。
こんなとき喋り相手がいれば最高だが、雷也は絶賛クラスの女子と雑談中。せっかくの授業の間の休みなのに、やることがない。
適当に次の授業の教科書を構っていると、隣の席にいる桜井さんとその友人の会話が耳に入ってきた。
「えっ夢ちゃんもしかしてその人のこと……」
「そう。でも、一方的に片思いしてるだけなの」
あのS級美少女が片思い……だと?
一体誰に?
俺は教科書をかまう手が止まった。
女子の会話を盗み聞きすることに罪悪感を感じながらも、欲望に絶えられず、二人の会話に意識を向ける。
「ネッ友に恋はしたことないなぁ〜」
ネッ友!?
「ちょ、静かに」
「ごめんごめん。で、その人のどこらへんが好きなの? まだ一回も喋ったことないらしいじゃん」
「私といつも遊んでくれたり、私のことを対等な人間として接してくれるの。この前なんて頼ってくれたし。えへへっ全部。もうぜぇ〜んぶ好き」
好きになる基準低くね?
「その人がダメ男だとしても?」
「うん。好き」
「おぉ……。夢ちゃんにここまで好かれるなんて、罪な男だ」
「言葉遣いは男の子だけど、性別は知らないよ」
「ほ、ほぉ〜。ネッ友だし当たり前っちゃ当たり前か」
声だけでわかる。
桜井さんの友人、性別も知らないネッ友に恋するってどういうこと? って思ってるだろ。
正直俺も会話に参加したいくらいどういうことかわからず、モヤモヤしてる。
桜井さんのネッ友と俺のネッ友の関係はよく似てる。一度も喋ったことがなく、言葉遣いからしか性別もわからない。
俺がドリームに片思いをするなんて……無理だ。
桜井さんは色んな意味ですごいな。
「ショウくん、今日もチャットしてくれるかなぁ〜」
昨日かけられた冷たい言葉から想像できない優しい声色の桜井さん。
ほほう。その人はショウって言うのか。本名から取ったような安直な名前だな。
……ん?
ショウって俺のハンドルネームなんだけど??
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