第9話 ロンドンの休日

 ストロベリーフィールドでの調査を終え、ロンドンへと舞い戻った数日後。

 現在は昼過ぎ。

 ノクトはベッドの上で眠るでもなく、ただぼうっと天井を眺めていた。

 調査後、ロードリック総監へと報告を行い、シエラ・ロペスという孤児について調べて欲しいという旨を伝えた所、彼は快く了承してくれた。


「分かった、その孤児についてはロンドン警備局を通じて調査を依頼しておく。ご苦労だったな」


 報告を受けて、ロードリックが重々しい口調で述べる。

 調査は済んだが、「被害者なき殺人事件プール・オブ・ブラッド」に関する情報は何も得られなかった。

 ――結果として無駄足になってしまったな。そんな風に考えていると、隣にいたモノフォニーが唐突に手を挙げる。


「ロードリックさん、今回の聞き込みで私は少し疲れてしまった。今週末、お休みをくれないかな?」


 突然何を言い出すんだこの異端者は?

 思い切り眉をひそめるノクト。

 彼女の勝手な行動に頭を抱えていると――。


「別に構わない。オズヴァルド審問官たちが得た目撃情報をもとに調査が大きく展開するかもしれないからな。今のうちに休んでおいた方がいいだろう」

「え、ロードリック総監? 何を言ってるんです……?」

「今週末の日曜日は2人とも非番にしておく。週明けには警備局からの調査結果も上がるはずだ。それまで休息を取っておくといい」

「ヘルキャットはともかく、自分は休みなんて……」


 ノクトは食い下がる。

 今回の調査で有力な手掛かりが得られなかった手前、呑気に休んでいる余裕などない。


「駄目だ、君もしっかり休め。それにノクト審問官だけ仕事というわけにもいかないんだ。何せ君はモノフォニー特例審問官の監視役なのだから」


 有無を言わせぬ鋭い眼光。

 何も言い返せぬノクトはただ、静かに頷く他なかった。


 ――回想終了。


 そんなわけでノクトは休息を取っている真っ最中だった。

 ただひたすらに休息。何もしないことによる体力回復を図る。久々の休日を全力で謳歌していた。


 コンコン。


 何もしないを実行する。無駄なエネルギー消費をしない。

 それが休息における鉄則である。


 コンコン。


 たとえ、何が来たとしても反応しない。そう堅く決意する。


 コンコンコンコン。


「あー、もうなんだよ! さっきから五月蠅いな!」


 部屋のカーテンを思い切り開け放つ。

 窓の外に居たのはノクトもよく知る人物で。

 ベランダに設置された細い柵の上で器用に屈み、小首を傾げてこちらを見つめる少女。モノフォニー・クロム・ヘルキャット、自身の監視対象その人だった。

 ノクトは彼女と数秒ほど見つめ合い――そして静かにカーテンを閉めた。


「ちょっと!? 無視は酷いじゃないか、監視役!」


 どんどんと、窓を叩くモノフォニー。

 今にも窓が割れてしまいそうだ。

 騒々しさに耐え切れなくなったノクトは嫌々窓を開ける。


「ふぅ、危なかった。あと数秒もしたら特殊部隊さながら、窓を蹴り破って突入する所だったよ……」


 モノフォニーは物騒な言葉を呟きながら、軽快な身のこなしで室内へと降り立った。


「一体、何の用だ?」


 心底うんざりした様子を隠しもせずにノクトは尋ねる。 


「あれ、見て分からないかい?」


 意外だとでも言いたげな様子で、彼女はくるりとその場でターンして見せた。

 動きに合わせて灰色のトレンチコートが舞う。

 そしてモノフォニーはノクトの顔を真っすぐに見つめ、言った。


「我が監視役、私と一緒にお出かけしよう!」

「断る」


 もぞもぞと蠢きながら毛布の中へと潜り込む。

 体の健康は一番の資本だ。それを損なうわけにはいかない。


「ねーえー、なぁんでだよぉー! この美少女である私とお出かけしたくはないのかぁー?」


 毛布を掴んでノクトの体を揺さぶってくるモノフォニー。

 震度3くらいはありそうな揺れの最中、毛布から顔だけを出す。


「当たり前だ。休日は自分の体を休める日であって、断じてお前と出かけるための日じゃない」


 そう言い放つと、それを聞いた彼女は不自然に黙りこくって。

 そしてすん、とした表情を浮かべてノクトへと正対した。


「仕方ないな。こうなってしまった以上、最終手段を使わざるを得ないね」


 部屋に不穏な空気が流れる。

 モノフォニーのただならぬ雰囲気にノクトは固唾を吞んだ。


「監視役が5分以内に出かける準備をしなかった場合、私は勝手にどっかに行きます!」

「はぁ!?」


 柄にもない大声が喉から飛び出た。


「いいのかな? ロードリックさんから直々に仰せつかっている監視役の職務を全うできなくても。監視対象を逃がしたなんてことになれば、君は一体どんな処罰を受けるのかなぁ?」


 煽るような声音で彼女はつらつらと言葉を並べる。

 ――勝負は始まる前から既に決していたのか。

 早々にこれ以上の抵抗は無意味だと悟る。


「……10分だけ部屋で待ってろ、準備をする…………」


 完全に生気のない表情でノクトは弱々しく告げた。





「いいか、ヘルキャット。異端審問官は休日でも異端者が発生したらすぐに対応しなきゃいけないんだ。気を抜くなよ」


 意気揚々と先を行くモノフォニーへと忠告する。


「分かっているとも。休日を謳歌するため、手早く仕留めろってことだろう?」


 見当違いな解釈をしたまま、彼女は歩いていく。

 ロンドンの12月の平均気温は約9度。街を行き交う人々は皆、コートやダウンジャケットに身を包み、各々が思うような防寒対策を取っていた。

 さらに12月も半ばになるとクリスマス仕様のライトアップが始まり、雰囲気は一気にクリスマス一色となる。街中には所々に煌びやかなネオンが光り輝いていた。


「で、お前は俺の大事な休日を潰してまでどこに行きたいんだ?」

「嫌味な言い方をするね、我が監視役は。外に出て気分をリフレッシュさせるのも大事な休息の内だよ?」


 振り返る彼女は悪戯っぽく笑ってみせた。

 一般の人間にとって言えばそうなのかもしれない。

 だが、異端審問官はそれとは訳が違う。休日であろうとなかろうと異端者が出たなら現場に向かわなければならない。

 だからこそ有事に備えて家で寝ている方が良いのだ――、と言っても彼女は聞く耳を持たないのだろう。

 現にこうして、ノクトは無理やり外に連れ出されている。


「大英博物館に行こうと思ってるんだ。あそこにはまだ一度も入ったことが無くてね、聞けば各国ありとあらゆる文化遺産が集結しているらしいじゃないか。これはもう行くしかないだろう?」


 モノフォニーはリヴァプールへ向かう時と同じく、幼い子供のように目を輝かせていた。

 しかし……大英博物館か。ノクトは少しばかり考え込む。先ほど彼女が述べた通り、大英博物館は全世界から蒐集した貴重文化財たちを展示している。それこそが最大の目玉であり最大の弱点。ここ欲望渦巻く「魔都」ロンドンでは常に犯罪者たちから狙われている場所なのだ。

 故に入場に至るまでの手荷物検査や身体検査はかなり厳しく、博物館内にも多くの警備員と監視カメラが配備され、24時間目を光らせている。

 はっきり言ってしまえば大英博物館はトラブルが起きやすい場所だ。

 ノクトの心配など気にも留めず。彼女は迷うことなく目的地を目指している。

 ――気が付けば、件の博物館へと到着していた。

 人は思っていたよりも少なく、今のところ騒ぎが起きている様子もない。とりあえず一安心だ。

 入場前の様々な検査を乗り越えて館内へと入った2人。

 両脇に階段が設置された白色の巨大な円柱型の建造物――グレートコートが彼らを出迎えた。


「どこから見ようかなぁ……」


 忙しなく目移りしながらモノフォニーはふらふらと誘われるように歩いていく。そして「こっちだ、監視役!」とはしゃいだ様子で手招きをする。

 その姿にまた、彼女の面影を重ねてしまった。

 立ち止まっている自分を強引に引き連れて行ってくれる存在。そんな曖昧な感覚で、重ねてはいけないというのに。


「――これがかの有名なロゼッタストーンだね」


 ケース越しに黒色の石板を見つめるモノフォニー。

 彼女にとって興味深い物なのだろうか、穴が開きそうな程見つめている。

 所在なく視線を横に向けると、ロゼッタストーンに関する説明文が掲載されていた。


『紀元前2世紀初頭頃の黒色の石板にはエジプトの神聖文字であるヒエログリフと民衆文字、古代ギリシア語など3種類の言語が刻まれており、ヒエログリフの解読につながった歴史的な石碑である』


 簡単に解釈するとこんなものか。

 ノクトは石を熱心に見つめたままのモノフォニーへと再び視線を移す。


「読めるか?」


 何の考えもせず、ただ気まぐれに質問した。


「これを読めていたなら、私は吸血鬼じゃなく考古学を研究していただろうね」

「そうだったら良かったんだけどな……」

「何か言ったかい?」

「単なる冗談だ」


 ノクトは肩をすくめる。


「監視役が言うと冗談には聞こえないね」


 ロゼッタストーンが展示されていた展示室4番を後にする。

 そこからは連続的に様々な展示品を見漁った。



 ――展示室18番:エルギン・マーブル。

「ここの彫刻たちは皆、何かしらが欠損しているね」

「サモトラケのニケとかもそうだが、欠損してる方が良いみたいな風潮があるのかもな」

「そうしたものが良いとされているのは、欠損している部分を人間が都合のいいように想像するかららしいね」

「偶には五体満足な彫刻も見たいんだが」

「私がこの彫刻群の中に入ってあげようか?」

「ああ、良いなそれ。2代目ニケってわけだ」

「……もしかして監視役、私の頭と両腕を吹き飛ばそうとしてる?」



 ――展示室10番:アッシリアの守護獣神像。

「この像は正面から見ると足が2本、横から見ると4本に見えるんだって」

「何だ、謎解きか?」

「違うよ? 正面からだと静止している状態、側面から見ると歩いている状態になっているからそう見えるんだ」

「騙し絵みたいでなんか腹立たしいな」

「この作者もまさか2900年後の人間にそんな暴言を吐かれるとは思ってなかっただろうねぇ」



 ――展示室24番:イースター島のモアイ像。

「あははっ! 監視役そっくり!」

「殺すぞ」

「はい」



 ――展示室64番:ミイラの展示。

「こちらジンジャー君。生姜の根のように赤い毛髪からこの愛称が付けられている」

「何で友達みたいに紹介してるんだ?」

「ジンジャー君は包帯に巻かれた一般的なミイラと違って、熱砂に埋葬された遺体が自然に風化したミイラなんだよ」

「いや、だから何でそんな友達を紹介するみたいなテンションで……」

「彼は18~21歳の屈強な男の子だったんだけどね、刃渡り15センチ以上の刃物で左肩を刺されて死んでしまったんだ」

「友達の死因を淡々と紹介するなよ……」



 こんな調子で様々な展示物を見て回ったノクトとモノフォニー。

 気が付けば時計の針はもう午後5時を回ろうとしていた。

 2人はゆったりとした足取りで出口へと向かう。


「――おい、止まれ!」


 博物館から出ようとしたその時だった――。

 背後から切迫した声が飛んだ。

 ざわめきは一瞬にして人々へと伝播する。

 誰かの甲高い叫び声が聞こえた。

 振り返り、いち早く状況を確認する。

 恐らく最初の切迫した声は警備員のもの。彼は強張った表情を浮かべていて。

 警備員の視線の先――。

 男がいた。

 手に持っているのはガラスの破片か?

 大英博物館では入場前に厳重な手荷物検査があるので武器の持ち込みは困難なはず。

 ならば、展示物のショーケースを叩き割ったのか。

 そこから展示品を盗み、ガラスの破片を武器とした。

 目に映った情報を順に整理していき、状況把握に努めるノクト。


「動くなお前ら! こいつがどうなってもいいのか!?」


 男は警備員たちに向かって叫ぶ。

 彼の腕の中には幼い少女がいた。

 少女を盾として、男はグレートコートの前までじりじりと移動する。


「……車だ。車を用意しろ! あと金もあるだけ持ってこい! じゃなきゃこいつを殺すぞ!?」


 半狂乱となって叫ぶ男。

 鋭利なガラスの切先を怯えた様子の少女へとぞんざいに近づける。


「……どうする、監視役?」


 モノフォニーが男から視線を外さずに問う。

 最初から何か起きるのではと危惧していたが、まさか本当に強盗事件が起きるとは。

 悩みの種を脳内で転がす。

 自分たちは異端審問機関に所属する異端審問官。ステージ3以上の異端者を鎮圧することが役目だ。

 故に、非欲病発症者として分類される犯罪者の場合、それはロンドン警備局が対処することになっている。

 ――しかし、この緊迫した状況。

 警備局が駆け付けるまでの間、男が悠長に待ってくれるとも限らない。

 ノクトは瞬間的に解答を導き出した。


「人命最優先だ。俺があいつの注意を引く。ヘルキャットはその隙に少女の救出と男の無力化、出来るな?」

「監視役のお望みとあらば勿論」


 市民の安寧を守ることこそが異端審問官の最たる目的。

 ならば、この事態を見逃すことなど出来ない。

 2人は迅速に行動へと移った。





「すみません。異端審問機関のノクト・カーライルと言います。この状況、リベリオンにお任せ頂けますか?」


 ノクトは男から最も遠い場所にいた警備員へ声を掛ける。

 すると彼は救世主を見るかのように目を見開いた。


「リベリオンの方ですか……! 是非お願いします……!」


 それに頷きだけを返し、ノクトは男の方へと近づいていく。

 すぐさま瞳孔の開いた目がこちらを認識した。


「何だお前……? おい、それ以上近づいたらこいつを殺しちまうぞ!?」


 見るからに殺気立っている。

 少女の安全が最優先だ。

 故に事態は急を要する。

 男が背にしているグレートコート。こちらから見てその右側の階段上部にモノフォニーが音も無く着地した。

 彼女の準備が完了したことを確認し、ノクトは早速行動に移る。


「審問開始」


 素早い動作で『R.I.O.T』を左腕のデバイスに翳す。

 システムは正常に起動。発動に伴って光の粒子が流れ出る。

 その輝きが簡易的な目眩ましとなって。

 ――刹那、男の下へ黒い影が飛来した。


「【血鎖の咎】!」


 モノフォニーは両手から血の鎖を放出。

 それらを自身の手指の如く器用に扱い、男から少女を引き剥がした。

 少女の小さな体がこちらに放り投げられる。


「馬鹿っ……!?」


 ノクトは少女の落下地点にスライディングで飛び込み、何とかその小さな体を抱き留めた。


「ナイスキャッチだ、監視役」


 両手から放出された鎖の全てを男の拘束に用いるモノフォニー。

 取り敢えず、当初の目的は達成した。

 ノクトは少女を立たせ、駆け寄ってきた母親へと引き渡す。


「良かった……! 無事で本当に良かった……!」


 涙を流しながら少女の体を抱きしめる母親。

 少女もまた、安堵からか大声で泣き声を上げていた。

 ――傷一つ無く助け出すことが出来て、本当に良かったと思う。


「痛たたたた! 痛い、痛いぃぃぃ!」


 親子を見て胸をなで下ろしていると、突然悲痛な叫びが博物館内に木霊した。

 音の出所は探すまでも無く。モノフォニーが男を縛り上げて足蹴にしている様が視界に映った。


「ああああ! いたっあ、いだいぃい!」


 情けなく、叫ぶ男。

 しかし何時になってもその声が止むことは無く。


「止めろ、ヘルキャット」


 彼女の背中に声を掛ける。

 けれど彼女から返答は無く。

 代わりに、と不快な音が確かに耳に届いた。


「がああああっ!」


 より一層、大きな声が響いて。

 息絶え絶えとなった男の荒んだ呼吸音だけが聞こえる。

 ノクトはモノフォニーの肩に手を置く。


「聞こえなかったか? 止めろ、と言ったんだ」


 銀色の髪が流れる彼女の背中に向けて、諫めるように声を掛けた。

 依然として手を緩めようとしないモノフォニー。


「何故? 彼は度し難い犯罪者だよ。別に欲病を患ったわけでもなく、単なる利己的な目的で犯罪に手を染めたんだ」


 そう語る彼女の声は氷点下より冷え切っていて。


「私に取り押さえられたとき、彼はなんて言ったと思う? ――どうせ捕まるなら、あのガキを道連れに死ねば良かった……。そう言ったんだ」


 ぎり、と鎖が軋む。

 その音がモノフォニーの心の内部に存在する静かな怒りを象徴しているかのようで。

 ノクトは短く嘆息し、周囲の様子を伺った。

 人々の恐れを含んだ視線が一身にこちらへと注がれている。

 今一度、モノフォニーへ視線を戻す。


「最初に人命が最優先だと言ったはずだ。もうあの子は助け出した。これ以上、俺たちがここに留まる理由は無い」


 淡々と、ノクトは告げた。

 如何に犯罪者が利己的な人間であっても、こちらが一方的に力を誇示すれば、それは暴力となりかねない。

 現に、人々の視線は男よりもモノフォニーに向けられている。

 彼女は血の鎖を解き、静かにその場を離れた。

 男の体が力なく床に倒れ伏す。もう、彼の意識は無いようだった。


「後は警備員の人たちに任せよう」


 2人は博物館を後にした。





 外に出ると、待ち伏せていたかのように強い風が吹いた。

 空は既に太陽を失くし、闇に吞まれ始めている。


「――さて、動いたせいでお腹が空いたね。少し早いけどディナーに行こうか」


 完全に意識を切り替えた様子で言い放ち、率先して先を歩き出すモノフォニー。

 彼女のその軽やかな足取りは、先程まであった怒りの感情を博物館の中に置いてきたようで。


「どこか予約でもしてるのか?」


 ノクトは遅れぬように彼女の横に並ぶ。

 モノフォニーの中で折り合いが付いているのなら、こちらから告げることは何もない。それが監視役として取るべき態度だろう。


「おや、珍しく乗り気じゃないか。我が監視役のことだから、もう帰るなんて言い出すかと思っていたよ」

「どうせ理由を付けて俺を連れ回すつもりだろう。もう諦めてるよ」


 抵抗したところで無駄なエネルギーを消費するだけだ。どの道、監視役である自分は監視対象の彼女から離れることはできない。


「ほう、それは賢明な判断だね」


 モノフォニーは僅かに頬を緩ませて言った。


「何が可笑しい?」

「いや、上司と自由気ままな監視対象で板挟みになっている監視役が少し不憫だと思ってね」

「自覚があるなら自重してくれ…………」


 ノクトは呆れたように言葉を漏らす。

 それは心からの言葉だった。

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