巨乳で可愛い女神と異世界転移したけどどうにも思ったのと違う件

@morukaaa37

ファーストコンタクト


 


 真っ暗な暗闇の中、性別や年齢の混濁した人々が目の前で不敵に笑っている。いや、正確には人ではないのだろう。姿形は正しく人間そのものなのだが直感がそれを否定している。これがオーラというのだろうか。


 「お、初乗りおめでとう」


 「運がいいのぅ。ほれ、選ぶが良い」


 「へ?選ぶって何を?」


 開口一番、選べと言われる。反射的に聞き返してしまった。


 「なんとなく分かるじゃろ。わしらの中から好みの者を選べばよいのよ」


 「なにそれコンパ?」


 「神に対してコンパとはなんじゃ!!」


 「えー、ガチギレ」


 神話の神は人間より人間らしいというが、そういうことなのだろうか。とりあえず頭の中から爺の選択肢を消した。


 「ん?てか選んだらどうなるんだよ?まずここどこ?今から何すんの?」


 「質問が多いのぉ。細かいことは気にせず早よ選ばんかい」


 「細かいかなー、これ。こっちの世界じゃ犯罪レベルなんだけどなー、これ」


 「はー、うざいのー、もうわしでよいか?」


 「それは嫌だ」


 瞬間、爺の拳が俺の腹に炸裂した。


 「あははははっ、言われてやんの」


 「腹パン痛そー」


 「まあ、ハクは若い男に人気ないからねー」


 「お前は余裕そうだな」


 「まあ、私女だし」


 「わしの何がいけんのかのぉ。やはり胸じゃろうか」


 「「変な気だけは起こすなよ」」


 脳裏に胸だけ膨らんだ爺の姿が浮かんだ。

 うぅ、痛え。


 「もうやだ、お前以外なら誰でもいいから、、」


 「おい、それ一番傷つくからやめんかい」


 「じゃ、私でいいわね」


 「え、あ、はい」


 いつの間にか俺の腕に妖艶な女性がくっついていた。おー、何これ、悪くない。


 「あれ、おかしいのぉ。態度がおかしい」


 「やっぱ女って徳だよな、」


 「厚かましくても長所、控えめでも長所」


 「性別って概念作ったの俺らだろ」


 「それ言うなよ」


 腕に柔らかい感触がする。うーん、悪くない。この人となら生涯上手くやっていける気がする。白のベールから子供の顔まで思い浮かべれる。あれ、これやっぱコンパかな?


 「じゃ、選んだんで」


 「ふむぅ、まあ、仕方ないのぉ」


 「んじゃ、異世界行ってもらうから、ベルと仲良くね」


 「はい。……え?」


 ぱっと隣を振り向く。途中谷間を経由してベルという女神と目があう。めっちゃ美女。


 「そういうことよ。じゃ、よろしくね」


 「え、あ、はい」


 背景に花でも咲いているかの如く、漫画の1ページレベルの笑顔。めっちゃ可愛い。思わず頷くことしかできなかった。


 「おい、あいつ、さっきから"え、あ、はい"しか言ってねーぞ」


 「多分、女子と絡むことがなかったのだろうな」


 「可哀想にのぉ」


 小中高と生きてきたが、これ程の美女と話す機会など一度もなかった。緊張と興奮で異世界ぐらい行っちゃってもいいかなとか思ってしまう。うーん、悪くない。


 「あの、ちなみに帰る手立ては」


 「魔王倒せばいいよ」


 「俺、頑張りますね」


 「うん、威勢があることはいいことだと思うよ」


 「え、異性?」


 「いや、そういう意味じゃなくて」


 しかし、魔王とは異世界らしい。ということはチートもあるのだろうか。勇者になっちゃったりするのだろうか。ベルさんが聖女になっちゃったりするのだろうか。勇者と聖女でカップリングされちゃったりするのだろうか。


 「まあ、わしらも後で行くから」


 「え、なんで、来るな」


 思わず本音が漏れてしまう。


 「おい、やめんかその顔」


 キレている爺を尻目に、眼鏡をかけたインテリ系の男神が眼鏡を上げつつ言う。


 「何を想像しているかは知らんが、魔王はお前ら2人でなんとかできるものではない」


 「まあ、私たちが揃うぐらいだしね」


 ベルさんとは別の活発そうな女神もそれに追随してそう言う。なんか、雲行きが怪しくなってきた。


 「あのー、異世界やばかったりします?」


 「まだそこまで悲惨ではないぞ。場所によっては」


 「おい、やめろ倒置法」


 まずいな。少し怖くなってきた。異世界で死んだらどうなるのだろう。やはりそこで終わりなのだろうか。


 「ちなみに俺の力的なものは」


 「あー、勿論ある」


 「教えて下さい」


 「ではスキルオープンと言え」


 「スキルオープンっ!!」


 「別に叫べとは言ってないんだけどなぁ」


 叫ぶと目の前にゲームの表示画面のようなものが浮かんできた。


 

 個体名:伊織悠

 年齢:17歳

 種族:人族

 職業:なし

 称号:なし

 特性:なし

 固有スキル:なし

 保有スキル:なし

 肉体強度:貧弱

 契約:色欲の神の使徒

 加護:なし

 紋章:------

 

 果たして見る意味があったのだろうか。てか、契約はあるのに加護がないの怖いんですけど。


 苦笑いで谷間を経由し隣を見ると、視線に気づいたベルさんが微笑んでくる。やばい、可愛い、怖い、屈しちゃう。


 「ま、そういうことだ」


 「いや、何もないんですけど」


 「固有スキルもか」


 「はい」


 「まあ、、頑張れよ」


 「ふっ」


 「おい待て、どういうことだ」


 「そういうことだろ」


 「いや分かりますけど、え?」


 「まぁ、しゃーないって」


 「初見でハードモードとはやるのぉ、お主」


 「今その手の冗談きついかもしれない」


 やっぱやめようかな。チートがあればいけると思ったが無理かもしれない。


 「スキルがなくても私は貴方がいいわ」


 「俺、頑張りますね」


 「威勢があるのはいいことだと思うよ」


 「やっぱ胸じゃろうか」


 「ちょっと黙れ」


 ひしっと腕にかかる力が強くなる。胸の感触も強くなる。谷間越しにベルさんの綺麗な瞳が見えた。いやー、悪くない。やっぱ美女の胸だよ。


 「一応、異世界での努力次第でスキルを獲得することはできる」


 「私も着いたら協力するね」

 

 比較的まともそうな神様はそう言ってくれる。世界ってバランスが取れているだなと思いました。


 「じゃ、そろそろ時間かな」


 「次の使徒の準備をしなければのう」


 「じゃーな」


 まだ話していない神様もいたが、話している暇はないらしい。


 「それじゃ、行こうかしら」


 「行きましょう」


 「敬語じゃなくていいわ」


 「無理です」


 「もう……」


 ムッとしている表情すら可愛い。思わず、抱きしめそうになった。まあ、抱きしめられてるんですけど。えへへ


 「てか、ハク。準備って何のことだ」


 「それは秘密じゃ」


 最後にそんな会話を聞きながら、ろくに緊張感のないまま、俺とベルさんの体は他の神々の前から消えた。




 ───────


 

 

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