track.2 オルタナティブ・ガールズ
私の尊厳を無視して一方的に圧をかけてくる女性。
ド金髪のストレートヘアーは両サイドに反り込みを入れ、ピアスの付いた耳をさらしている。
見るからに怖い。
服もドが付く派手な深紅のドレス。
そのドレスの眩さと言ったら、記者がスキャンダルを起こしたタレントへ、容赦なく放つカメラのフラッシュのようなラメで飾られている。
後ろを振り替えれば、背中がザックリと開かれ小麦色の肌が丸見え。
どうみても水商売の人にしか見えない、この人がリーダー兼リードギターの【キル】
本名、
彼女のファンはキル姐さん、キル姐の愛称で慕っている。
今日は私が、このバンドへ入って初めてステージに立つ日。
リーダーのキル姐さんは前日まで「アンタは素のままでいいよ」と、言っていたのに、いざライブハウスへ来たら豹変、会場内で私を追いかけ回して、バンドの衣裳を着せようと躍起になった。
まぁ、あらかじめ知っていたら逃げていたと思うけど……。
私を引っ掴み、キル姐さんが怒鳴る。
「アタシらが売れる為だ! 嫌がるなら無理矢理、服を剥いで着せてやる!!」
「いやぁぁぁあああーっ!!?」
楽屋のドアを勢いよく開け、中へ入って来た新たな女性は、真っ青な顔をして聞く。
「ちょ、ちょっと!? 痴漢にでもあったような悲鳴が聞こえて来たけど、何やってんの?」
「こいつがバンドの衣裳を着ねぇって、ダダこねてんだよ」
「あー……まぁ、頑張って」
見捨てられた……。
私を助けてくれなかった、この人は、ドラムスの【ハゼロ】
本名、
青髪のツインテールに加え、衣装が奇抜で白いフレンチメイド服の上から、コバルトのライダースジャケットを着ている。
バンドでは嵐のようなスティックさばきを見せつけ、観客を魅了する。
それとは別に、ライブでは度数の高いお酒を吹いて火を着ける、過激なパフォーマンスで場を湧かせた狂人でもある。
そんな彼女、バンド活動がない日は就職活動をしながら資格の勉強に励む、かなりの真面目キャラだ。
三歳でドラムに触れるも十代の時は、地下アイドルとして活躍していたらしいけど、本人
その後ろで赤ちゃんが噴火したように大泣きしていて、ソファーに腰を下ろす母親が困り顔であやしていた。
「泣かないで~。大きな声がしたからビックリしちゃったね~?」
キル姐さんが母親へ、イラ立ちをぶつける。
「おい、ビッチ! 前にも言ったろ? ウチのバンドは託児所じゃねぇって?」
「保育園はどこも定員割れで入れないんだもん。大丈夫よ。年内には入れる所を見つけるから」
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