第35話

 水を上げるとぐんぐんと成長していくじゃがいもの苗。

 圧倒いう間に収穫時期になり、フジイチは茎を引っ張った。

 ズルルと連なり、出てくるじゃがいも達。その一番端の根に、手足のようなものが生えているじゃがいもが連れた。


「な、にこれ?」


 マンドレイクのような、イーリスのような魔物、イーイモだったその魔物の名前にクスリと笑い、しかし、すぐにゴウトに攻撃指示を出して、倒した。


「イーイモは良い芋。ふっ」


 他の人に聞かれれば、失笑間違い無しの親父ギャグを呟いた。


 同じように他の引き抜くと、イーイモがついてきたので、その度にゴウトに倒させた。

 取れたじゃがいもはかごの中に入れて置くだけで、納品になる。合計で50個くらい収穫出来た。

 土からじゃがいもを引き上げたせいで上半身が泥だらけになった。靴に泥よけ機能がついているのでその近くは汚れていないが、靴から遠くなるほど泥がついてしまう。泥汚れには時間制限があり、その制限を過ぎるとシミがついてしまうという仕様になっている。

 実はこの職業が不人気なのは、洋服にシミがつくというのがデメリットとしてあるからだ。


「うわぁ」


 フジイチは汚れを落とそうと、家の中から拠点に入った。

 湖の水を掬ってバシャバシャと顔を洗い、服についたものは脱いで、ゴシゴシと洗う。あっという間に、茶色の汚れは消えていった。時間経過内であれば、シミはつかない。代わりに水浸し状態になった。


 汚れを落として、さっき戦ったイーイモをバロンと名付けて放した。バロンが要求したのは、シルクハットだった。


(もしかして、男爵って名前にしたからか?)


 グラナーという異端児がいたお陰で、疑問に思えど要求したアイテムに驚くことはなかった。

 バロンはゴロゴロと転がって、湖の近くの土に埋まっていく。

 そこでフジイチは気づいたが、グローリーが埋めたであろうネモフィーラの花が咲いていた。その近くにも芽が出ていたので今後増えていくのだろうと予想した。


 フジイチはついでに拠点に来たのだからと、要求した物を皆に配っていく。

 まずはガルには枝を渡すと、くわえて家の近くの地面にぶっ刺さした。

 次は近くまで跳ねて寄ってきたグラナーにサングラスを渡すと、ヒレを広げて手のように動かして受け取った。サングラスを付けて湖の水面を飛び跳ねていった。

 ナギノミナに水の中に連れって行ってもらい、ジェリーには綺麗な石を渡す。ジェリーは大切そうに触手を伸ばして、受け取り、流れていく。

 ブルックには海藻を渡すと、ムシャムシャと食べ始めた。満足すると、トントンとスキップするように泳いでいった。

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