第34話

 フジイチが冒険者ギルドに立ち寄って、掲示板に近づくとウィンドウが開く。そこには、依頼がズラリ並んでいた。フジイチはタブをタップして自身が受注可能なFランクのものだけを表示させる。


(夕方になるまで、依頼をこなそうかと思ったけど、んー、これが良いかな)


 フジイチが受注したのは、花の採取だった。アブラットの森に咲いている花“紫煙のミモザ”、それを5本以上が成功条件だ。

 紫煙のミモザはアブラットの街で作られる煙草の原料の一つだ。特徴としては、紫色のタンポポの綿毛のような1センチほどの大きなの花で、地面に生えている。刺激を与えると少しの煙を出して、苦い臭いがする。


 依頼の詳細で書かれた特徴を頭に入れてフジイチは森に向かい、《鑑定》をしながら地面をくまなく探す。

 街から少しだけ離れたところで、足元から煙が出ている事に気づき、そっと足をどかすと紫の花があった。しかし、踏みつぶされた花では、納品出来ない。漂ってくる臭いも相まって、苦い顔をする。

 しかも、その近くにイーメエがいて戦闘になった。イーメエの突進を避けて、フジイチは、冷静にゴウトを召喚した。


(ゴウトなら家畜だし、誰に見られても問題無い)


 ゴウトに攻撃を指示して、その様子を見守った。ゴウトは左前足を地面でかき、頭を下げて、角を敵に向けた。ゴウトはその体勢のままイーメエに突進していく。ゴウトの首輪の鈴がチリンと鳴る。

 イーメエは突進されて、吹っ飛び、後ろにあった木に大きな音を立てながら衝突する。その時にHPが0になり、消滅した。フジイチのスキルでアイテムがドロップすることは無かったが、ゴウトのレベルは上がった。


 ゴウトのテンションが上がり、近づいてきた魔物達を次々に倒していく。その間にフジイチは花を摘んでいく。15本ほど摘み終わるとその頃には、太陽が傾き始めていた。


(そろそろ帰るか)


 フジイチは立ち上がり、体を伸ばす。それから、体を左右にひねって筋肉をほぐした。ゴウトを拠点に帰して自分は冒険者ギルドへと向かい納品する。

 成功報酬は、600ゴート。追加納品の花は1本につき、110ゴート。合計で1700ゴートを受け取った。


 農業ギルドの前に向かうと、すでにポラリスが入口で待っていた。フジイチはその姿を見て慌てて、駆け寄る。


「遅れてすみません!」

「いえいえ、さっき仕事が終わったばっかりですから」


 ポラリスの馬車に乗せてもらい、家に帰った。

 フジイチは家に到着すると急いで畑に水をやり始める。何故なら目に見えて、葉っぱがしおれ始めていたからだ。


「ジャガイモなのに、意外と水が必要になるんだな」


 フジイチは不思議そうに水が当たって元気になる葉っぱを見ていた。

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