第33話

 フジイチは朝が来るまで休憩し、ポラリスが来るまでの間は回復薬を作っていた。


「フジイチさぁん!迎えに来ました!!」


 外から声が聞こえて、家を出たフジイチはポラリスに挨拶をして、馬車に乗り込む。


 街につき、ポラリスは馬を厩舎に連れて行くため、フジイチとは街の入口で分かれた。帰りもポラリスと一緒に帰る為、時間を指定された。


「では夕方くらいに」

「はい、分かりました。ありがとうございます」


 フジイチはマップを見ながら歩く。綺麗な石は宝石店、枝は花屋、海藻とサングラスは雑貨屋に売っている事を確認して、最初は雑貨屋に向かう。


「いらっしゃいませぇ」


“蚤の市”は、外で飼うことが出来なかったので、仕方なしに店の中に入る。雑貨屋“蚤の市”の中はアイテムは山積みになっていた。


「何をお探しですかぁ。何でもありますよぉ」


 語尾が間延びにしている店員が、フジイチに尋ねた。フジイチは海藻とサングラスと答えた。

 頭がフラフラと動かして店員は落ち着きがなかった。


「なるほどぉ。分かりましたぁ。少々お待ちくださいぃ」


 ふらぁと動いて、山になっているアイテムをガサゴソと掘っては放り投げてを繰り返し、アイテムを探す。放り投げたアイテムでまた別の山を作った。


「あっ!ありましたよぉ」


 海藻とサングラスはそれぞれ1500ゴートだったが、割り引かれて、合計で2000ゴートになっていた。海藻は水の袋の中に入っていて、太い緑色のものや細く網目状の赤いものがゆらゆらと動いていた。サングラスは、かなりレンズが大きめのバタフライと呼ばれるものだった。


「あれ、いいんですか?」

「良いんですよぉ。その代わり他に何か欲しいものはありませんかぁ」


 そう聞かれて、フジイチは迷った。実はフジイチが確認した時、売り物になっているアイテムが多すぎて、全てを確認出来ていなかった為、この店に綺麗な石や枝が置いてある可能性はあった。しかし、ここで買うよりもちゃんとした店の方が品質は良いかもしれないと思う。


(でも、綺麗な石というか宝石は高いんだよなぁ)


 フジイチは綺麗な石を要求されて、最初に思いついたのが宝石だったので、宝石店に行くつもりだったが、思い切って、フジイチは綺麗な石と枝があるか聞いてみた。


「綺麗な石と枝ですかぁ。ありますよぉ。ちょっと待っていてくださいねぇ」


 そう言って店員は、また山を掘り返して探し始めた。

 数分して綺麗な石と枝を持ってきた。それぞれ、50ゴートと1200ゴートだった。綺麗な石は、石に生えている水晶。枝は蕾をつけているものだった。


「えっと、割引して全部3050ゴートでいかがですかぁ」

「…それじゃあ、それでお願いします」


 フジイチは3050ゴートを渡し、アイテムを受け取った。


「ところで、なんでそんなに安くしてくれるんですか?」


 問いかけると、店員は苦笑交じりに答えた。


「何故か、来ても店に入ると逃げていくんですよねぇ。だから、買ってくれる人には安くしているんですよぉ」

「そうだったんですね」

「そうなんですよぉ。だからまた来てくださいね」

「分かりました」


「ありがとうございましたぁ」と店員は、フジイチを見送る。

 フジイチは少し行った先で振り返り、あのごちゃごちゃとしたゴミの山のような感じが逃げていく原因だろうな、と納得した。

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