第31話
フジイチはクヌムという名前に聞き覚えがあった。
(クヌムは確か、エジプト辺りの川の神の名前じゃなかったっけ?)
未熟な川の神、ということでクヌム(幼生)の名前をブルックに決めた。ブルックは小川という意味がある。
ブルックが要求したアイテムは、海藻だった。
拠点に解放されたブルックは、走って水の中に飛び込む。フジイチもそれを見て、ナギノミナの背に乗せてもらい、あとを追いかけてみた。
水の中でブルックは、水の抵抗もなく、まるで地面をかけるように走っていく。それが緩やかな流れになった。作られた流れに乗って、クラクラゲのジェリーが流れる。
ライトの魔法を使って少しだけ辺りを照らすと、光がジェリーの体に乱反射して、まるでミラーボールのように輝いた。
(まぶしっ)
その輝きにすぐに魔法を使うのを止めたが、まだ目の奥がチカチカしていた為、フジイチはナギノミナに陸に上がるように指示する。元に戻るまで目を瞑って地面に座る。目が治る間、何もする事が無く適当に魔法を使う。
ようやく視界が元に戻り、フジイチは立ち上がり、そろそろ畑の方にも行こうと家に向かう。
家の隣にある納屋から鍬を取り出して、畑に向かった。鍬を振り下ろして、耕していく。ザックザックと掘り返して、土を混ぜつつも畝を作っていく。
畝を作り終わったら、今度は肥料を撒いていく。この肥料は、ディッパーに言えば、いつでも貰えるものだ。
その後は、ジャガイモの種芋を植えていく。フジイチが種芋を鑑定すると、『成長が早い代わりに水分と肥料を多く必要とする』と表示される。試しにズブッと、土の中に植えると、すぐに芽が伸びて葉っぱが生えた。
伸びてきた葉っぱをもう一度鑑定すると、水分メーター、肥料メーター、温度メーターと3種類のメーターが表示された。メーターには色が付けられていて、赤色は枯れる可能性があり、緑は適正という目安になっていた。
(今は水が足りないから水を与えれば良いんだな?)
井戸から水を組んでじょうろに注ぐ。満杯になったじょうろを持って、ジャガイモの苗の所まで歩いた。あまりにも多くの水を入れたせいで、歩くたびにちゃぷちゃぷと水が零れて、跡を作った。
葉っぱにシャーっと、じょうろから流れ出た水を与える。フジイチはメーターを見ながら、水の加減をする。メーターのバーが緑色まで移動すると、葉っぱが一回り大きくなった。
あとの2つのメーターは適正値だったので、この苗は置いておき、フジイチは他にも種芋を植えていく。
そうして、同じように水を与えて、適正値にしていった。
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