第30話

 レイミャーコとシトリはフジイチを守りながら、山のように出てくるマンドレイクを切って、倒していく。フジイチは、なるべく自分が死なないようにヒールを掛けつつも、避けられる分は避けていく。

 マンドレイクは悲鳴を上げながら、ひたすら突進と毒の唾を吐いてくる。前線の二人はレベル差があるので、気絶には至らないが攻撃が何回かキャンセルされてしまう。フジイチが気絶するたびに、二人のどちらかがフォローに回る。それを繰り返して、マンドレイクの波が引いていき、3人は一息ついた。


「流石に、この量だったらドロップもんだね」

「そうね」


 マンドレイクがドロップするアイテムは、ネモフィーラの種とレアアイテムのマンドレイクの樹液だった。100匹以上いてようやく、3人はそれぞれ種2つと樹液1つを獲得出来た。


「今日はこの辺にして帰りましょう」


 シトリの一言で、ラプンディの滝を後にし、馬車でフジイチの家があるドラアドの村に向かう。


「それでは俺は馬車を返してきますね。レイミャーコ様、それではまたお会いしましょう。フジイチ君、またね」


 シトリはそれぞれに手を振って分かれる。レイミャーコも、それに釣られて手を振るが我に帰って、すぐさま手を下げてフンと顔を背けた。その分かりやすい態度にフジイチは苦笑しながら、シトリに手を振った。


「まぁ、私も帰るわ」

「うん、じゃあね」

「何かあれば、連絡して。すぐに向かうから」

「りょ」


 レイミャーコとも分かれたフジイチは家に戻り、拠点に向かう。

 拠点で先ほど倒したマンドレイクを放した。放されたマンドレイクは、蕾も何もない太い根に顔があった。そのマンドレイクをグローリーと名付けた。

 そして、丁度よくグローリーが欲したアイテムは、花の種だったので、フジイチはアイテムボックスからネモフィーラの種を渡した。

 グローリーは種を両手で持って、湖の近くに向かった。茶色の手で一生懸命にその種を土に埋め、自身もその隣に潜る。葉っぱさえもないグローリーは、土に埋もれてどこにいるかさえも分からなくなった。


 フジイチはその後、ダンジョンを確認すると、


『ダンジョン内で突然変異種が誕生しました。拠点に移動させますか?移動した場合、その魔物の要求が満たされるまでは、ダンジョン内から出現しません。移動しない場合、ダンジョンで繁殖が始まりますが、全て倒された場合、絶滅します』


 と表示された。フジイチは絶滅するくらいならと、移動を選択する。

 ダンジョンから移動された魔物は、イーメエ(山羊)の頬に鱗が生えている。フジイチが鑑定すると、クヌム(幼生)と表示された。

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