第29話
結局フジイチは決めに決めれず、シトリのオススメした場所に向かうことになった。
一度アブラットの街に向かい馬車を借りて、途中、休憩を挟みながら、辿り着いた場所は、フジイチが見上げるほど滝がある場所だった。
滝が落ちて、水しぶきが飛び、涼しさを運ぶ。滝が落ちていく場所には、大きな虹が架かっていて、そこを小さな花に手足が着いた魔物が滑り落ちて、滝つぼに飛び込む。
滝つぼの周りには、大量の青い花が咲いていた。そして、滝つぼには人魚が泳いでいた。
「綺麗…」
「そうでしょ?最近、見つけたんです。まだクランの仲間にも教えてないんですよ」
レイミャーコがうっとりと呟いた言葉に、シトリはクスリと笑った。
「ラプンディの滝と呼ばれている場所なんです」
シトリの後ろについていくフジイチ達。近寄ってきた人影に気づいた人魚達は一目散に逃げていく。
「あれ、逃げちゃいましたね」
「えぇ…」
残念そうなレイミャーコとシトリ。フジイチは滝つぼの周りの花畑に、キラキラと反射している鱗が落ちていたことに気が付き拾った。鱗は半透明の紫色をしていた。
「泳いでみませんか?」
「でも、私、スキル持ってないから…」
「大丈夫、私がいますから」
シトリはレイミャーコの手を引いて、湖の中に入っていく。フジイチはそんな二人を横目に、花を鑑定していた。
花はネモフィーラの花と表示された。その中に手足がある花の魔物、マンドレイクが混じっている。
フジイチは、思わず小さな声で「ファイア」と唱える。マンドレイクに火がついて、叫び始めた。1匹が叫ぶと、周りも共鳴して叫ぶ。
「「「ギャアーーーー!!!」」」
その悲鳴にフジイチは耳を塞いだ。
マンドレイクの悲鳴に気づいたレイミャーコ達は急いで、湖から上がってフジイチに駆け寄る。
「アンタ、何してんの!」
「うぅ…」
フジイチは耳鳴りがひどくフラフラして、レイミャーコの言葉など聞こえていない。レイミャーコがパシッと頭を叩いて、正気に戻し、頭にHP回復薬(上質)を振りかける。
頭を振って水気を飛ばすフジイチに、もう一度同じことを言った。
「ビックリしたー」
「アンタ、何してんの!」
「マンドレイクに火を付けたらこうなった」
「そんなの当たり前じゃないの!火を付けたら叫ぶ、だから、マンドレイクは水系で倒すのよ!」
「えぇ?知らんし…。先に教えてくれたって良いじゃん」
「はぁ!?」
二人の言い合いに、シトリが間に入った。
「ハハハ。まぁまぁ、落ち着いてください。レイミャーコ様、初心者ですし、多めに見てあげてください。フジイチ君、マンドレイクで火遊びはダメだよ。次は止めてね」
二人は不満げに頷いた。
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