第28話
レイミャーコは、またこの間と違った装備をしていた。ふわりと柔らかな白いワンピースと麦わら帽子、肌色のタイツ、白い低いヒール。赤いマニキュアに塗れている爪が鋭くとがっていた。
「どう?似合う?」
クルリと回り、スカートに空気が入って、スカートの端が持ち上がる。正面に戻ると、顔の横に両手を持って行き、指を折って爪を見せる。
「まぁ良いんじゃない?」
「…乗り悪いわ」
フジイチのテンションの悪さに、ため息をつく。それから、フジイチの姿を上から下まで舐めるように見る。
「本当に農家になったのね。似合うじゃない」
そのセリフには呆れと共に、バカにしている感じが含まれていたが、フジイチが気にしている様子はない。
「まぁね、それで今日は何の用?」
「あ、これ、今月の分ね」
そう言って渡されたのが、1万ゴートだ。フジイチはもう1ヶ月経つのかと、時間の速さに驚く。
「で、どっか一緒に行く?」
そう提案されて、フジイチは少し考えてから頷く。
「これこれは麗しきレイミャーコ様。お久しぶりです」
急に声が聞こえて、フジイチの体が驚きで跳ねる。レイミャーコはスキルで察知していたこともあり、驚くことは無かった。物影から姿を現したのはシトリだった。
シトリはレイミャーコに駆け寄って、片足をついて座る。自分の右手でレイミャーコの左手を掬い、手の甲にキスをした。
「私もどうかお伴させてください」
まるで、騎士のような雰囲気にフジイチは怪訝な表情を、レイミャーコは気持ち悪いと感じている事を顔に出していた。
「別に良いけど、邪魔はしないでよ」
「勿論です」
フジイチは自分が知っている彼とは違いに疑問を持ち、レイミャーコにチャットを送る。
『シトリさんっていつもこんな感じ?』
『…うん、きもいよね。でも、まぁ有能なのは変わりないから』
レイミャーコが押され気味な様子に、フジイチは珍しく思った。
(嫌味爆弾しないところを見るに、あんまり嫌がってないのかも)
フジイチはレイミャーコを顔を覗き込み、これは馬に蹴られるなと感じ、あまり余計な事はしないで置こうと心に決めた。
「で、どこに行くおつもりだったんですか?」
「それがまだ決まって無いのよ」
「なるほど、では、景色の良い場所でもどうでしょう?」
「あー」
レイミャーコはチラリとフジイチを見て伺う。シトリの目には彼女しか映っておらず、フジイチの事など眼中に無い。
「二人で行ってくれば?」
フジイチが気を使えば、レイミャーコは「はぁ゛?」とどすの聞いた声を出した。しかし、すぐに咳払いして、無かったことにする。
「あんたの為に来たのにそれは無いでしょ」
「えぇ?」
「そうですね。さぁ、フジイチ君、何処に行く?」
「えぇ?」
二人に迫られて、戸惑うフジイチだった。
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