第24話

 休憩を挟んでからログインすると、ゲームでは朝になっていた。

 部屋を出ると、食事を用意していたディッパーと会った。


「おはよう」

「おはようございます」


 ディッパーが用意した朝食は、コカトリスの卵とクレジモグラのベーコンのベーコンエッグだった。テーブルの真ん中には籠の中に切られてあるパンがある。パンは黒小麦の食パンのようなパンドミで、しっかりとしているが柔らかい黒色のパンだ。


「何か手伝いますか?」

「いや、大丈夫だ。座っていてくれ」


 そう言われて、フジイチは少し居心地悪く椅子に座った。

 テーブルにベーコンエッグが乗った皿をディッパーが並べ、コップも置かれる。ガラスのピッチャーに入ったレモン水が、涼し気な音共にコップに注がれる。


「山クジラに感謝を」

「感謝を」


 2回目の今日は、フジイチは戸惑いなくディッパーの後に祈る。それから、二人は朝食を食べ始めた。

 ポラリスは既に、ギルドの方に向かっていて、フジイチと顔を合わせることは無かった。


 朝食が終わり、二人は外に出た。すでに畑は、ディッパーが全て耕したので、昨日とは別の作業を行う。


「今日は、肥料を撒いてもらう」

「分かりました」


 木の皮で編んだ袋の中には大量の堆肥が入っている。少しカビのような臭いがフジイチの鼻に辿り着く。

 フジイチはその肥料の入った袋をアイテムボックスにしまい、一つだけ封を切って、ディッパーに倣って均等に畝に撒いていく。


 フジイチがたまたま土を《鑑定》すると、上質な土と表示され、あとで分けてもらおうかなと考えながら、作業していく。


 フジイチが1つを空にする時には、ディッパーは3つ以上、袋を消費していた。そして、フジイチが1つの畝が終わるころには、ディッパーはその他の全てを終わらせていた。

 速度は遅いが丁寧に作業をしている真面目なフジイチを見て、ディッパーは大丈夫そうだと感じる。


「フジイチ君、本当に農家になりたいか?」

「はい」


 ディッパーは念を押して尋ねる。それにはっきりと頷くフジイチ。


「それじゃあ、これを」


 そう言って、ズボンのポケットから差し出したのは、転職紙という紙に農家と書かれているものだった。


「ここの欄に名前を記入すれば、君は農家だ」


 受け取ったフジイチは言われた通りに記入をすると、紙が端から燃えて消えた。その炎は熱さもダメージも入らない演出だった。


「これから、農家同士よろしく頼む」

「はい、お願いします」

「ポラリスが帰ってきた時に、土地の話でもしよう」

「分かりました」


 ディッパーから差し出された手をしっかりとフジイチは握り返した。

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