第22話
キャキャっと嬉しそうにレイミャーコの事を聞き、フジイチが適当に答えていく。好きな食べ物や好きなタイプ、最近の出来事まで。シトリはその話しを聞き耳を立てる。
(こんなにレイミャーコの事を知ってるなんて、彼はもしかしたら、彼女のリア友なのかもしれないな。…彼に近づいて正解だったな)
「あの、もうそろそろ、本題に…」
「あ、そうですね!すみません!!すみません!!」
フジイチの言葉にハッとしたポラリスは、頭を何度も下げて謝る。
「いえいえ、大丈夫ですから、頭を上げてください」
「本当にすみませんでした。えっと、農家に興味があるとの事でしたね」
「はい」
「わかりました」
フジイチが頷くと、ポラリスは説明を始めた。
「農家になる前にまず最初に、農業体験をしてもらいます。何も知らずになって、不満を言われてもこちらとしても困りますから。その後に農家に転職してもらってから、農業ギルドに加入出来ます。加入後は無償の土地と家の提供をします。その代わり、農作物の納品をお願いします。報酬はその日の卸売価格で支払いが変動しますので、ご了承下さい」
「はい、分かりました」
「では、場所を移動しましょう」
ポラリスと一緒にギルドの外へ出た。ポラリスが操る馬車に乗って、アブラットの街を出た。馬車を牽く馬は、シマシマ模様の馬、マダラホースという魔物だった。
到着した場所は、見渡す限りに畑が広がっていた。
一軒の家の前に馬車を止まらせ、ポラリスが馬車から降りる。
「兄さん!体験の人が来たよ!」
家の前に広がる畑の真ん中で、鍬を持って土を耕している男性に声を掛けた。ポラリスに気が着いた男性は手を上げて返事をした。
「なんだ、珍しいな!」
「お願いできるぅ!?」
「おぉ!まかせておけ!」
二人には距離があったので、声を大きくして会話する。
馬車から降りてきたフジイチにポラリスは示すように男性を指した。
「フジイチさん、彼が体験を補佐してくれる人です。彼の元に行ってください」
「はい、分かりました」
フジイチは畑の畝を踏まないように気をつけながら歩いていく。
上半身裸で、首元にタオルが掛かっている男性は、肌が焼けていて健康的だった。腹筋は割れて、柔らかそうな筋肉を付けて、フジイチよりも1回り以上、体が大きい。
「君が農業体験する子だな?俺はディッパー。ポラリスの兄だ。よろしく頼む」
「俺は、フジイチと言います。よろしくお願いします」
ディッパーとフジイチは握手をした。
「じゃあ、今日はこれで畑を耕してもらおうか」
ディッパーに渡された鍬を持ち、「ここからあっちまで」と指示された場所を土を耕し始めた。
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