第21話

 その後、リアルでの時間がもう夜遅かったので、寝た次の日にフジイチは案内してもらえる事になった。


 シトリに案内してもらった農業ギルドは、ガランとしていて、誰一人も居なかった。


「あれ?もしかして、ここもう閉鎖しちゃったのかな?」

「え゛!?」


 仰天して声を上げ、シトリの顔を見る。フジイチのその声に気づいた、麦わら帽子を被ってサロペットを着ているギルド員が奥から出てきた。顔は可愛らしいが、豪快にピッチフォークを肩で担いでいる。


「何か御用ですか!!!?」


 そのギルド員の声は可憐な見た目と反対で声が大きく、フジイチは耳鳴りに襲われ、よろける。シトリは、《威嚇耐性》のスキルがある為、少しうるさいなと思うだけだった。


「こんにちは、お嬢さん」

「あら、あなたデモリッシュの人じゃないですか!!!?」

「そうだけど、その《威嚇》止めてくれないかな?」


 ギルド員はそうですねと、頷くと声を抑えたが彼女の声には、怒りが混ざっていた。それでも、耳鳴りが止まりフジイチはホッと息を吐いた。


「それでそんな人が何用ですか?」

「そんなに警戒しないで。この子は、俺達のギルドとは関係無い子だから。この子が、農家に興味あるっていうから、連れてきたんだよね。君達も新しい人材は手が欲しいでしょ?」

「…このギルドに、媚びって売っても意味ないですからね?」


 ギルド員はジトリとシトリを睨んで、ピッチフォークの先を向けた。あははと、空笑いするシトリ。


「そんなの分かってるから安心しなよ」

「それなら良いですけど」


 ギルド員は切っ先を下に降ろし、鋭い目線も緩めた。


「それでは、あなたの名前を聞かせてくれますか?」

「フジイチです」

「私は、このギルドで唯一のギルド員、ポラリスです。どうぞよろしくお願いします」

「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします」


 ギルド員、ポラリスが頭を深々を下げ、フジイチもそれに習い、頭を下げる。


「農家に興味があるとの事ですが、冒険者ギルドカードを見せて貰っても良いですか?」

「あ、はい」


 ポラリスに銀色のカードを渡した。一通り確認したあと、フジイチに返した。


「クランはユニティなんですね」

「はい、レイミャーコに誘われて、加入しているんです」


 レイミャーコと聞き、ポラリスは目を輝かせた。


「あのレイミャーコさんですか!?」


 グイっと距離を詰められて、フジイチは後ずさりする。


「多分、そうだと思いますけど…」


 その言葉にポラリスがキャーっと黄色い悲鳴を上げた。

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