第20話

 胸びれで歩き浜に上がってくるホウボトビ、空中をプカプカ浮かんできたクラクラゲ、海から飛び出てきた白い鳥のナキカモメ。


「ウィングカッターとか出来る?」

「出来ません」

「そうなんだ。じゃあ、基礎魔法のレベルはどのくらい?」

「レベル10です」

「カンストしてるなら、大丈夫かな。得意の魔法で攻撃していっていいよ」


 フジイチはコクリと頷いて、ファイアの魔法を使う。ゴウと炎の玉が、グルグルと回って圧縮されていた。


(ファイアか、不利属性だけどまぁ、この威力なら大丈夫そうかな)


 シトリはフジイチの魔法を確認して、呼んだ魔物に倒せるかどうかは別として、対抗出来そうだと安心する。

 瓶底メガネが複数の対象を表示して、炎が分裂後、魔物に当たる。しかし、炎の跡を付けるだけで、ダメージはそんなに入っていないが、ヘイトをフジイチに向ける。

 その魔物が攻撃に入る前に、シトリが剣を振って、倒していく。倒した魔物のアイテムが、フジイチのスキルによって消えた。


 フジイチがどんどん攻撃して、シトリが倒して効率良く経験値を貯めていき、そうして数を倒せば、いくつかのアイテムがボックスに入る。

 ホウボトビからはホウボトビの魚肉。クラクラゲからは、クラクラゲの羽衣。ナキカモメからは、ナキカモメの鳥肉が手に入った。


 フジイチがレベルが上がって転職出来るようになったところで、二人は休憩するためにログアウトして、もう一度、ログインする。

 先にログインしたシトリが焚火を作って、フジイチはシトリから少し距離を取った場所に座る。


「魚肉、鳥肉は料理に使うと良いよ。羽衣は売ってお金にした方が良いかも」


 手に入れたアイテムのアドバイスを聞きながらも、フジイチは全部お金にしようかなと考えていた。


「で、転職は何にするつもり?」

「錬金術師になって、薬を売ろうかと」

「あー錬金術師ね。金掛かるけど大丈夫そう?」

「え!お金掛かるんですか?」


 初めて耳にした言葉に目を丸くする。


「そうだよ。レシピは高いからね。しかも、君のスキルで素材を集めるのは大変だから素材を買うこと方が多いから、そこからも金が消えていくから、かなりお金が必要じゃないかな?そう考えるともしかしたら、コストが高くなって元取れないかもね」

「そうだったんですね」


 シトリの言葉に、フジイチは錬金術師になるか迷う。


(錬金術師と決めてたけど、別の職も考えた方が良いかな)


「何か、お金になるような職業とかありますか?」

「まぁ、冒険者のランク上げて、依頼とか受ければお金になるから、戦闘系のほうが良いかもね。生産系はやっぱ材料費で掛かるから難しいかなぁ」

「なるほど」

「あぁ、でも、生産系でお金が掛からないと言えば、農家があるなぁ。この世界の村とか魔物に潰されて、よく農産物不足になったりするし、プレイヤー向けにNPCが土地を無料同然で貸してたりするから、元手無くても出来るよ。でも、農家は基本的にプレイヤーは選ばないかな」

「どうしてですか?」


 フジイチの言葉に、シトリはニコリと笑った。


「弱いから。それに農家が作れる作物は、魔物を倒してドロップで手に入るんだよ。だから、そっち方が簡単だし、作っても必要なのはNPCだけだから二束三文なんだよね。作物の世話もしなくちゃいけないし、レベル上げが難しくなる、とかあるから、ぶっちゃけ、メリットが無い」


 シトリはツラツラと農家の話をしていく。


「農業ギルドもNPCが作ってくれたけど、人気無くてガラガラだしね。プレイヤー農家の人なんてレアなんじゃないかな」


 レアと聞いて、フジイチは心を決める。デメリットとか、そんなのは考慮しない。フジイチにとってレアというものは、聞くだけで心踊るようなロマンの塊なのだから。


「俺、農家になりたいです。どうやったらなれますか?」

「え?」


 シトリは焚火を見ていた目を動かして、フジイチを見た。フジイチの目はキラキラとしていて、目を疑い、コイツはバカかもしれないと失礼な事を思い浮かんだ。


レベル   20

HP(体力) 250

MP(魔力) 306

STR(力)   48

VIT(生命力) 77

INT(知力) 60

DEX(器用さ) 62

AGI(素早さ) 53

MND(精神力)93

LUK(幸運) 1

EXP(経験値) 0/318

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