第15話

 拠点の中で魔法を使っていてもフジイチ自身の経験値にはならないので、魔物を倒す必要がある。


 フジイチは周りのハブハーブを気にしながら、イーリスやイーメイ、イーメエを倒していく。

 拠点の魔物は必要なスキルが無い為、連れてこられないが、代わりに拠点の魔物のステータスが少しだけ上乗せされたり、魔法の強化されているので、最初に倒す時した時よりも簡単に倒せる。しかも、最初の時はレイミャーコが《挑発》で夥しい数を呼び寄せられていたので、それと比べてしまうと、盾は無いがフジイチの心に余裕が出来ていた。


 距離を保って、ウィングの魔法で首を狩っていく。フジイチのステータスは拠点の魔物のステータス分も多少乗せられているので、確殺出来ている。

 残念ながら、ドロップアイテムは《貯蓄(運)》のせいで消えていくが、当初の目的のスキルが取得出来るようになった。

 ステータスを開いて、スキルを取得しようとしたフジイチに話しかける者がいた。


「初めまして、君が新しいユニティのメンバーだよね?」


 ニコニコと笑いかける男。銀色の鎧でかっちりと着ていて、金髪のウルフカット、キリッとした目が印象的だ。


「あ、どうも」

「俺の名前は、シトリ。君は、えっと…フジイチ君だよね?」


 フジイチは、誰から俺の事を教えてもらったのか、疑問に思った。


(レイミャーコは他の人に俺の事を喋るわけ無いし、クランの人でも俺に声を掛けないようにレイミャーコが言ってあるだろうし)


「もしかして、レイミャーコから俺の事聞きました?」

「いや、彼女には聞いていないけど、たまたま近くにいた時に君の名前が聞こえたんだよ」


 ひっかけとしてレイミャーコを話に出したが、シトリが引っかからなかった。


「そうなんですか。それで、俺に何かようですか?」


 納得はしてないが、とりあえずフジイチは会話を続ける事にした。


「いや、ここで何しているのかなって」

「経験値稼いでます」

「そうなんだ。でも、もっと先にいけば、もっと稼げるけど?俺が一緒に行こうか?」

「俺は、マイペースに進めるので大丈夫です」


 フジイチは誘いを断ったが、シトリから笑みが深くなり、嫌な気配がした。フジイチは後ろに下がって距離を取った。しかし、その距離はあっという間に詰められる。


「まぁ、そう言わず」


 シトリはフジイチの体を持ち上げて、肩に担いだ。そして、そのまま走りだした。風を切るような速さと頭が下に向いている為、フジイチは気分が悪くなる。抵抗しようとするが、フジイチのレベルでは敵わない。


「はなしてぇ…」


 フジイチの小さな声はシトリには届かなかった。

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