第14話

 休憩を挟んでからもう一度ログインして、拠点に転移すると、現れたフジイチに魔物達は近寄ってきた。

 最初は、ナギノミナに小瓶に入った水を渡す。フジイチが水をナギノミナに手渡そうとして、違和感を感じ、手を放すと小瓶はふわふわと浮いた。


『ナギノミナを浄化された水で強化しますか?』


 そう表示されて、フジイチは水がナギノミナの強化になるのかと理解して、はいを選択した。

 フワフワと浮いていた小瓶のコルクの蓋がポンと取れて、中の水が丸い水の玉になり、ナギノミナの首の周りを回るように連なって出てくる。水の玉が細かく分かれ2列になって、1列は口の近く、もう1列は胴体の背の方に向かう。

 口元に近づいた水は、1本の縄となり、1周だけ巻き付いて余りの部分は首の後ろで垂れ手綱になった。

 胴の方に移動した水は集まり、鞍になって背中に装着した。

 空になった小瓶が、地面に転がり、フジイチはアイテムボックスにしまった。


『ダンジョンにダンジョンボスとして、出現出来るようになりました』


 と、表示された後に、ダンジョンはスキル《ダンジョン作成》によって作成出来ますと、注釈が書かれていたので、フジイチはスキルのポイントを確認する。

《ダンジョン作成》の取得ポイントは15。1レベル上がると、貰えるポイントは5なので、3レベル上がらないと取得出来ない。


 次は、ジョナを強化しようとアイテムボックスからリンコの苗木を取り出した。苗木も手を放すとプカプカと浮いて、強化が表示されてフジイチは許可する。

 苗木はジョナがいた近くにズブッと埋まり、見る見る内に大きくなる。ナギノミナの体高よりも大きく、倍以上になる。

 大きくなった木にジョナがゴロゴロと転がりながら、木に登っていき、果梗の部分で1つの枝にぶら下がり、ジョナも同じようにダンジョンに出現出来るようになった。


 最後は、レミィとゴウトの両方に首輪を渡す。首輪は浮いて、2匹の首に巻き付いた。レミィが赤色、ゴウトは青色の首輪になった。

 あっさりとした映像だったが、強化されたことには変わりなく、ダンジョンに出現出来るようになった。

 レミィとゴウトは強化されたことに満足して、フジイチから離れていく。


 それを見ながらフジイチがナギノミナの背中を撫でていると、ナギノミナはフジイチの体に頭を擦りつける。それから膝を折って、体をフジイチに近づけた。


「乗ってもいいのか?」


 フジイチの言葉にナギノミナは頷く。

 フジイチは水の手綱を持ちながら背に乗ると、ナギノミナは走りだした。


 湖の上を走ってから、斜めに空を駆けあがり、ある程度の高さになると今度は、垂直に下へと走る。そのジェットコースターのような動きにフジイチは悲鳴を上げた。


「ぃやぁああああ!!!」


 落ちることは無く安定していたが、フジイチの心臓が高鳴り破裂しそうだった。その恐怖で、ぎゅっとナギノミナの胴体を足で力強く挟み込む。

 ナギノミナはフジイチの悲鳴を聞きながら、ドボンと、湖の中に入っていく。そこからはフジイチが想像したような美しい光景だった。

 ナギノミナはゆったりと足を動かして、水の中を進む。ナギノミナと共にいるお陰で、フジイチは呼吸が出来ている。


 太陽が差し込んだ光が、一種のカーテンとなって揺らめき、青く輝く水。フジイチはこの光景から、更に足りないものを思い浮かべた。


(サンゴ、魚、は海藻、岩やテトラポット。それから、地上にはもっと木が欲しいし、もっと魔物が増やそう。あとはそう、家も欲しい)


 あれやこれやと、欲しいものが増えていった。

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