第8話

 このゲームは仮想内体感時間、感覚同調というプログラムを採用している為、ゲーム内での時間の体感が24時間経っているように感じられるのだ。その為、プレイヤーは現実世界の2時間ごとに休憩を挟まなくては行けない。それ以上の時間になると、強制ログアウトさせられることになっている。


 フジイチは、コップにオレンジジュースを入れながら、スマホのトークアプリでレイミャーコに次のログインの時間を尋ねた。

 ピコンと軽快な音が鳴って、返事がきた。


『30分後』

『おk』


 フジイチは言葉と共に親指を立てているスタンプで答えた。


 30分後、フジイチは約束通りログインする。ふぁと欠伸をして、伸びをするフジイチ。

 フジイチは床に布団がひいてあるが、レイミャーコはベッドに寝ている。


「おはよう」

「おはよ」


 挨拶するレイミャーコの頭は寝癖で爆発していた。

 レイミャーコが仲居に朝食を用意して貰っている間に、フジイチはもう一度露天風呂に入る。


 朝食はお吸い物と雪サケの塩焼き、白米、飲み物は緑茶だった。

 お風呂から出たフジイチは美味しいと舌つづみを打つ。雪サケは脂が乗っていて、お吸い物には豆腐と影シイタケ、かまぼこ、蜜三つ葉が入っていた。


 食べ終わり、レイミャーコが宿泊代を支払い宿を出た。森に入り、今度はハーブ草を取りに行く。


「HP回復薬に使われるハーブ草は、ハーブハブという蛇に生えているのよ」

「ヘビ…」


 フジイチはげんなりと眉を下げ、肩も下げる。


「アンタ苦手そうね…。安心しなさい、ハーブハブは攻撃しない限り、此方を攻撃しないから」

「もし攻撃したら?」

「ここら一帯のハーブハブから殺されるまで噛みつかれるから、ウザいよ。デスペナも厄介だしね」

「どんなデスペナになるの?」


 あー、とレイミャーコが声を出して思い出しながら、言葉にする。


「ランダムで装備の修理不可の損壊。所持金の半分。現実の1日に相当するログイン時間のステータスの半減」

「辛そう…」

「当たり前に辛い、辛い…」


 レイミャーコがその時の事を思い出して、げんなりする。それを見て想像したフジイチも更に肩を落とす。


「なるべく死なないようにしといたほうが良いよ。マジで」

「そうだな」


 レイミャーコは話の間もしっかりと《索敵》していた。

 ハーブハブを発見すると、《ボディタッチ》で頭を鷲掴みにした。フジイチから見ると、レイミャーコが急に草むらに手を突っ込んだように見えて、目を丸くしてビックリする。

 ハーブハブは暴れせず、だらんと垂れていた。ハーブハブの背中にはびっしりと草が生えていた。掴んだ蛇を目の前に出されて、フジイチは顔を顰める。


「はい、傷付けないようにハーブを摘んで」


 恐る恐る言われたようにフジイチは、なるべく丁寧に爪と爪で挟んで草を切って摘んでいく。

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