第5話

 スキルを放った後は、レイミャーコはいつもの顔に戻す。


「さて、魔法使いの戦いは魔法で戦うんだけど、流石に注意しないといけないこと分かるわよね?」

「タゲ取らないことでしょ?」

「そうそう。流石に分かるわよね。でも、初心者がそんなこと出来ると思わないのから今は考えなくて良いよ。私が代わりにタゲ取るし盾になるから。で、魔法は何が使える?」


 ふぅん、そういうものなのかとフジイチは魔法を確認する。


「ファイア、ウォーター、ライトの3つ」

「あれ、《魔法基礎》取らなかったの?」

「魔法基礎?」

「…スキルって15ポイントあったのに、何取ったの?」

「《貯蓄(運)》」

「クソスキルじゃん!!」


 レイミャーコは叫んだ。その声の大きさに、敵とフジイチはビクッと体を震わせた。敵はその恐怖のまま逃げてしまった。

 それを気にもせず、まるで虫の話に驚くフジイチのように口をポカンと開けて、驚いた。


「まじか」


 今度はフジイチがレイミャーコを叩いた。その衝撃で、レイミャーコは正気に戻ったが、叩いたフジイチの方がダメージを受けていた。

 叩いた衝撃で、フジイチの手が裂傷して血まみれになった。その激痛にポロポロと涙を流した。


「いたぃ」

「当たり前じゃん。何レべ差だと思ってんの」


 ため息を吐きつつ、HP回復薬(上質)を手に振りかける。シュウと淡い光を放って、傷が治っていく。痛みが引いていき、フジイチは目を擦った。


 仕切りなおして、レイミャーコは同じ魔物を3匹呼び寄せた。


「じゃあ、他の魔物は引き付けておくから、1匹に攻撃当ててみて」


 そう言われて、フジイチはファイヤーをイーリスに放った。ファイアは当たってぶわっと大きな炎になりイーリスが包まれた。火が消えると、怒っているような顔が口を下げて、悲しそうな顔をしていた。


「おぅお!」


 イーリスが叫び、体当たり攻撃をしてきた。すかさず、レイミャーコが間に入って、手で攻撃を受け止めた。


「はい、すぐ攻撃!」


 フジイチは言われた通りにもう一度、ファイアを当てる。すると、イーリスはしわしわと縮んで小さくなって、消えてしまった。


「あー、アイテム消えた。…これはクソゲー」

「へ?」

「とりあえず、次攻撃して」


 彼女が呟いた言葉にフジイチは聞こえず聞き返したが、答えることなく攻撃を命令する。

 フジイチはイーメイにファイアを攻撃をすると、今度は攻撃が外れて、木にぶつかる。レイミャーコはため息一つ吐いて、ジロリとフジイチを見た。


「これは完璧スキルのせいですね。フジイチ君」


 責められるよな言葉にフジイチは頭を軽く下げる。


「すみません」

「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる作戦に変更。MP回復薬を上げるからジャンジャン魔法撃って」


 そう言うと彼女は、辺り一体にスキル《挑発》で魔物を呼び寄せる。わらわらと出てきた魔物にドキッとしたフジイチだが、レイミャーコに言われた通りに手当たり次第にファイアを撃つ。

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