第3話

 レイミャーコは歩きながらこの街の事を話し始めた。


「私達、プレイヤーはこの世界では、異人と呼ばれているの。そして、この街のアブラッドは異人の為の街。まずはこの街で、冒険者ギルドに登録した方がいいわね」


 フジイチは話半分で視線をキョロキョロとさせていた。

 2人が歩いている道の端では、ピンクのつなぎを着て整備をしているプレイヤー集団やその逆には、着物を着てプレイヤーに接客しているプレイヤーがいる。


「商人ギルドより、アンタは冒険者ギルドの方が良いっしょ」

「そうかもね」

「でさ、冒険者に登録するには、試験があるんだけど、試験官も私で良いよね?」


 フジイチは依怙贔屓っぽいなと思いつつも「良いよ」と返した。フジイチは楽さを選んだ。


「試験って何すんの?」

「いろいろ」


 その一言で片づけられたフジイチは、片方の眉を上げて、不満を示した。


「まぁ、私が教えるから大丈夫っしょ」


 自信満々の声に、フジイチは変わらないなと感じる。フジイチは姉のその自信に憧れた時期もあったと懐かしく思った。

 そうこうしている間に、達筆な字で冒険者ギルドと書かれた看板を掲げている建物についた。その看板は何故か斜めになっていて、傍目には落ちそうだったが、絶妙なバランスで固定されているので落ちない。

 冒険者ギルドの西部劇の酒場に出てそうなドア、ウエスタンドアを抜けて、スタスタと歩くレイミャーコ。看板に気を取られていたフジイチが、慌ててその後ろをついていく。


 冒険者ギルドの1階には、カウンターと掲示板、複数のテーブルがあった。窓の近くに、飲食禁止とデカデカと書かれた張り紙が貼ってあった。

 プレイヤーの冒険者が立ち並ぶ掲示板を見てあーだこーだと言っていたが、レイミャーコを見て、静かになった。彼らは、レイミャーコの一挙一動を見逃さないようにジッと見つめた。


 カウンターの先には、書類仕事するプレイヤーのギルド員が沢山おり、レイミャーコを見た一人のギルド員が話しかけてきた。


「あら、レイミャーコじゃない!この街に帰ってくるのは、珍しいわね」

「お久しぶり、アンズ姐さん」

 レイミャーコにアンズ姐さんと言われたギルド員は、プレイヤーであり垂れ目、金髪、服が弾けそうな胸元が特徴的な女性だ。


「デモリッシュと争ってるからいろいろ忙しかったんじゃないの?」

「まぁね、でもいろいろと落ち着いたから大丈夫よ」


 レイミャーコはアンズにウィンクした。


「そう、それは良かったわ。それで、今日は何用かしら?」


 そう尋ねられ、レイミャーコはフジイチの背中をトンと押して前に出した。


「コイツの冒険者登録して欲しくて来たの」

「あら、可愛い子ね」


 アンズはフジイチを下から上まで舐めまわすように見る。そのねっとりとした視線に、フジイチに悪寒が走った。その視線を切るように手で遮ったレイミャーコ。


「あんまり見ないでやって、コイツ、人見知りなんだよね」

「そうなの。ボウヤごめんなさいね」

「いえ…」


 子供のような扱いに、もやっとしながらもフジイチは会釈をする。

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