第9章・逃走中(4)

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 明羽は夢を見ていた。上も下もない真っ暗な、自分の存在さえ判然としない中を、明羽はただよっていた。腕も足も動かなくて、このまま溶けて消えてなくなるのかと明羽が不安に駆られた時、暗闇に光が差し込んでくる。見る見るうちに明羽の視界は光に満たされていく。青を帯びた柔らかな優しい光が明羽の視界をおおう。

 いつだって何度だって、明羽に安らぎをもたらしたその光を明羽はよく知っていた。


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 明羽は目を開いていた。名を呼ばれた気がして起き上がる。

「明羽?」

 隣で寝ていた標が目蓋をこする。テントの布越しに外がゆっくりと明るくなっていくのを標は寝ぼけ眼で確認する。

「朝か」

 標が起き上がり、明羽は震える手でテントのジッパーを開けてゆっくりと外に出た。空は白み、地平線から顔を出したらしい太陽が岩々の隙間から岩石地帯に光を差し込んでくる。早朝の静かだった空気に喧騒けんそうが混じり始める。段々と明羽達がいる場所に近付いて来るその声の中心には、すれ違えば男も女も振り返る恐ろしく整った顔の少女がいた。長い青い髪を揺らしながら少女が明羽に一歩一歩近付いていく。

「明羽」

 今まさに頭上に広がる早朝の空のように済んだ青色を落とし込んだ氷呂の瞳に見つめられて明羽は膝からくずおれた。

「明羽!?」

「明羽ちゃん!」

 明羽が顔を上げれば夏芽の薄青色の瞳もそこにある。明羽は手足の震えが治まらず、立ち上がることができない。かろうじて開くことのできた唇から明羽は言葉を発する。

「ゆめ……夢じゃないよね?」

「ええ。明羽ちゃん。夢じゃないわ」

 夏芽の声を間近に聞きながら明羽は顔を上げることができない。明羽の頬に手が触れた。その手もまた震えていて明羽がうながされるままに顔を上げれば氷呂の青い瞳がうるんでいた。氷呂が明羽を抱き締める。

「明羽! 明羽! 明羽!!」

「氷呂……」

 明羽の顔がくしゃりとゆがむ。緑色の瞳から大粒の涙がこぼれ出し、頬を伝って明羽は鼻をすすった。

「氷呂! 氷呂おおぉぉ!」

 抱き合い泣き叫ぶふたりの少女を前にお頭は欠伸あくびをした。

「朝から騒がしいったらないな」

「氷呂……。夏芽?」

「標!」

 夏芽がテントから出てきた標に掴み掛かる。

「うわ! なんだ!?」

「外にあんたの車があったわよ! 明羽ちゃんを助け出してるならさっさと帰って来なさいよ。ねえ!」

「あー。まずは色々と説明させてくれ」

「説明いぃ? それは今のこの状況と関係あるのかしら?」

「そうだな。俺から説明、と言いたいが折角せっかくだ。当事者がそろってる。何があったか本人達から聞こう」

「また一から説明させる気か?」

「俺は何度でも喜んで!」

 お頭は面倒臭そうに、リュウガは胸を反らして言った。

「誰?」

「まずは自己紹介からか」

 標が間に立って夏芽とお頭と目付きの悪い男、そしてリュウガを紹介する。

「盗賊のお頭とナンバー2はまだいいわよ。コレが人間の第一王子!?」

「コレってなんだ! 顔が良くても気の強い女は苦手だ!」

「顔がいいなんて一度も思ったことないわよ!」

「マジかよ」

 お頭がつぶやいていた。次いで目付きの悪い男が言う。

「人間以外の種族にはこんなのがゴロゴロいるんですか。青い髪の少女といい」

「自覚してほしいよなあ」

 標がため息をつくのをお頭と目付きの悪い男は仏頂面で聞いていた。

 束の間の沈黙がり、話し込んでいた面々は先程までの喧騒が静まり返っていることに気付く。黒服達が見つめる先にいるのは明羽と氷呂だ。先程まで泣き叫んでいたふたりの少女はお互いの手を握り合い、額を合わせて目を閉じていた。お互いの存在を確かめ合うように、狂っていた波長を合わせるように、明羽と氷呂はジッと動かない。夏芽が腕を組んだ。

「ものすごい安定感」

「まったくだな。やっぱりふたり揃ってると落ち着く」

 誰もがその光景に見惚みとれていたがリュウガだけはあらぬ方を振り返っていた。

「アサツキ」

 呟いたリュウガは駆け出す。氷呂が目を開く。

「明羽。行こう」

「行くってどこに?」

 氷呂に手を引かれるまま明羽は歩き出す。明羽と氷呂が歩いた場所を黒服達が黙ってゆっくりと追い掛けて行く。明羽と氷呂の向かう先には天幕が立っている。一足先に辿り着いたリュウガと丁度天幕から出てきた大男が鉢合はちあわせして、お互いに驚いて立ち止まった。

「中に、中に入れてくれ!」

 リュウガの必死の様子に大男はうなずいた。

「患者はまだ完全ではありません。お静かに……ってもういませんね」

 大男はすでに天幕の中にいるリュウガにため息をついた。外に目を向け直した大男は近付いてくる大勢おおぜいの黒服達に目を丸くする。先頭にいる明羽と氷呂にたずねる。

「何の騒ぎです?」

「え、えっと……」

「おはようございます。中にいる人に面会したいのですが」

「おはようございます。患者に負担が掛からない範囲で許可しましょう。患者もあなた方に会いたがっていますので」

「ありがとうございます」

 大男が天幕のすそをめくり開ける。氷呂が迷いなく入り、明羽はそれに引っ張られる。明羽と氷呂の姿が天幕の中に消えると後を付いて来ていた黒服達からため息が零れた。明羽と氷呂の後に付いて行っていい物か悩んで立ち止まった標と夏芽を大男がうながす。標と夏芽が天幕に入ると大男は天幕の裾を降ろした。

「何の騒ぎです?」

「俺にも良く分からん」

「お頭も入りますか?」

 天幕を見つめていたお頭が首を横に振る。未だどこか残念そうな顔でその場にとどまっている黒服達をお頭は振り返る。

「飯にするぞ! 自分の仕事に戻れ!」

 お頭の号令に我に返った黒服達が自分達の持ち場に戻って行く。お頭は一度だけ天幕を振り返ってからその場を離れた。


 真っ白な天幕の中は太陽の光がわずかに布を透過して、更に白い布地に反射して十分に明るかった。簡易ベッドに寝かされるアサツキは重そうに目蓋を押し開ける。アサツキを覗き込む顔を藍色の瞳が順繰りに見渡す。明羽と氷呂が並んでいるのを見てアサツキは目を細めた。

「久しぶりだな。氷呂」

「お久しぶりです。アサツキ先生」

「先生ぇ」

 涙ぐむ明羽にアサツキは空いている方の手を伸ばす。その手を明羽と氷呂は握った。ちなみにもう片方の手はリュウガがずっと握っている。

「やっぱりお前達はふたり並んでる方がしっくりくるな」

 アサツキの声は静かだった。けれど決して弱弱しくはなく、明羽の瞳はさらに涙ぐむ。

「せんせえぇ……」

「泣くな泣くな。見ての通り生きてる」

「うん。うん……。本当に良かったよお」

 涙の止まらない明羽の顔を氷呂が手拭いで拭う。アサツキは天幕の入り口に立ったままの標と夏芽に目を向けた。

「初めまして。こんな格好で悪い」

「いやいや。あんた怪我人なんだから」

「あなたが標だな」

「ああ」

「噂はかねがね」

「明羽からだな。どんな噂だか」

「変なことは何も言ってないよ」

 明羽が鼻を啜った。アサツキは標から夏芽に目を移す。

「あなたが夏芽か」

「ええ。よろしく」

「俺はアサツキ。明羽と氷呂が南の町にいた頃、教鞭きょうべんを取っていた」

 標と夏芽が目を見開いた。

「あなたが!」

「道理で名前に聞き覚えがあった訳だ! 思い出せなかったが。イッテ!」

 夏芽が標の頭を叩いていた。

「また明羽ちゃんを助けてくれたのね。ありがとう。あなたには頭が上がらないわね」

「いや。自分で決めて動いたことだ。リュウガも関わっていたし。リュウガ。そろそろ手を放せ」

「イヤだ」

 宣言通り手を放さないリュウガにアサツキはため息をつく。

「悪い。リュウガのことは?」

「ああ聞いた」

「第一王子なんですってね」

「ここに至るまでの経緯は聞いたか?」

「俺は聞いた」

「私は聞いてない」

「じゃあ話さないとな。リュウガ」

「ん?」

「何があってどうやってここまで来たのか話してあげてくれ」

「おう! 分かった!」

 リュウガは元気よく語り出す。標が聞いた時より遥かに誇張の多い内容に標が目を瞬いていると、アサツキがリュウガの暴走を都度つどいさめていく。そうして標が聞いた時と変わらない内容が夏芽に伝わった。お頭から聞いた話はここにいないお頭に代わって標が夏芽に伝える。

「明羽ちゃん」

「ん?」

「明羽」

「うん……」

 詰め寄ってくる氷呂と夏芽に明羽は身を引く。身を引いた明羽の手を氷呂が引き寄せる。

「明羽。身体の調子は?」

「えっと、もう大分だいぶいいよ」

「ちょっとこっちにいらっしゃい」

 夏芽が明羽の背を押すと氷呂が明羽の手を引いて三人は天幕のはしへ移動する。見計らったように大男がどこからともなく衝立ついたてを持って来て、男三人の視界から女三人の姿が隠れるように広げた。間もなく衝立の向こうから夏芽の金切り声が上がった。

「何よコレ!?」

 暫く、キャンキャンと叫び、悪態をつく声が響く。

「明羽の背中の怪我。アサツキは見たんだよな」

「ああ。人間の医者にせる訳にもいかなかったからな。悪い」

「いや。そこはもう感謝しかない。謝る必要なんてない。ただ、どんなものかと思ってな」

「あれは残るだろうな」

「そうか……」

 標とアサツキは黙り込む。

「明羽ちゃん! 翼。ちょっと翼見せてくれる!」

 夏芽の声が聞こえてアサツキは握り返す気などさらさらなかったリュウガの手を握り込んでいた。

「リュウガ。おすわり」

「そんな言い方あるかよ」

 衝立を見つめて立ち上がろうとしていたリュウガがアサツキを振り返っていた。

「翼だぞ! 天使の翼。見たい!」

「おすわり」

「ぐぬう!」

 リュウガは近くに置いてあった丸椅子を引き寄せてどっかりと座った。

「アサツキがいてくれて良かった」

 標の心の底からの安堵の言葉にアサツキは苦笑した。夏芽が衝立の向こうから肩を怒らせながら出てくる。

「信じられない! なんてことするのかしら! 少しでもあとが残らないようにやってやるわ。ええ! やってやるわ!」

 足を踏み鳴らし自分を鼓舞こぶしながら夏芽は天幕を出て行った。車から道具を持って戻って来た夏芽に大男が近付く。

「同業者でしたか。私の知識も少しは役立つかもしれません。お手伝いさせてください」

「ありがとう」

 夏芽と大男が衝立の向こうに消えるとすぐにやいのやいの意見を出し合っているのが標とアサツキに聞こえてくる。リュウガは始終そわそわしていた。

「やかましくて悪いな」

「ん?」

「意識が戻ったばっかりだろう。よく知らない奴も押し掛けちまったし。気が休まらないんじゃないかと思ってな」

「いや。大丈夫だ。今のところ痛み止めもいてるみたいで身体を重く感じるぐらいだ」

 落ち着きのなかったリュウガの動きが止まった。

「平気だ。リュウガ」

「む? おう! 俺は心配なんてしてないぞ」

「そうか」

「仲良いんだなあ」

 どこか面白そうなものを見る目の標にアサツキは嫌な顔になる。

「ただの腐れ縁だ」

「これからもな!」

「リュウガはちょっと黙ってろ」

「ちぇ!」

「ひとつ聞いておきたいんだが。アサツキとリュウガはこれからどうするんだ? すっかりお尋ね者だろう」

「明羽にも聞かれたな。俺は」

「え? 帰るよ?」

 こともなげに言ったリュウガに標とアサツキは黙り込む。

「まあ。あの王のことだ。リュウガは戻ったところでどうこうされることはないだろう。おきゅうは据えられるだろうし、城からは二度と出られないだろうが。でも、俺は」

「警備が厳しくなったって俺は抜け出すぜ。また手伝ってくれよな。アサツキ!」

 無邪気に笑うリュウガにアサツキは前髪をかき上げた。傷に響いて少しだけ顔をしかめる。

「馬鹿もここまでくるとむしろ天晴あっぱれというか」

「え? なんだ? どういうことだ?」

 標が肩をすくめる。

「あんた、すごいな。よくもまあ見限らずに付き合ってられるもんだ」

「それも明羽に聞かれたな。理屈じゃないんだ」

「そうか」

 標はアサツキの姿にどこまでも明羽に献身的な氷呂の姿を思い出していた。

「いつかは帰るけどさー。その前に俺、噂の村に行ってみたい」

 標が目を見張る。

「それは、つまり……」

「リュウガ。村に行っても明羽以外の天使はいないぞ。明羽が言ってただろう」

「分かってるよ。分かってるけどさあ。それでも、行ってみたいって思ったんだ。明羽の話を聞いて。アサツキは思わなかったのか?」

「……。無理なものは無理だろう」

「アサツキ、今、間があったぞ。見てみたいんだろう。白状しろ! 俺は行く! 何がなんでも行くぞお! もちろんアサツキも一緒にな!」

「うるさいぞ。リュウガ」

 アサツキはため息をついて標を見上げた。

「悪い。うるさくて」

「いや。アサツキの方が負担が大きそうだ。大丈夫か?」

「大丈夫。ハア」

 天幕の支柱から伸びるひだをアサツキは見つめる。

「リュウガは馬鹿だが約束は守る男だ。黙っていろと約束させれば一生黙ってるのは俺が保証する。もちろん俺も他言はしない。連れて行ってもらうことはできるか?」

「俺の一存じゃなんとも。あんた達は明羽の恩人だ。むくいたいとは思うが」

「だ、そうだ。諦めろ。リュウガ」

「え――!?」

 駄々をね始めたリュウガにアサツキの額に青筋が立ち始めて、標が危機感を覚える。

「リュウガ。リュウガ落ち着け。さすがにアサツキの傷にさわりそうだから。一旦持ち帰るってのはダメか? どうしたって今のアサツキは動かせる状態じゃないだろう」

「確かに」

 リュウガは先程の態度が嘘のようにあっさりと引き下がった。

「お話し中、失礼します」

 大男が衝立の上から標とアサツキとリュウガを見下ろしていた。

「聞こえてしまったので口をはさませていただきます。一旦持ち帰るとおっしゃいましたがその間、患者はどうなさいますか?」

「え?」

「我々は盗賊です。常に移動している身の上です。我々は間もなくこの岩石地帯を後にします」

「ああ。そりゃそうか」

「助けはしましたが仲間でない以上、我々がその患者を連れて行くことはありません。あなた方が現れたことでそれはさらに確実となりました。あなた方が現れる前は近場のオアシスに患者を匿名とくめいで移動する手筈てはずでした」

「ちょっと待て。それは……」

「はい。人間がいるところには既に人相書きが出回っています。気をかした誰かが通報して、王子と患者は捕まっていたかと。助けておいてと思われるかもしれませんがすべてはお頭の気紛きまぐれですので。そう。すべてはお頭の気紛れなんです。なので、そうなっていたらもしかしたら明羽さんだけは連れて行っていたかもしれませんね。でも、あなた方が現れた。お頭達は患者の行く末をあなた方にたくすでしょう。なので、あなた方が患者を連れて行かないとなるとその患者はやはり近場のオアシスに」

「それは困る! 標! 今決断してくれ! 俺達を連れて行ってくれ!」

 リュウガが標の胸倉を掴んで揺さ振るが標はその勢いをいなす為に自ら揺れる。

「どうしたもんか」

「話は聞かせてもらったわ」

 衝立の横に背筋をピンと伸ばした夏芽が立っていた。

「標。アサツキもリュウガも私達が連れて行く。異論はないわね」

「既に決定事項じゃねーか」

「標。私からもお願い!」

「標さん」

 衝立の向こうから明羽と氷呂も顔を覗かせる。標は肩をすくめた。

「いきなり連れてったら村のみんなビックリするだろうな」

「その時はあんたが怒られるのよ」

「俺だけかよ」

「ほほほ」

 夏芽がわざとらしく笑い、明羽と氷呂と一緒に衝立の向こうに消える。

「迷惑を掛ける」

「怪我人が気にすることじゃないな」

 標とアサツキの側でリュウガはひとりで万歳ばんざいしていた。大男が衝立を畳むとそこにはいつものパンツにブーツスタイルの明羽が立っていた。

「破れたワンピースなんていつまでも着せてなんていられないわ」

「着替え持って来てよかったですね」

「助かるー」

 仕上げと言わんばかりに氷呂が明羽の髪の結び目に髪飾りをす。氷呂の両の手首で涙型の青色の石が揺れ、明羽の左耳の側で涙型の緑色の石が揺れた。明羽の背に既に翼がないことにリュウガがひとり、ガックリと肩を落とした。標が明羽に近付く。

「どうだ? 明羽」

「うん。なんかね。背中が柔らかいっていうかポカポカするっていうか軽くなったっていうか!」

「そうか。良かったな」

「うん! 先生!」

 駆け寄る明羽にアサツキが目を細める。

「本当に大丈夫なのか?」

「うん。すごいんだよ。この人と夏芽さん」

 振り返った明羽に大男が軽く頭を下げ、夏芽は笑う。

「お褒めにあずか恐悦至極きょうえつしごく

「褒めたって何も出ないわよ。明羽ちゃん」

「貴女は褒められてしかるべきだと私は思います。卓越たくえつした薬草の知識。とても勉強になりました」

「全部独学よ。褒められるようなことじゃないわ」

「だからこそ感服するのです。あなたは自分を甘やかさず、探求をおこたることなく、常に自身を向上させている。なかなかできることではありません」

「それを言うなら私だって今回はすごく勉強させてもらったわ! 人間の医療を間近で見ることなんて一生できないと思ってたもの。最新の医療道具も見せてもらえて感無量だわ。大いに参考にさせてもらうわ」

是非是非ぜひぜひ

 嬉しそうな夏芽と大男から明羽はアサツキに目を戻す。

「だから、先生も大丈夫。村に着く頃には先生も全快復だよ」

「そいつは楽しみだな」

「うん。必ず連れてくよ。先生」

「よろしく頼む」

 意志の強い緑色の瞳に見つめられてアサツキは微笑んでいた。会話が途切れたのを見計らったかのように天幕の外から声が掛かる。

「先生――――!」

 聞こえてきた声に明羽と氷呂が顔を上げていた。

「今の声」

「アンナ!」

 明羽と氷呂が天幕を出るとそこに立っていたアンナが破顔はがんした。

「明羽。氷呂。久しぶり!」

「アンナ!」

「久しぶり」

 標と夏芽も明羽と氷呂の後を追って天幕を出る。そこで再会を喜ぶ明羽と氷呂とアンナを見てふたりは目を見張った。

「あなた……えっと、アンナちゃん?」

「こいつは一体……」

 アンナはそっと口の前に人差し指を立てた。それだけで標と夏芽は察して口をつぐむ。最後に大男が天幕の裾をめくって外へ出る。

「私を呼びましたか? アンナ」

「はい。先生。朝ご飯できたよって知らせに来たんだ。そんでお客さん達にはお頭から伝言。『昨日は夕飯を捻出ねんしゅつしたが、こちとら大所帯で朝の面倒までは見切れない。自分達の分は自分達で用意しろ』だって」

「私は今行かないと食いっぱぐれてしまうので、少し席を外します。患者も安定しているので大丈夫だとは思いますが、すぐに戻りますので」

 大男が足早に天幕を離れていく。多くの黒服達でにぎわい、炊き出しの温かな空気に満たされる中を大男は持ち前の長い足であっと言う間にまぎれていった。明羽は目の前に広がる黒山の人だかりに呟く。

「こんなにいたっけ?」

「外にいた人達が氷呂に付いて入って来たからね。という私も氷呂に付いて岩石地帯に入ったひとりだけど。本当は昨日のうちに、明羽がいるかもって分かった時点でお頭達に付いて行きたかったんだけど、旦那が許してくれなくてさ。さっきはさっきで氷呂にも声掛けたかったけど、そんな雰囲気じゃなかったし」

 標と夏芽が何度も頷いた。氷呂が目をぱちくりさせる。

「アンナ。今旦那って言った?」

「そうなんだよ! やっぱり氷呂も驚くよね! アンナ結婚したんだって」

「そう。少し前にね。って誰に聞いたの? お頭しか考えられないけど」

 苦笑しながらもアンナは見るからに幸せそうに笑う。

「通りで大人びたと思った」

「ね。雰囲気変わったよね。アンナ」

「ええ? そうかな?」

 アンナは少し照れたように俯いてから明羽と氷呂を見つめる。

「明羽と氷呂は変わらないね」

「……それはいつまで経っても子供っぽいという?」

「あ、ごめん。悪い意味じゃなくって……」

「じゃあ、どういう意味?」

「旦那紹介するね!」

 アンナがとてもいい笑顔で背後を振り返った。アンナが呼び掛けると人集ひとだかりから青年がスッと立ち上がる。青年はアンナに駆け寄るとアンナを背後から抱き締める。アンナを抱き締めたまま青年は明羽と氷呂を黙って睨む。

「旦那です」

「めっちゃ睨んでくる」

 明羽は言い、

「明羽」

 氷呂がたしなめる。

「あははははは。ごめん。この人これで普通なんだ。あと、無口でねえ。何にも喋らなくても許してやって」

「アンナがそう言うなら」

 明羽が素直に頷くと青年の目元がわずかに緩和かんわする。

「明羽ならそう言ってくれると思った。少し緊張がけたね」

「緊張してたんだ?」

「ここじゃわざわざ紹介なんてしないからね。みんないつの間にか知ってる」

「そういうもんなんだ?」

「そういうもんなんです」

「それにしても。旦那さん、離れないね」

 氷呂が見つめる先で青年はアンナに抱き付いたまま微動だにしない。

「私にべた惚れだからね」

「アンナ。旦那さんはその、知ってるの?」

 声をひそめて聞いた明羽に、アンナは少し恥ずかしそうに、けれど幸せそうに微笑む。

「うん。知ってるよ」

「おお~」

 明羽は思わず小さく拍手していた。明羽の隣で氷呂も嬉しそうに微笑む。

「すごいね。アンナ」

「本当に」

「すごいのは私じゃなくて、この人」

 お互いの顔を見つめて微笑み合うアンナと青年に、明羽は両眼をおおっていた。

「なんだか見せつけられてるこっちが恥ずかしいんだけど」

「あはは! ねえ。朝ご飯一緒していい?」

「もちろん」

「じゃあ、私達の分取ってくるから。明羽達も準備しといて」

 手をつないで走り去るアンナと青年を明羽と氷呂は手を振って見送った。

「すごいわねえ」

「夏芽さん」

「人間の集団の中にあの子がいることにも驚いたのに、人間と結婚してるんだものねえ」

「村にいる子供達は大半が人間との間の子ですよ」

「そうなんだけどねえ。こう、の当たりにしたのは初めてだったから」

 しみじみ言う夏芽に明羽と氷呂は笑った。

「俺達も朝飯にしようぜ」

 標が言って、標と夏芽がそれぞれの車に積んであるものを声に出していく。ちなみに明羽、アサツキ、リュウガが乗ってきた車の中に積んでいた保存食は盗賊に荒らされた後、竜巻に晒され壊滅した。明羽は天幕を振り返る。アサツキは動けないにしても、リュウガも出てこない天幕を見つめてから、明羽は保存食のどれを開けるかに相談の内容が変わった標と夏芽に目を戻した。


   +++


 アサツキは天幕のひだをぼんやりと見つめていた。

「リュウガ」

「ん?」

「お前も行ってこい」

「うんにゃ。ここにいる」

「そうか」

 アサツキは鼻で息を吸い、ゆっくりと吐く。

「少し疲れた。寝る」

「おう。おやすみ。アサツキ」

 目蓋を閉じるとアサツキはすぐに静かな寝息を立て始めた。


   +++


 明羽達は天幕の側を陣取って火を起こし、車から持ってきた保存食を広げる。パンは硬くなったものしかないが、氷呂の手が加わると元が保存食とはとても思えない食事が敷布の上に並べられる。間もなくアンナと青年が配給された食事を手に戻ってくる。敷布の上の香辛料の効いた葉物野菜中心の具沢山ぐだくさんスープにアンナは目を丸くした。

「うわ! 何それ。おいしそう。本当に保存食!? 氷呂って天才?」

「そうだよ!」

「明羽がこうだから。覚えない訳にいかなかっただけ。それよりアンナが持ってるそれって生野菜じゃない?」

「よく気付いてくれましたー」

 アンナの手の中にあったのは焼きたてホカホカのパンにドレッシングの絡まった生野菜がこれでもかとたっぷり挟まれた代物だった。ちなみに形が残らない程トロトロに煮込まれた真っ赤なトマトのスープが添えられている。

「こんな砂漠の真ん中でどうやって!?」

「何を驚くことがあるんだか。明羽。氷呂。これもふたりのお蔭で食べられてるのに」

「へえ?」

 間抜けな顔をする明羽にアンナは笑う。

「氷呂がくれた水源。あれを中心にね。今新しいオアシスができつつあるんだよ」

「え」

「そりゃそうだよね。あんなに立派な水源。人が集まらない訳がない。あれ以来管理する為にお頭が一グループそこに置いてるんだけど、最初に通りがかった旅人とかがいてね。まあ、私達は盗賊だし、隠すつもりもないし、交渉して水を分けたりしてたんだけど、いつの間にか知る人ぞ知る休憩場所になっちゃって。打診だしんしに来た商人とか大工を傘下さんかに入れると、あっと言う間に建物が立ち始めて。水に釣られて集まった人の中には畑を作れる人もいて、そのお蔭で私達はこれにあり付けてる訳。ほら、明羽と氷呂のお蔭。私達は今そこを拠点きょてんに動いてるんだよ」

「そうだったんだ」

「そんなことになってるなんて」

「でも、あんまり大きくなり過ぎないようにお頭達は気を付けてるみたい」

「え、なんで?」

「役人に嗅ぎ付けられたら面倒でしょう? 盗賊の拠点に役所とか建った日には笑い話だよね。あはは」

 アンナが声を上げて笑うが明羽と氷呂はそれに合わせるように空笑いした。会話が一段落したところで明羽が硬くなったパンをスープにひたすと背後から声が掛けられる。

「うまそう」

「ほあ!?」

 突如とつじょ耳元に聞こえた声に明羽は驚いて振り返る。そこには敷布の上に広げられた料理を物欲しそうに眺めるリュウガがいた。

「リュウガ。いつの間に」

「いい匂いがしたから。腹が減った。俺にもくれ」

「はいはい」

 後で天幕の中に持って行く為に氷呂が用意してくれていた物を明羽は差し出す。リュウガは氷呂の反対側に当たる明羽の隣に腰を下ろした。リュウガは硬くなったパンを物珍しそうに眺めてから明羽がしているようにスープに浸して柔らかくなったところを口にふくむ。

「うまい!」

「お口にあったようで良かったです」

「氷呂。リュウガに敬語使う必要なんてないよ」

「そういう訳にはいかないよ」

「そうかなあ」

「俺の専属料理人にする」

「何言ってんの」

 かなり真剣な顔で言ったリュウガに明羽も真剣に答えていた。

「申し訳ありません。私は明羽の専属なので」

「氷呂も何言ってんの」

「じゃあ、明羽も囲もう」

「冗談もその辺にしておいてくれよ。王子様」

「俺はいつだって本気だ!」

 堂々と言ったリュウガに標はニヤリと笑う。

「ほほう。ふたりは大事な妹分だ。そう簡単にくれてやる訳にはいかないな。どうしてもって言うならまずは俺を倒すんだな」

「お? やるか!」

ほこり立つからやめて」

 立ち上がった標とリュウガに夏芽の目が座るがふたりは止まらない。

「離れてやるからさ。この岩石地帯にいた盗賊をひとりで圧倒したって聞いた時からちょっと手合わせしてみたかったんだ」

「それを知って尚、俺にいどむとは。さては標も相当の手練てだれだな!」

「さあて、どうかな」

 敷布から離れていく標とリュウガに夏芽がため息をついた。

「ああ、もう。男ってどうしてこうなのかしら」

「標って時々子供っぽいよねえ」

「普段はすごく頼りになる分、ギャップが大きい気はします」

「アンナちゃんの旦那さんを見習ってほしいわ」

 急に話題に上るもアンナの隣に座る青年はちょっと顔を上げただけだった。

「よっしゃ。合図はどうする?」

「そうだな。車の鍵投げるか。それが落ちた瞬間を」

「合図だな!」

「止まれ!」

 怒声にも似た声に標は鍵を振り上げようとしていた腕を止める。

「今ここを占拠せんきょしてるのは俺達だ。勝手な私闘は禁止だ禁止!」

 お頭がマントをひるがえしながら標とリュウガに向かって歩いてきていた。お頭に随伴ずいはんする目付きの悪い男の背後に見えるのは、黒服達の不安そうにこちらをうかがう姿だった。

「お前達は今、人間の集団の中にまぎれていることを自覚しろ」

「何当たり前のこと言ってんだ?」

「あー。そうだった。悪い」

 標とリュウガはそれぞれに真逆の反応を返した。

「明羽を助けられてるもんだから、気がゆるんでたな。悪かった」

「危機感なさすぎじゃないか? それでよくも生き残れてるもんだ」

「いや。返す言葉もない」

 鍵を仕舞って見るからに反省する標にお頭は腕を組む。

殊勝しゅしょうなことだな。俺みたいな若造わかぞうに怒鳴られてなんとも思わないのか?」

「年齢は関係ないだろ。あんたがどんな奴なのかは周囲の人間を見てれば分かるし」

「……そうかい」

「妙な会話だな。俺達そんなに年変わんねえだろ?」

「それは俺が老けて見えるって言いたいのか?」

 リュウガを見て額に青筋を立てるお頭に明羽はひっそりと笑いをこらえた。

「まあ、この中じゃお頭が一番若いんだろうけどさ。それでも五とか六とかそんなもんだろ? 若造だのなんだの言う程じゃないと思ってさ」

「王子様にお頭呼ばれるいわれはないんだが。つーか、本気で言ってんのかよ」

「なんだよお。俺の知らないことなら教えてくれればいいじゃないか」

「お前が王族じゃなけりゃな。知らなくてもしようがないかと思えなくもないんだが。あー。まあいい。多分この問答は無意味だ。俺だけが疲れる奴だ」

「間違いないでしょう」

「なんだよう。目付きの悪いのまでー」

「標だったか」

「ん。ああ」

「あんたに質問する。あんたは人間の平均寿命ってどのくらいだと思ってる?」

「人間の平均寿命?」

「そうだ。あんたがそうだと思う数字を言ってくれればいい」

「う~ん」

 私闘を止めに行った筈のお頭と標の始めた会話に興味を引かれたらしい黒服達が耳を澄ます。

「二百歳ぐらい?」

「はえ!?」

「何!?」

 軽く言った標に明羽とリュウガが声を上げていた。

「こうゆうことだ」

 お頭が肩をすくめた。

「いやいやいや。私もはっきりとは知らないけど百もいってなかった筈だよ!?」

「人間の平均寿命は七十歳だ! どっから出てきた二百って数字!?」

 ほぼ同時に言葉を発した明羽とリュウガの間にも齟齬そごがあることにふたりはお互いの顔を見合う。

「それは知ってるんだな王子様。だが、やはり勉強不足は否めないな。正確に言うなら北の町、南の町の平均寿命が七十歳なんだ。近年は南の町の方が上回る傾向にあるが。そして東の町で五十歳。西の町では四十歳だ。世界中に点在するオアシスの平均寿命はそれぞれにムラがあるが近い町とほぼ同じと見ていいだろう」

「四十?」

「そうだ。この機会に是非ぜひとも王子様には下々しもじものことに興味を持ってもらって、上の方々に働きかけてもらえたら嬉しいんだがな」

 リュウガは黙り込んだ。

「ともかく、亜種は人間とは比べ物にならない程長く生きる生き物なんだよ。これ程までに感覚がズレてることには俺も驚いたが」

「人間が俺達より短命だってのは知ってたんだけどなあ」

 少し残念そうに言う標にお頭は目を向ける。

「待て待て。知っていながら二百って数字を出したのか? あんた、今何歳……いや、いい。聞いてもきっと俺の常識の範疇外はんちゅうがいな気がする」

「年を数える習慣がないんだよな。正確な数字を出せなくて悪い」

「俺は今聞きたくないって言ったんだ。飯が終わり次第俺達は出発する。お前達もさっさと帰れ!」

 マントをひるがえして去っていくお頭を標は笑顔で見送った。

「お頭。いい奴だな」

「うん。すごくいい人だと思うよ」

 戻ってきた標に答えながら明羽はその顔をまじまじと見る。

「なんだ? どうした?」

「標ってそんなに長生きなの?」

「人間よりは長生きみたいだな」

「人間を引き合いに出すのは間違ってないですか?」

 氷呂も明羽と同じような顔で標を見ている。

「うーん。村長よりは長く生きてないぞ」

 明羽と氷呂は絶句した。

「そこで村長出てきちゃうんだ……」

「そうだ! 村長よ!」

「ほわあ!? 何!?」

 夏芽の急な大きな声に明羽も腹の底から叫んでいた。黒服達の視線が痛い。お頭を呼ばれる前に明羽達は声をひそめる。

「村長よ! 村長で思い出した! 明羽ちゃん!」

「え? 何? 何?」

「あなた伝承の真実を調べる為にわざと親衛隊に捕まったって、氷呂ちゃんから聞いたわよ!」

 明羽は息を呑んだ。俯き、唇を噛む。

「そう……。私その為に。でも結局なんにも分からなかった。氷呂を裏切って、みんなに心配かけて迷惑かけて、自分の身を危険にさらしただけだった」

「一言相談してくれてれば!」

「ごめんなさい……。ん?」

 明羽は顔を上げる。

「夏芽さん。今の言い方まるで相談してれば分かったみたいな」

「そう言ってるのよ」

「夏芽さん?」

 明羽だけでなく氷呂までもが目を見開いていた。

「伝承が嘘か本当かなんて。その時代を生きていた人に聞くのが一番確かに決まってる」

 明羽は夏芽の言っていることがすぐには理解できない。

「へ? ふ? 夏芽さん。夏芽さん……。夏芽さんが今言ったことってその時代から生きてる人がいるみたいに聞こえるんだけど」

「そう言ったのよ」

「村長と、後はおっさんもそうだな」

「ふぁ!? え? 何? どういう」

「んっほん! おほん!」

 あまりにわざとらしい咳払せきばらいに明羽が顔を向ければ、両手で耳を塞いだ青年と気まずそうな顔のアンナがいた。

「その話、私達は聞かない方がいい気がする」

 明羽達が声を潜めても目の前にいるアンナ達には当然聞こえる距離だった。

「ごめん。そうだね」

「ごめんね。アンナ。気をつかってくれてありがとう」

「ごめんなさい」

「悪い」

「明羽がやたら伝承のこと調べてたのはそういうことだったのか」

「リュウガ。今聞いたこと誰にも言っちゃダメだよ」

「ん? そうなのか。分かった」

 リュウガは頷いたが明羽は不安を隠せない。リュウガが立ち上がる。

「俺、アサツキ見てくる」

「先生にも言っちゃダメだよ」

「おうともよ!」

 軽い足取りで天幕へと向かったリュウガを見送って、明羽はガックリと項垂うなだれた。

「不安だ」


   +++


 リュウガが天幕の裾をめくり上げると簡易ベッドの側に立っていた大男が振り返る。

「戻ってたのか」

「ええ。引継ひきつぎが終わるまでは私の患者ですから。私が見ていますからゆっくりしていらっしゃって大丈夫ですよ」

「静かにしてるからここにいていいか?」

 大男は手に持っていたカルテを下げる。

「ええ。構いませんよ。私は車の方にいますので」

「ああ」

 大男が天幕を出て行き、リュウガは丸椅子に座る。アサツキの額に掛かる前髪をく。アサツキの目蓋が震える。と、薄く開かれた藍色の瞳がリュウガに向く。

「リュウガ?」

「悪い。起こしたな」

「何かあったな」

「決め付けるなよ」

 リュウガは簡易ベッドに上体を預ける。

「なあ。アサツキ。俺はバカなのか?」

「天才寄りの馬鹿だな」

「それって結局馬鹿ってことだよな」

「さて、どうかな」

「はぐらかし方が雑」

 リュウガは突っ伏したまま大きく息を吸った。

「俺は無知なのか?」

「無知というよりは興味を持つものの幅が狭いんだな」

 アサツキはリュウガの癖の強い暗い赤色の髪に手を伸ばす。跳ねている毛先を軽く撫でた。

「アサツキ。なんか今日優しいな」

「自分が弱ってるからだな」

「そうか」

「しかし、ふっ」

「なんで笑う?」

「いや。お前がそんなこと考えるなんて。ここまで来た甲斐かいがあったと思ってな。明羽に感謝だな。リュウガ。気付いた時が成長のチャンスだぞ。考えることをやめるなよ」

「うん」

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