第8章(1)

 カチリと軽やかな音が鳴り、その小さな扉はスムーズに開かれた。明羽あはねが先にくぐりアサツキがその後に続く。

「午前はここまで!」

 明羽とアサツキの背後で女が宣言する。おさまり掛けていたブーイングが再熱した。ゆるやかに閉まっていく扉にその声が遠退とおのいていくのを明羽は背中で聞く。扉が閉まって完全に聞こえなくなる。

「……あー。疲れた」

「……私も」

 明羽とアサツキはそろってやや重い息を吐き出す。明羽の目の前には広大な砂漠が広がっていた。空の青と砂漠の白が視界を二分する。天頂に程近いところで太陽が輝き、少し離れたところに月が浮かんでいた。そして砂漠の上に転々と見える緑に明羽は驚く。

「オアシスが見える範囲にこんなにたくさん……」

「北の町周辺は世界で最もオアシスが密集する地帯だからな。オアシスが密集する地帯に北の町があるとも言える」

 門の側には中同様、北の町に入る為に検問待ちの人と車の列があった。その列が散り散りになっていく。

「外の午前の検問も閉め切ったんだな。午後の検問が始まるまで暑さをやり過ごす為にみんな近場のオアシスに移動してる」

「なるほど」

 他の人達が移動する中、アサツキはその場を動かない。

「先生」

「ん?」

 明羽は「何か待ってるの?」と問おうとして、意に反した言葉が口から出る。

「先生。背中が熱い……」

「明羽!」

 明羽は緊張の糸が切れていた。ふらついた明羽をアサツキが支える。

「明羽。まだどこで誰が見てるか分からない。踏ん張ってくれ。リュウガの知り合いが迎えに来てくれる手筈になってるんだ」

「うん……」

 明羽は歯を食い縛った。暑さに流れるのとは違う汗が明羽の全身から吹き出し始めていた。明羽は足元が揺れているように感じていたがそれは砂地に立っているからだけではない。

「うう……」

「明羽」

 アサツキが明羽に近付く。

「寄り掛かるか?」

「ありがとう。先生。でも今重心を変えたらそのまま倒れる気がするんだ」

「そうか……」

 アサツキは何もできない無力さにうつむく。アサツキが辛そうなのを見て明羽はアサツキの為にも早く迎えが来て欲しいと思う。

「……ツキ」

 リュウガの声が聞こえた気がして明羽は顔を上げる。

「……サツキ。アサツキ!」

 一台の黒いバンが明羽とアサツキに近付いてきていた。その助手席の窓からリュウガが身体を乗り出し、大きく手を振っている。

「アサツキ――――――――! あは……」

 リュウガが次の名前を叫ぶ前にアサツキは明羽を抱え上げて走り出していた。能天気を顔に張り付けたリュウガを殴り飛ばして助手席に沈み込ませる。後部座席のスライドドアを開けてアサツキは荷物と明羽を投げ入れた。

「悪いがすぐに出してくれ!」

「お、おお……」

 スキンヘッドでよく鍛えられた上腕二頭筋を持つ運転手は戸惑った顔のまま車を方向転換させた。助手席で倒れ込んでいたリュウガが頬を押さえながら起き上がる。

「イテテ」

「大丈夫かよ。リュウガ」

「んー」

 心配する運転手にリュウガは曖昧あいまいな答えを返す。

「さすがだな。お前の友達やってるだけのことはある」

 瞬間、リュウガはれ始めていたが元気一杯の顔を運転手に向ける。

「ああ! アサツキはいい奴だ!」

「そ、そうか。ところで後ろの嬢ちゃんは大丈夫なのか? 具合悪そうだが」

「明羽? どうした!?」

 後部座席を振り返ったリュウガが驚きの声を上げる。アサツキは頬を引きらせた。

「どうしたもこうしたもあるか。やっと傷が塞がって来たところを無理矢理歩かせたんだ。幸い、開いてはいないが熱が上がってきた」

「だ、大丈夫か?」

「大丈夫じゃない! すまないが急いでくれ」

「怪我人なんて聞いてねーぞ。勘弁してくれよ」

 文句を言いながらも運転手はスピードを上げた。そして、ため息をつく。

「面倒なことに巻き込まれてねえよな。俺」


 北の町周辺のオアシスはあまりにも数が多い為、有人のオアシスも無人のオアシスも把握しやすいように番号が振られている。北の町周辺オアシス郡第十三番オアシスは金属細工を特徴に持つオアシスだ。金属自体は他から仕入れて細工することを主とするが、加工済みの完成品を買い求めることもできる。舗装はされていないが道は整備され、それなりに大きなオアシスだった。

 オアシスに乗り入った黒のバンはひとつの建物の前で停車する。

「とりあえず嬢ちゃんはあんまり動かさない方が良さそうだな。医者を連れてくるから店内で休ませよう」

「医者か……」

「どうした?」

「いや。頼む」

 素人しろうとの自分ではこれ以上の手当ては無理だとアサツキは俯く。アサツキが明羽を車から降ろそうとすると、スキンヘッドの男が近付く。

「手伝おう」

 男は明羽を軽々と抱え上げた。

「助かる。ありがとう」

「礼を言うにはまだ早いな」

 明羽も意識が朦朧もうろうとする中、辛うじて礼を言う。

「ありがとう……」

「怪我人は遠慮すんじゃねえ」

 店内には日用品から装飾品まで割と幅広い品揃えの商品が並んでいた。奥に置かれた応接用のソファに男は明羽を寝かせる。

「おかえりなさい」

「おう。ただいま」

 他の部屋から店に入ってきた小柄で可憐な褐色かっしょくの肌の婦人に男は見た目に反する柔らかな声で返事をする。

「どうしたの?」

「怪我人だ。医者を呼んで来る」

「まあ。分かったわ。急いで行って来て」

 男が店を出て行くと夫人は一度奥に戻ってたらいに水を用意する。店先に戻って来た夫人は水をふくませた手拭てぬぐいをきつく絞って明羽の額に乗せた。

「うう~ん……」

「明羽」

「大丈夫……大丈夫だよ……。先生」

 強がる明羽の頭をアサツキは不器用に撫でた。その間リュウガはふたりの周りをただただウロウロと歩き回っていた。間もなく男がひとりの老人を連れて戻ってくる。アサツキが明羽の身体を起こし、夫人が明羽の服を脱がすのを手伝う。おじいちゃん先生が明羽の背中を黙って診る間、アサツキはその手元を固唾かたずを飲んで見守った。

「とにかく傷口は綺麗に保ってね。後、これ化膿かのう止め。それと痛み止め。それから一応解熱剤。出しとくから。後は安静。とにかく安静。ゆっくり休む。ご飯はしっかり」

「ありがとうございます」

 アサツキが礼を言う。目蓋を閉じた明羽の眉間のしわは取れ、苦しそうだった息は落ち着きを取り戻していた。アサツキは心の底から安堵あんどする。

「それにしてもどうやったらそんな傷ができるんだか。背中に付いてた何かを引っぺがそうとしたような裂傷だ。縫うこともできないよ」

 アサツキは黙っていては勘繰られるかもと頭の中でぐるぐると考えるが良い言い訳が何も出てこない。

「転んだんだ。背中から。なかなか器用だろう」

 リュウガが堂々と言った。スキンヘッドの男とおじいちゃん先生だけでなくアサツキまでもが絶句する。

「どんな状況だったら背中から転ぶなんて芸当できるんだ?」

「階段とか? 俺はその瞬間見てなかったから知らね。本人からそう聞いたんだ」

 明羽に丸投げしたリュウガにアサツキは開いた口が塞がらない。幸いなことに男もおじいちゃん先生も今さっきまで苦しそうにしていた怪我人に問いただすようなことはしなかった。

「まあ、いいさ。早く元気になってくれればいい」

 男は投げりにため息をついてからリュウガに向き直る。

「リュウガ。約束のもん用意できてるぞ。確認してくれ」

「さすが親父さん! 仕事が早い! いい男! アサツキも見に行こうぜ」

「明羽をひとりで置いてはいけない」

「ウチの女房に頼めば診ててくれるぞ」

「いや……」

 率先して明羽の看病をしてくれている夫人をアサツキは見る。夫人は品良くアサツキに微笑んだ。

「奥方を信用していない訳じゃないが俺はここに残る。明羽の側にいさせてくれ」

「親父さんは信用できる男だぞ?」

「信用してない訳じゃないって俺は言ったよな?」

 アサツキがため息をつき、リュウガは首を傾げた。アサツキは常々つねづね思っている。リュウガは誰かを信用しているのではなく誰のことも疑わないのだと。

「任せた。リュウガ」

 アサツキに任されたリュウガは嬉しそうに笑う。

「任された!」

「じゃあ。ちょっとリュウガ連れてくわ。ついでにおじいちゃん先生も送ってくる」

 リュウガと男とおじいちゃん先生が連れだって店を出て行く。うるさいのもいなくなり、店内に明羽の静かな寝息だけが聞こえるようになると、その静かな寝息にアサツキは張っていた気がゆるむのを自覚する。そのまま明羽の側でアサツキはうとうとと転寝うたたねし始めてしまう。

 時間は過ぎていく。

 空気と大地が最も熱せられる時間を過ぎ、午後の人々が活動的になる時間に移り変わる。静かだった店内に騒がしい声が響く。

「アサツキー!」

 本格的に寝入り始めたところを呼び起こされたアサツキは一瞬混乱するがすぐに覚醒する。

「アサツキー!!」

「うぅ……。リュウガうるさい」

 完全に覚醒しないままうめいた明羽の額にアサツキは手を乗せる。熱は引いていてアサツキはホッと胸を撫で下ろす。身体を起こすと、肩から薄い毛布が滑り落ちた。アサツキはそれを拾い上げる。

「ふふ。遠慮のないご友人ですね」

 隣の部屋にいたらしい夫人が店内に入って来たところだった。アサツキは丁寧に畳んだ毛布を柔和に微笑む夫人に差し出す。

「ありがとうございます」

「アーサーツーキー!」

 アサツキは聞こえてくる声にため息をつき、夫人はクスクスと笑う。

「あの人はあなたが行かないとずっと叫んでいそう」

「そうですね……。明羽をお願いします」

「ええ。もちろん」

 夫人の笑顔にアサツキは頷いて、リュウガを黙らせる為に表へと向かう。

「うるさいぞ。リュウガ」

「アサツキ! 見ろ!」

 店先には一台の車が停車していた。四人乗りの、小型だが見た目よりもずっと車内は広く感じられる黒塗りの新車だった。アサツキは怪訝けげんな顔になる。

「これ、最新車種じゃないか?」

「おう! 一番いいのを用意してもらったんだ!」

「お、お前……。中古車の予定じゃ」

「新しい方が走れるだろ?」

「そういう問題じゃない! 走れるのはいいがこんな車どうやったって目立つだろうが! それにどこから金を出すつもりだ!」

「落ち着け。兄ちゃん。金なら前払いで既に全額貰ってる」

 アサツキは目をかっ開いてスキンヘッドの男を見る。

「前払い?」

「ああ」

 アサツキはリュウガを見る。

「前払い?」

「おう!」

「リュウガ。お前そんな金持ってたか?」

「もちろん。城……」

 アサツキはそれ以上リュウガが口を開かないようにリュウガの胸倉を掴んでがくがくと揺さ振った。リュウガが軽く目を回したのを確認してからアサツキは手を放す。

「あんまり気前よく払ってくれたもんだから。こっちも適当なもん用意できなくてな。今から他を用意するとなると少し時間掛かっちまうんだが」

「いや。大丈夫だ」

 こんなことで時間は掛けられないとアサツキは何度目かのため息をついた。


「本当に行くのか?」

 店の前で男が言った。日がとっぷりとくれて満天の星が瞬いている。男の前には防寒具を身にまとった明羽、アサツキ、リュウガの三人が今日買ったばかりの車の側に立っている。

「ああ。急ぎの用があるんだ」

「だからってこんな夜更けに出なくても」

 わざわざ見送りに出て来てくれた男と夫人にアサツキは手を差し出す。

「ありがとうございました。夕食までいただいてしまって」

「いいってことよ。上客には優しくしとかねえとな」

 男はアサツキの手を力強く握り返した。アサツキが運転席に乗り込み、助手席にリュウガ、後部座席に明羽が乗る。アサツキは車のエンジンを掛けた。

「おっちゃん。おばちゃん。ありがとう。ご飯すっごくおいしかった! いててっ」

「嬢ちゃん無理すんな。気力が戻ったのはいいが怪我は全然なんだからよ」

「うん」

 けれど明羽は車が動き始めると後部座席の窓から身を乗り出して夫婦に大きく手を振る。

「本当にありがとー!」

「おいおい。大丈夫かよ」

「少し心配ですね」

 男と夫人が手を振り返しながら呟いた。助手席からリュウガも顔を出す。

「じゃあなー。親父さーん。またなー!」

「ああ! 気を付けてな!」

 夜闇に車の影が見えなくなるまで見送って、男と夫人は自宅兼店舗へと戻って行った。


   +++


 日は変わり、太陽が砂漠を真っ白に染め始めると間もなく、真っ白な制服に帯刀した役人が第十三番オアシスにやって来る。

「逃亡中の天使を見つけ出す為、オアシスを巡回している。有用な情報提供者には金一封が出る。赤い髪の男と背に怪我を負った十代半ばと思しき少女を見掛けた者はいないか?」

 聞かれたスキンヘッドで上腕二頭筋を鍛え上げた男は答える。

「赤い髪でリュウガって名前の男に車を一台売りましたがね」

 ふたり組の役人が顔を見合わせて頷いた。

「それはいつの話だ? 少女は一緒ではなかったか? その男は今どこにいる? 既に出た後だというならどこへ向かった?」

 男は役人を見据えてニヤリと笑った。

「金一封っていうのはいくらぐらいになるんですかね?」

「なに?」

「情報料ですよ。いくらまで出せます?」

「亜種をかくまうつもりか!」

「亜種? 何のお話で? お役人様方は赤い髪の男と怪我を負った少女をお探しだったのでは?」

「それが亜種だと言っているんだ!」

「そうだったんですか。なら私からお話しできることは何もありません。俺は車を売っただけで買ったお客が亜種かどうかなんて分かりませんで」

「貴様! 痛い目を見たいらしいな!」

 刀の柄に手を掛けた役人に男のまとう空気が変わる。

「気い付けろよ。兄ちゃん。若造が得物を持ったところでこの俺に勝てるなんて思い上がるなよ」

 男の腕の太さと身体の大きさとにじみ出る職人の貫禄かんろくに、刀のを掴んでいた若い役人の手が震え出す。その役人の肩に年配のもうひとりの役人が手を置いた。空いている方の手には手の平大の布袋が乗っている。

「さすがお役人様。話がお分かりになる」

 布袋の中身をすべて差し出してきた役人に男は満面の笑顔になった。


 役人が去った後、男は布袋の重さを量るように手の平の上でそれをもてあそぶ。袋の中からチャリチャリと音が鳴った。

「リュウガには本当にかせがせてもらった」

「あなた」

 背後からの少し怒ったような声に、男は店の入り口に立つ夫人を振り返って困ったように眉尻を下げる。

「そんな顔しないでくれよ」

「だって」

「俺が役人に教えたのは赤い髪の男と背中に怪我のある少女が一緒に南の方へ向かったってことだけだ。実際どこに行こうとしてたのか俺は知らねえし。もうひとりいたことは言ってない」

「売った車種も教えていたじゃない」

「まあまあ。確かにまだ出回ってる数の少ない車種だがまるでないって訳じゃない。中古のプレミアがついた幻の一品って訳じゃないんだ。受け取った代金分、しっかりメンテナンスもした。こっから先はあの三人がうまく立ち回ればいいだけの話だ」

「ええ、ええ。あなたはそういう人でした」

「怒んないでくれよ」

 スキンヘッドの強面こわもてが可憐な妻の機嫌を取っていた頃。出回り始めたばかりの一台の最新車種が巻き上げた砂を帯のように後方に伸ばしながら砂漠を爆走していた。

「最新車種スゲー! 超快適!」

「本当だね! すごいね!」

 性格が変わったように叫ぶアサツキに後部座席に乗っているだけの明羽も揺れの少なさに感動の声を上げていた。


   +++


 最新車種とは対照的な後部座席を幌で覆った年代物の黒い車が一台、北の町に入る為の検問に差し掛かっていた。車の列に朝一で並んで、しなが北の町に入れたのは昼前だった。これから熱さのピークを迎える太陽の下、代金を支払って大型駐車場に車を止める。ぞろぞろと町中へと避難していく人々の流れに紛れ込む。大きな商店街に辿り着くと、人々が思い思いの店に入っていく。標はざっと周囲を見渡して、そこそこ人の多そうな飲食店に狙って入った。

「いらっしゃいませ~」

 店員にお茶を注文して標は壁際に寄る。昼は喫茶店、夜は立ち飲み屋となる店内に椅子はなく、その分多くの人でごった返す。標はお茶を口に含んだ。お茶はキンキンに冷えていてそれだけで北の町が他の町やオアシスと比べて発展しているのが分かる。店内も日影になっているとはいえ、これだけの人間が密集しているにも関わらず空気も熱もこもる感じはなく。北の町にある店という店がこの水準である可能性に標は技術力の高さを垣間かいま見て少し渋い顔になった。気を取り直して標は額の汗を拭い、お茶を飲む。そして耳を澄ます。

「天使が逃げ出したって話。いよいよ本当らしい」

 思わぬ言葉が聞こえてきて標は含んだお茶を吹き出しそうになった。何とかこらえて標は更に聞き耳を立てる。人々の話題はこの町から天使が逃げ出したというもので持ちきりだった。標はため息をつく。

「入れ違いになったか。あいつ、どこ行ったんだ? 自力で逃げ出したのか協力者が現れたのか……」

 ほとんど口の中で呟いて、標は耳をそばだて続ける。

「天使を捕まえたのって親衛隊の隊長だって?」

「お手柄だったのにな。なんでも天使は第一王子をたぶらかして逃げたらしい」

「役人が町中を探し回ってたがあのやり方はないよな」

「北区は特に酷かったらしい。無理矢理家探やさがしまでされた家も多いらしい」

「酷い話よね。でもその後周辺のオアシスまで役人の手が伸びてたでしょう」

「ええ。あの様子だときっともう町の中にはいないわね」

「でもオアシスで役人が探してたのは赤い髪の男と背中に怪我のある少女のふたり組だって話だぜ」

「んんん? じゃあ別口なのか?」

「そのふたりが天使逃亡に関わってるんじゃない?」

「それだ」

「きっとそうね」

「オアシスと言えば第十三番オアシスで真夜中だっていうのに出て行った物好きな家族がいたらしい」

「なんだそりゃ?」

「急に何の話?」

「いや娘夫婦が住んでんだけどよ。なんでも最新車種を買った夜だったとかで。かなり騒がしかったらしい」

「新車に浮かれたのかしらね」

「そういやもうすぐ孫が生まれるとか言ってなかったか?」

「そうなんだよ! もう楽しみで……」

 天使の話題から日常の話題に変わっていくのを聞きながら標はお茶の入ったカップを傾ける。中に入っていた氷が転がって軽やかな音を立てた。

「背中に傷……」

 聞こえてきた話の中でその少女が明羽と一致する要素はひとつも出てこなかったが標は嫌な予感を覚えていた。

「仮に少女が明羽としたら赤い髪の男が逃亡の協力者になる訳か。少女が明羽なら、だが」

 標は眉間に皺を寄せて口の中でうなる。

「逃げ出したのだけはほぼ確実か? もっと情報が欲しいな。ひとまず北の町にいるのかいないのかそれをはっきりさせる為に北区に向かってみるか」

 日が天頂を通り過ぎ、ひとりふたりと店内の客が外にけていく。標は早過ぎず遅すぎずのタイミングで人の流れに乗って店を後にした。駐車場から車を出して北区を目指す。区境にある門をひとつふたつと検問を受けながら超える間に日が暮れてきて標はぼやかずにはいられない。

「なんで区境でも検問があるんだよ。町に入るのに通行手形が必要なのは知ってたから用意はしたが。同じ北の町だろうが。後、広すぎ」

 標は一先ひとまず今日の宿を探す為の行動に切り替える。北区の手前、東区で宿を取り、標は一泊する。日が変わり、標は宿の近場にある早朝から営業している食堂に入った。早朝の店内に人は少なく、話し声が良く聞こえる。標は朝食を食べる間も情報収集はおこたらない。

「北区はいつまで閉鎖されるんだろうな」

「あんな有様見せられないんだろ」

「そんなに酷いのか」

「亜種を捕まえる為とはいえ……。逃げ出した天使を捕まえる為、王子を取り戻す為に王はかなりの無茶をした」

「しかも、捕まえられなかったんだろう?」

「ああ。おおやけにはされてないがもう町にはいないだろう。北区の捜索は打ち切られた。あれから大分経っているし、未だに町中に隠れてるとは考え難いだろ」

 標は冷静を装って朝食を取りながらさっきよりも話し声に集中する。

「しかし、手負いも捕まえられないとはなあ」

「手負い? 天使に怪我を負わせることができたのか?」

「らしい。城の中が天使の血で真っ赤になったとか」

「うわ……」

 汚い話を聞いたと言わんばかりの声に標は立ち上がりそうになるのを理性でなんとか抑え込む。

「王子が誑かされたという話は本当なのか?」

「ああ。第一王子は相変わらず天使にご執心らしい。早く目を覚ましていただきたいものだ。王の御心労を思うと」

「そうだな。王子もまだ見つかってないんだよな? まだ天使と行動してるということか」

「いや、さすがにもう一緒に行動はしていないんじゃないか。暗めとはいえあの赤い髪は目立つ」

「王子は赤い髪なのか?」

「知らないのも無理ないな。式典にも滅多に出ない第一王子だ。俺も北区に住んでいたからなんとなく知ることができたぐらいだもんな。知らない奴の方が多いだろうな」

「なあ、俺。役人が周辺のオアシスを巡回しながら赤い髪の男と背中に怪我のある少女を探してるって噂を聞いたんだけどよ」

「そうなのか? ああ、なんてことだ。それでも捕まえたという話を聞かないということは……」

「……早く北区の家に戻れるといいな」

「ああ……。すべては亜種が存在しているのがいけないんだ。亜種さえいなければ……」

 話し声が段々と落ち込んでいって標の耳に聞こえ辛くなっていく。標は机の上で拳を握りしめた。

「明羽っ!」

 食堂を出るとアサツキはすぐに宿を引き払い車に乗り込む。町の外へ向かう。町を出る為の検問の遅々と進まない列にイライラしながら標は考える。

「オアシスオアシス。明羽はどこのオアシスに身を潜めてる? でもオアシスも探されてるってことはもう出奔しゅっぽんしたか? とにかくまたオアシスで情報収集して……どこのオアシスだよっ! 北の町周辺はオアシスが多すぎる」

 頭をガシガシと掻いた標の頭に不意に昨日の喫茶店で聞こえてきた会話が蘇る。

『オアシスと言えば第十三番オアシスで真夜中だっていうのに出て行った物好きな家族がいたらしい』

 標は頭を掻くのをやめた。

「いや、さすがに明羽ではない。そんな筈はない。追われてるのにそんな目立つ行動を取る筈がない。そもそも家族って話だし。又聞きだけど。でも、まあ……どこから行けばいいか分からない以上そこから始めてみるか。くそっ。虱潰しらみつぶしになるのか!? 勘弁してくれ!」

 やっと自分の番が回ってきて標は砂漠へとアクセルを踏み込んだ。


   +++


 スキンヘッドで良く鍛えられた上腕二頭筋を持つ男は近付いてくる聞き慣れないエンジン音に店の前に出る。

「また古いエンジン積んでんなあ。だが悪くない。よく整備されてる」

 どんな車か一目見てやろうと男が店先で待っていると間もなく後部座席を幌で覆った車が一台、徐行じょこうしながら男のいる方面に近付いてくる。

「ほう。なかなかの年代物だ」

 男は車が通り過ぎるまで眺めているつもりで立っていると車はゆっくりと男の前で停車した。降りてきた青年に男は目を丸くする。

「なんだあ。こんな年代物に乗ってんだからてっきり年食った爺さんかと思ったら」

「開口一番それか。酷いな」

 紫黒の髪、闇色の瞳。黒い服に身を包んだ長身の青年の遠慮のない物言いに男は口を大きく開けて笑った。

「ハッハッハッハッ! なんだあ? 威勢いせいのいい兄ちゃんだな!」

「面白がってくれて何より。ちょっと聞きたいことがあ」

「なあ! 兄ちゃん! この車、誰が整備してるか聞いていいか?」

「え? えっと……」

 質問し掛けたところに質問をされて標はすぐに返事ができない。男が再び豪快ごうかいに笑う。

「ハッハッハッ! 悪いな。兄ちゃん。急に質問しちまって」

「いや」

「ウチの前で止まったってことは俺の店に用か? それなりの品揃えを自負してるつもりだが。車の整備もできないことはないが本職じゃあなくてな。知り合いに頼まれたらやるぐらいなんだが」

「すげえな。おっさん。なんでもできるな」

「褒めてもなんも出ねえぞ!」

 男が標の肩をバシバシと叩く。

「痛いんだが」

「嘘つけ。かなり鍛えてるじゃねえか。俺程じゃないとはいえ」

「鍛えてても叩かれれば誰だって痛いだろう」

「まあ、確かに。で、なんの用だって?」

「人を探してるんだ」

 標の本題に男は目を丸くする。

「人?」

「ああ。十代半ばぐらいの女の子で髪は緑がかった黒。いつも左耳の後ろにひとつに束ねてて、涙型の緑色の石の付いた髪飾りをしてる。身長はこのぐらいで丸い緑色の目が印象的なんだが」

 緑色の石の髪飾りは付けていなかったがこの間見送った少女と特徴が酷似こくじしていることに男は目を丸くする。

「その女の子と兄ちゃんはどういった関係なんだ?」

「妹みたいなもんなんだ。あ、みたいっていうのは血の繋がりはないからで。でもそんなもの本当に関係ない。好奇心旺盛おうせいでいつも元気いっぱいで。でも割と泣き虫な癖に強がることも多くて」

「う~ん……」

「なんでもいい。何か心当たりはないか? このオアシスに着いてからここに来るまで何人かにも聞いてみたんだが何も得られなくて。ここでも目新しい情報が得られなかったら他のオアシスを探してみなくちゃならない」

「他ねえ。つかぬことを聞くがその女の子はなんでいなくなったんだ? 迷子というよりはその年齢なら家出か?」 

「えーと」

 明羽とはぐれた経緯を正直に言う訳にもいかず。標は良い誤魔化し方はないかと考える。ここに来るまでに声を掛けた人々は取り付く島もなかったので考える必要すらなかった。考えながら標は考えのまとまらない自分にイライラとし始める。明羽が怪我をしている可能性が高い以上、悠長ゆうちょうに考えている時間などないのにと標はイライラする。

「おーい。兄ちゃん?」

「ああ、悪い。その、怪我をしているかもしれなくて。少し焦ってるんだ。早く見つけたい」

「大事な女の子なのね」

 男の隣にいつの間にか小柄で可憐な褐色の肌の夫人が立っていた。夫人が柔和に微笑む。

「髪型は変えられるし髪飾りも取り換えてしまえるものです」

「え、あ、はい」

「私はあなたの探してる女の子を知っていると思う」

「え?」

「ウチから車を買っていったの。ここに来た時、酷く具合が悪そうで、すぐに医者に診せたんだけど。背中に傷があって、私も見たけれどあれはなかなか……」

 口籠くちごもる夫人に標は唇を噛む。

「そんな不安そうにしないで」

 標が顔を上げると夫人が微笑んでいた。

「怪我をしているのだから元気というのもおかしいのだけど。気力は十分有り余っているようだったから」

「……それはどういう?」

「出て行く時にな。真夜中だっていうのに大きい声出して、そりゃあ賑わしいこと」

 まさかのまさかに標は蟀谷こめかみを押さえた。

「赤い髪の男と藍色の髪の男と一緒に南の方に向かったぜ」

「赤い髪と……藍色の髪?」

 新しい情報に標は目をしばたかせる。赤い髪は北の町で得た情報から第一王子としても藍色の髪の男はいったい誰だと標は思う。そのふたりが明羽の逃亡に手を貸したのは間違いないのだろうと思いながら標は急に違うことが心配になり始めていた。標は真剣に目の前の夫婦に問う。

「その、あなた達から見て女の子を連れてたっていうふたりの男は人畜無害じんちくむがいに見えたか?」

 妹を心配する兄の顔になっている標に男と夫人は軽く目を見張ってから笑い出す。

「男共は友人同士みたいだったな」

「女の子はふたりのことをとても信頼しているようでしたよ」

「ひとりは女の子のことをとても心配してたがひとりは馬鹿だ。気を付けろよ」

 どっちがどっちだろうと標は真剣に考える。そんな標を面白そうに見る男の脇腹を夫人がひじ小突こづいた。

「イテ」

「その女の子があなたの探してる女の子かどうかは直接確かめてもらわなくちゃいけないけど」

「いや。間違いないと思う」

 標は得た情報を照らし合わせてほぼ確信していた。

「ありがとう。南の方に向かったんだよな。追ってみる。正直もっと手間取ると思ってたんだ。何か礼をしたいぐらいだ」

「まあ。お礼だなんて。あ、そうだわ。車の燃料は大丈夫?」

「燃料? もう少ししたら補給しようかと思ってたところだが」

「じゃあ、安くするから持って行ってくださいな」

「え?」

 標は当惑する。

「礼をしたいのは俺なんだが?」

「お礼なんていいんですよ。それに最近儲けたんです。ね、あなた」

 夫人の笑顔に男はただ頷いた。車本体のタンクは一杯になり、予備の燃料缶に至っては積載量一杯まで詰め込まれそうになって標は慌てて適量を提示した。

「本当にいいのか? こんなに」

「いいんですよ。それよりほら急がなくっちゃ」

「ああ。ありがとう。このお礼はできれば返したいんだが……」

「本当に気にしなくていいから」

 出発したらほぼ確実に戻って来れないことを考えて悩む標に夫人は力強く言った。標は夫人の好意に甘えることにして車に乗り込む。夫婦に礼を言って標は日の暮れ始めた砂漠に向かって車を走らせた。


   +++


「疲れた……」

 アサツキが焚火の側に倒れ込む。アサツキが人目を避けるように無人のオアシスに車を乗り入れた時にはもうすっかり日が暮れていた。段々と冷え込んでくる空気の中、三人で慌てて火を焚き保存食で夕食を取った。

「お疲れ様! 先生。長時間の運転、本当にありがとう」

 覗き込んできた明羽にアサツキは身体を起こす。

「怪我の調子は?」

「うん。大分いいよ。揺れが殆どなかったからかな。あんまり疲れなかったし」

「そうか。最初はどうしてくれようかと思ったが。俺もこれぐらいで済んだのはあの車のお蔭だな」

「リュウガのお蔭だね」

「認めたくはないが」

「呼んだかー?」

「何も言ってない」

「そうか!」

 焚火を挟んで向こうにいるとはいえ、この距離で聞こえていない筈はないのだがリュウガは頷いた。

「本当に最初っから最後まで先生が運転してたけどリュウガは運転できないの?」

「明羽。間違ってもリュウガに運転させようなんて考えるなよ」

「え。なんで?」

「あいつの性格を考えろ」

 明羽は瞬時に理解して頷いた。

「うん。分かった」

「ひっでえ! 町中やオアシスはヤベエかもしれないけど、だだっ広い砂漠なら大丈夫だと思うぞ。絶対!」

「ああ。なるほど。確かに砂漠なら障害物もないし」

「明羽」

 アサツキが明羽の肩にそっと手を置いた。明羽の背に負担を掛けないように細心の注意を払ったうえで手を置いた。

だまされるな。問題なのは運転技術じゃない。性格だ。リュウガにハンドルを任せたら目的地には永遠に着かないと思え」

「なんでそんなことに?」

「まあ、分かりやすく言えば移り気というか。興味のあるものを見つけるとそれに付き進まずにはいられないんだよ。こいつは」

「ああ。うん」

 リュウガがひとりで文句を言い続けていたが明羽とアサツキはそれを聞き流した。

「明羽。昨日の続き、聞かせてくれ」

「うん!」

 車で移動している間、明羽は南の町を出てからの日々をアサツキに語っていた。明羽が話し始めるとリュウガがいそいそと近付いてくる。北の町を出る前にアサツキに言われた半径1メートルを守った位置でリュウガは明羽の話を聞く。

「謝花が先に辿り着いてたんだな。驚かされる」

「自力で辿り着いたんだよ。すごいよね!」

「それにしても、お前達が南の町を出てからそんなことになってたとわな。通りで」

「通りでって何さー」

「いろんな噂が聞こえてきた訳が分かったってことだ」

「むう」

「それにしても予想していたとはいえ本当にあの嵐の中に噂の村があったんだな」

「そうだね。先生が導いてくれなかったら私も氷呂もどうなってたことか」

「いや。あの時は俺も気が動転してた。あるかどうかも分からない、場所も定かじゃないところへ向かうように指示するなんて。どうかしてた」

「でも先生は正しかった」

「結果論だろ」

「結果論でもだよ。それで私も氷呂も助かったんだから。それがすべてでしょ!」

「明羽は相変わらず底抜けのポジティブだな」

「もっと褒めて」

えらい偉い」

「いいなあ。俺もアサツキに褒められたい」

 リュウガの呟きに明羽の頭を不器用に撫でていたアサツキの手が止まる。

「あー……。エライエライ」

「わーい!」

 棒読みだったがアサツキに頭を撫でられてリュウガは目いっぱい嬉しそうに笑った。

「リュウガって先生のこと大好きだよね」

「何故かな。謎だ」

「また、助けられちゃったね」

「ん?」

「また、先生に助けられた。こんなに助けられて一体何をどう返せばいいのか」

「別に何も。まあ、折角せっかく助けることができたんだ。元気でいてくれれば割と俺は満足だよ」

「そうゆうもの?」

「そうゆうもの」

「おばちゃん達のことも聞かせてくれてありがとう」

「ああ。監視は付いたが殆どおとがめなしだ。あの調子なら大丈夫だろう。とはいえ、俺もあの後すぐに南の町を出たからそれ以後のことは分からないが」

「おばちゃんだもん。大丈夫だよ」

「そうか」

「うん!」

「俺のことも忘れるな!」

「あ、うん。そうだね。リュウガにも助けられたね」

「俺はなんか目に見える礼が欲しいな!」

「ええ……」

 明羽は考えた末に翼を広げる。左にのみ生える四枚の翼。翼が形を得た瞬間、明羽の背中に激痛が走る。

「ぴゃあっ!」

「明羽! 何やってるんだ!」

 翼は瞬きの間に掻き消える。

「羽根……羽根を一枚取ろうかと思ったんだけど……。リュウガ。ごめん。お礼はまた後で……」

「おう。無理すんな」

 リュウガのまるで悪びれない声にアサツキが深いため息をつく。それからアサツキは空を見上げる。オアシス特有の大きな葉が茂る影の向こうに金銀の星々が瞬いていた。

「冷えてきたな。もう寝るか。明羽」

 明羽はアサツキの手を借りて立ち上がる。

「うう」

「ほら。しっかりしろ」

「はい……」

 殆ど引きられるような形で明羽はアサツキに運ばれ、車の中へ押し込まれる。

「ねえ。本当に私だけ車の中でいいの?」

「年頃の女の子を俺達と寝かせる訳にいかないだろう」

「先生達は外で大丈夫なの?」

「夜用のテントもちゃんと用意してきた。何も問題ない。朝になって凍死体になってるなんてことにはなってない筈だから安心しろ」

「先生達の凍死体なんて見たくない。それにしても夜用のテントなんてあるんだねえ」

「ああ。旅人の必需品だ」

「へえ」

 標も割と旅人の筈なのだが、明羽は標がちゃんとしたテントを張っているのを見たことがない。帰ったら教えてあげようと明羽はアサツキに手渡された毛布にくるまる。

「本当に一枚でいいのか? 俺はむしろ車の中で寝る明羽の方が心配なんだが」

「平気」

「信じるからな」

「うん。朝になって凍死体になんて絶対なってないから大丈夫」

「うっわ、そう来るか。おやすみ。明羽」

「おやすみなさい」

 アサツキが車のドアを閉めた。明羽は後部座席に小さく寝転がる。この車は後部座席の背もたれを倒してもフラットにはならないので椅子の状態のままの後部座席に明羽は寝転がっている。明羽は汚れの一切ない車の内天井を見つめる。いつだったか標とふたり、目的地に着くまでの道中の野営で明羽はひとり、外で寝ようとしたことがあったのを思い出す。あの時、明羽は降り落ちてきそうな満天の星に寂しさを覚えて標の寝る車の中に飛び込んだ。今は星空が見えない所為せいか明羽はあまり寂しさを感じていなかった。

「氷呂」

 つぶやいて、明羽は毛布を口元までたくし上げてギュッと目を閉じた。


   +++


「明羽」

 い茂るオアシス特有の木々を横目に氷呂は満天の星を見上げていた。

「氷呂ちゃん。火の始末終わったわ。さあ、寝ましょう」

 夏芽に呼ばれて、氷呂は夜空から目を下ろす。生き物の気配のしないオアシスの中に止めた車に氷呂と夏芽は乗り込んだ。

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