第2章・砂漠の盗賊(4)
+++
「アンナ! いい加減にしないか!」
「お頭が許したから黙っていたがもう限界だ! そいつらは亜種だぞ! それ以上慣れ合うんじゃない! 離れるんだ!」
「まあ、おじいちゃんったら。あんまり急に大きな声出さないで。子供達がビックリしてるじゃない」
アンナの言う通り、先程までキャッキャと明るい顔をしていた子供達が今はアンナの影に隠れて老人の顔を
「ね。それに、
「
「もう、おじいちゃん。また、長くなるやつ~?」
「黙って聞かんか!」
「え~。どうしよっかな?」
「アンナ!」
老人はいつの間にやら怒るよりも必死になっていて、それだけアンナと子供達のことを心配していることが分かって
「
「
アンナと老人と、時々アンナに味方する子供達の姿を
「なんで一台だけ?」
「何かあったのかも。
「え? 私達も?」
アンナにそう言われたが
「怪我人だ!」
という声が響いた。誰が怪我をしたのだと黒服達の間に
「先生!」
先生と呼ばれた大男は戻って来た車の側まで行くと手早く鞄を開け、色々な道具を取り出す。取りだされた道具類は
「お医者さんか」
「先生は名医だよ」
「盗賊に襲われた商人達の中に生き残りがいたみたいだね」
「アンナ達も盗賊だよね」
「人助けもするんだね」
「言ったでしょう。私達は
じゃあ、どんな盗賊なのだと
「お頭! お帰りなさい!」
非戦闘員達に
「痛い!」
「みんな喜べ。同胞だ」
お頭のその一言から一拍の後、黒服達が商人達に群がった。
「西の町出身なのか?」
「私達もだよ!」
「西の町出身なの?」
「そうだよ。私達はみんな西の町出身」
「西の町出身なのが重要なの?」
「
「え? えっと……」
「話に聞いたことはあるけど。行ったことはないからそれ以上のことは知らないんだよね」
「そっか。
目を伏せて言うアンナに
「でもね。だからなのかな。同じような境遇の中、助けたり助けられたり。私達の
「助けたり助けられたり?」
「そう、あの町で下っ端の私達にはお互いの助け合いが重要だからね。だから西の町出身だって聞いたら知らない人でも助けちゃう。こっちに助けるだけの余裕があるなら
笑いながら言うアンナの説明に呆れながらも
「すごい話だなあ」
「そう、お頭は凄いんだよ」
「いや、お頭がじゃなくて。いや、お頭もなんだけどアンナ達もさ」
「私達は強い光を持ってる人に
「でも、付いて行くことを決めたのは自分達でしょう。十分すごいことだと思うけど」
アンナは
「……ここにいるみんなは少なからずこの団に恩があるから。……
「え?」
三人で話し込んでいると改造されたトラックの荷台に重そうなタンクが
「なんだろう?」
「あれは……。水だね」
「へ?」
「水? 水ってあの水?」
「他にどんな水があったかな?」
すっとぼけるアンナに
「なけなしの水、なのでは?」
「そうだね。なけなしの水だね。でも、きっと、あの商人さん達も何か目標があって行動してるんじゃないかな。それを聞いたお頭がそうすることに決めたんだと思う。私達はお頭の決めたことに
「副団長。そういやあのふたり割と一緒にいるよね」
「お頭と副団長だからね。それに、この団ができる前からの知り合いらしいし。あのふたり」
「へえ」
なんて
「商人さん達、元々西の町に向かってたみたいだね。積み荷は
「
「え?」
「
「……あ」
「
「茶化さないで、
「そっか、
小声で
「出発するのか?」
「ああ、できるだけ早く着きたいからな」
「そうか」
お頭は一度言葉を区切る。
「あの町は上層部そのものが腐ってる。お前達
「それでも、何もやらないよりはマシだと思いたいんだよ」
「そうか」
「ところで」
「ん?」
「
「あん?」
「噂だよ噂。西の方でやたらめったら活動している盗賊の噂だよ。
商人の言葉にお頭が仏頂面になった。その側で目付きの悪い男は目を伏せる。
「噂になってたのか……」
「それで、まんまと
「うるせえよ。最近、少し派手に動き過ぎたな」
「やっぱり、あんた達のことだろう」
商人のどこか好奇心に満ちた目にお頭は肩を
「そんな奇特な盗賊、知らねえな」
「またまた~。俺達はあんた等のことを支援するよ。この恩は忘れない。今すぐは返せないが……
「金取るのかよ」
「商売だからな!」
「……
すっかり元気になった商人は、人の優しさに触れてすっかり気力の戻った仲間達を連れて黒服達の元を後にする。実働班を見送った時のように黒服達が商人達を見送る。
「さて」
お頭が黒服達を振り返った。
「なけなしの水も気前よく同胞達にくれちまって、俺達にはもう後がない! 次の補給地点の井戸も涸れてたら望みはないと思え! それでもお前達は俺に付いてくるか?」
黒服達は笑う。笑って今まで以上に大きな声でお頭に応じた。
「マジかよ」
「今となっては彼らにいなくなられて困るのは私達ですよ」
「私達?」
お頭が目付きの悪い男を振り返る。お頭と目が合って目付きの悪い男は片眉を上げた。
「なんです?」
「お前の辞書に俺から離れる選択はないのか」
目付きの悪い男はため息をついた。
「
お頭が笑う。黒服達がそれぞれの車に戻り始めるのを
「そもそも、なんでこんなことになってるの?」
「こんなことって?」
アンナが問い返した。
「水探してウロウロ」
「ああ、それはね」
「出発する! 先程出動した者は武器の手入れを
目付きの悪い男の号令に返事が飛ぶ中、お頭の声が響く。
「持ち場に戻れ! アンナ!」
「もう! なんで私だけ名指し!?」
お頭とアンナの怒鳴り合いに周囲から笑い声が上がった。
「もう知らない。
「はい?」
「もうお頭に直接聞いちゃって!」
肩を
「ねえ。なんでこんなに水に困った状況になってるの?」
「あ?」
お頭の眉が引き
「……偽の情報を
「分かるけど。昔々って。やっぱりお頭十八じゃないでしょう」
「うるせえ。つーか気になったのはそこかよ」
「大変だったんだね」
「
「あれ? 私、変なこと言った?」
「同情は不要だ」
お頭が苦々しそうに言った。
「後悔してるの?」
「
「え? あ? ごめん。またなんか言ったかな……」
「もう」
「日が
「次の補給場所で降りた時が最後のチャンスだと思った方がいいね。きっと」
「結局、半日丸々お頭達と行動を共にしちゃった訳か」
「
「それに村長も」
「う……」
「村の皆になんて言おう」
「……逃げることができてから考えよう」
「そだね」
そうこうしている内にトラックは
「
「
「お?」
黒い車の群れが止まり、どこかで見たことのあるような砂漠のど真ん中にある井戸をお頭と黒服達が
「お頭」
「チッ」
お頭は振り返る。目線の先にいるのは緑を帯びた黒髪の少女と青い髪の少女だ。
「お頭。決断の時かと」
目付きの悪い男に急かされてお頭はイライラと頭を
「わーってるよ!」
そんなお頭の態度に目付きの悪い男は一瞬だけ、本当に一瞬だけその顔に
「
アンナが
「お前達が役に立つ時が来たな。お前達を交渉材料に役人と話を付ける」
「その必要はないかと」
「あ?」
「水が必要なんですよね。それなら私がお役に立てるかと」
「だから、役人との交渉材料に……」
「私達を渡したからといって、役人達が盗賊のあなた方を確実に見逃してくれる確率はどれ程ありますか?」
お頭が黙り込む。
「私達を役人に引き渡しても、あなた方が十分な水を確保できるとは私には
お頭は
「もっと安全で、いい方があるって言うのか?」
「ええ。そうです」
「お頭」
「お頭!」
「亜種の言葉に
お頭が手を上げると黒服達が口を閉じる。本当に良く統率された組織だと
「お前達に何ができるって?」
「あなたが私達の出す条件を
「お頭!」
「うるせえ!」
お頭の怒鳴り声に黒服が恐れ
「聞くだけだ!」
「聞くだけですか。まあ、いいでしょう。これを見て、考えが変わってくれれば」
そう言うと、
「テメッ……! 俺達への当てつけか!?」
お頭の後ろから飛び出そうとした黒服を目付きの悪い男が無言で制す。カラカラに乾いた砂漠の上に出来た染みはすぐに消えて行った。
「水を持っていたことにも驚きだが。何のつもりだ?」
お頭の声が低い。
「大丈夫だよ。
「どうぞ」
お頭の
「……どういうことだ?」
お頭は自分の指に伝わって来る
「それが、私の生まれ持った力です」
「亜種が生まれ持つ、人間が持たざる力。そうか、お前は聖獣か」
「分かりますか」
「動物は人間の隣人であり、聖獣は水を操り、悪魔は闇を愛し、精霊は自然と共にあり、魔獣は大地を知り、天使は風を操る。常識だ」
「へえ。そうなんですか」
「だが、無いところから出すなんて、あり得るのか? 俺達にない力を持っているとはいえ際限なく何かできるようなものじゃなかった筈だが」
「そこまで知ってるんですか?」
本当に驚く
「俺がそう信じてるだけだ。そうじゃなけりゃ亜種を一匹残らず消しちまおうなんて考え自体が馬鹿すぎる。人間がそれを利用しない訳がないんだ」
「そう、ですか……」
「それで? お前が無いところから水を出せることが分かった訳だが。これは交渉材料にはならないぞ。むしろ、俺達はお前の利用価値に気付かされた訳だ」
「あ、いえ、今のはただのパフォーマンスです」
「あ?」
「私はそれだけの力を持っていますよっていう。本題はここからです」
お頭が呆れた顔になって、
「何がしたいんだ……」
「取引です」
「取引? そんな言い分が通じると思ってんのか?」
「あなたは応じると私は思ってます」
「
「私がここにいる全員を救えるからです」
「ああ。お前を飼い殺しにすれば間違いなく今ここにいる全員救えるな」
氷呂はチラリと未だに黒服達に制されてこちらに近付けないアンナに目を向ける。
「あなたを信じます」
「買い
「あなたの言う通り。私を飼い殺しにできれば水の心配はなくなりますね。けれど私は感情のある生き物です。そんな無理やりな状態でいつまで持つと思いますか。そんな精神状態では必ずいつか限界は来る。そんな不安定なもので構わないんですか? 私なら、半永久的に安定した水源を間違いなくあなた方に提供できます」
「……」
「リスキーな私ひとりを取るか。これから先、安全にここにいる全員の命を救える手を取るか。あなたが求めるのは後者だと私は信じます。私が水源を提供したら私達を必ず解放してください。そう、約束してくださるなら、私はすぐにでもあなた方の欲しているものを差し上げます」
「お前が、約束を
「それは、私達を信じてもらうしかありません」
「私達、ね」
お頭が
「少なくとも、俺らを
「お頭!?」
黒服達が
嫌々を
「で、どうすればいい?」
「まずは場所を移動します!」
「この辺でいいでしょう」
トラックが止まり、
「おい。どこまで行くつもりだ?」
段々とトラック、それから車の集団から離れて行く四人に黒服達が武器を手に後を付いて行こうとする。それに気付いた
「あ、ダメですよ。近いと被害が出るかもしれないから少し離れた場所に
「危ない?」
「皆さんに付いて来ないように言ってください」
「俺達は危なくないのかよ?」
「少人数なら立ち位置を間違えなければ問題ないですから」
「そうかよ」
お頭が目付きの悪い男に目配せする。目付きの悪い男は振り返って良く通る声で黒服達に待っているように告げた。
「さて、この辺りがいいですね」
「結構離れたな」
四人が見える範囲で立ち止まったことでこちらを不安そうに見つめていた黒服達も少しばかり安心する。
「お頭と副団長は私より前に出ないでくださいね。
「うん」
真っ赤に染まった地平線に太陽が少しずつ降りて行く中、
「何も起こらないぞ」
「しぃ」
「あいつら何やってるんだ?」
「やっぱり嘘なんだよ。亜種の言うことなんて」
「お頭達は大丈夫なのか?」
「もう
その異変に最初に気付いたのはお頭だった。
「……なんだ?」
黒服達が持ち前の団結力で動き出そうとした時、地面が振動し始める。それは最初こそ小さかったが次第に大きく激しくなり、足腰の弱い者が地面に膝を付く。
「なんだ!?」
「なんだこれ!?」
「何が起こってるんだ!?」
地面に
「ヴィクス!」
「落ち着け、リュリ」
目付きの悪い男をお頭が制す。地面の
「ふう」
「お頭。もう少ししたら水の勢いは落ち着いてくると思うので。それから、この辺り一帯軽く
「えっ? あ、おう!」
「それでは、約束通り……」
「水だ!」
黒服達がこちらに向かって駆け出して来ていた。あっと言う間に
「ああー。お前ら気持ちは分かるがちょっと落ち着け」
「安全を確認してからだ!」
お頭と目付きの悪い男が制しようとするが今までの統率が嘘のように黒服達は
「ああ、もう……」
「仕方ありません」
お頭と目付きの悪い男が
「お
「そうだね」
「何?」
「何って、飛んで帰ろうよ」
「まあ、いいけど」
「よし」
「
アンナが
「すごいすごい! すごいね! ふたり共!」
「すごいのは
「アンナ。私達と来る?」
「え?」
アンナは一瞬だけ目を丸くしたがすぐに首を横に振って、
「私、ここが好きなんだ」
「そっか」
「うん。行っちゃうんだね。
「うん、アンナ。またね!」
「ええええぇぇ――――――!!!??」
と
「お頭」
目付きの悪い男が差し出して来た望遠鏡をお頭は
「おいおいおい……。マジかよ……」
望遠鏡を下ろして消えゆく影を改めて見つめる。
「片翼の天使……。ふ、ふふ……。ハハハハハハハハ!」
お頭は腹を抱え、涙を浮かべながら
「あー。はは、トンデモねえお宝を取り
「今日はここで野営だ! 準備しろ! テメーら風邪引くからそこまでにしとけ!」
明るい声に明るい声が返ってきた。
+++
「もう日が沈んじゃうね」
「とりあえず戻れるところまで戻ろう」
「うん」
星が
「さむ……」
「大丈夫?」
「うん。平気」
「無人のオアシスでも見つかればいいんだけど。さすがに砂漠のど真ん中で野宿は不安だよね」
「
「それを言うなら私だって。ああ、違う。そういうことじゃなくて」
「そういえばさ。
「まあね。移動している最中からその付近に水脈が無いことは分かってたから」
「そっかー。うまくいって良かったね」
「そうだね。まあ、最後のあの井戸が
「まあ、そうだよね」
「
「う、ごめんなさい」
「反省してください」
「反省します……」
「あれ?
「ん?」
「う~ん?」
「
「うぶ」
「どうしよう」
「狩人ではなさそうだね」
「近付いてみる」
「分かった」
近付いてみると
「う~ん?」
「あ」
「へ?」
「ちょ、
「
「ええ?」
「……
「お」
近付く程に
「さっさと降りてらっしゃーい!!!」
聞こえてきた怒声に
「とりゃー!」
「まったく! 信じられないわ! 村を勝手に飛び出したのもそうだけど、盗賊に捕まったまま一向に逃げる
「それは、その、機会を
「言い訳しなーい!」
「まあ、なんだ。お前達が自力で逃げ出して来てくれて助かった。そろそろ
「解説してんじゃないわよ!
「ごめんなさい。
「迷惑かけてしまって……」
「だーから。違うって」
「お前らが俺らにかけたのは迷惑じゃなくて、心配な」
「いひゃい」
「うぅ……」
「分かったな」
「ひゃい」
「はい」
「村長にも謝れよ」
「ぐ……」
「あと、
「ああ……」
「はい! ふたり共反省したわね!」
「あい! もう二度としません! 次やる時はちゃんと相談してからにします!」
「良く言った!」
「ほんとに反省してるう!?」
「してます! してます! だから相談して、反対されたらしませんって話ぃ!」
「もう!」
「今日はこのままこの場で車中泊だな」
「そう言えば
「それなんだけど。羽根がこう、ヒラヒラとね」
「羽根?」
「村を出て嵐を抜けた後。さあ、これからどこに向かえばいいんだって時にな。車の前方で一枚の羽根がこう、ヒラヒラとな」
「近付こうとしても常に一定の距離を保って車の前を舞うのよ。一か八かで追い掛けたら遠くに盗賊らしい車の集まりが見えて、そしたらそこに
「え、じゃあ。割と早い段階から私達のこと見てたの?」
「そ、そうだったんだ」
「この様子だと
「だな。結局なんだったんだろうな。いつの間にかなくなってたし。本当にお前じゃなかったのか?
「違う……。てか、見てたんなら助けてくれても良かったんじゃ」
「あ、は、ね、ちゃん? あなたったら自分のしでかしたことの
「その言い分は感心しないな。
「言わなくていいって言ってんでしょ!」
「ご、ごめんなさい……」
「ありがとうございます。
「分かればいいのよ」
+++
波打つ水面に
「大分
「地面が少し
盗賊団『西の風』は出来たばかりの水源の側で思い思いの時間を過ごしていた。水の心配がなくなって少し気の大きくなった黒服達が羽目を外し過ぎないようにお頭と目付きの悪い男は目を光らせる。
「食料と燃料にはまだ余裕があるとはいえ、無くなったら終わりだからなあ」
「無くなる前には方々に敷かれた包囲網もなくなっていることでしょう。西の町を
「だな」
お頭は水に反射する
「名前呼ばれたのなんてどれぐらい振りだったか」
瞬間、目付きの悪い男がばつの悪い顔になった。
「その
お頭は苦笑する。
「別にいーよ」
「お頭の名前ってなんだっけ?」
「あん?」
見ればいつの間にかお頭の側に三人の子供達が集まっていた。
「たしか、ヴィクセルとか言ったはず」
「とかってなんだ。コラ」
「ヴィクセル!」
「ヴィクセル!」
「ヴィクス!」
「お前らはちゃんとお頭って呼べー。俺の
子供達は笑っていたが近場にいた老人が顔を真っ赤にして怒鳴り込んで来る。
「コラ―――――――――!! お前らっ。今、今お頭のことをっ! なんて無礼な!」
「やべっ」
子供達は
「お頭! 申し訳ありません! きちんと言い聞かせておきますので!」
「いや、無礼は言い過ぎじゃね?」
「お頭に聞きたいことがあったのに!」
「お前達はお仕置きじゃ! 大人しくせい!」
追い掛けて来る老人に子供達は当然のように立ち止まらず、それどころか舌を出して
「誰も俺の話聞いてねーし」
「くっくっ」
お頭が振り返ると目付きの悪い男が
「すみません」
「まあ、いいさ」
「お頭」
「アンナか」
「こんばんわ。子供達は
「あー」
お頭はアンナの顔を見る。
「俺は、てっきりお前はあいつらと一緒に行っちまうんじゃないかと思ってたよ」
「えー? なんでですか? お頭と副団長にまだなんにも返せてないのに。出て行ける訳ないじゃないですか」
「大したことしてねえけどな」
「売られそうになってた私を助けてくれたのは誰ですか。みんなと違う私を受け入れてくれたのは誰?」
「チッ」
お頭が頭を
「
「え、それ断ったのか?」
「そーです。ここが好きなんです。だから、またねって言ってお別れしました。また、会えたらいいなって」
「また、ね」
お頭は腕を組んで
「あのふたりとは、いつかどっかでまた会う気がするんだよなー」
アンナがパッとお頭を見上げた。
「本当ですか!?」
「残念ながら」
「残念じゃないです残念じゃないです! お頭の勘は当たるんですから!」
アンナが満面に笑む。
「楽しみだなあ。あ、流れた」
ひとつ流れると次々と尾を引いて流れ始める星々に周囲から歓声が上がる。アンナも例外ではなく。夜空に
「ありがとうございます。副団長」
「俺には?」
「お頭はマント
「そうだな。もうちょっと見ていたい気もするが。ここまでだな」
お頭と目付きの悪い男の指示に黒服達が
了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます